SUN×SUN!

楠こずえ

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第4話:魔法の杖と呪文(その2)

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あわてて茂みに姿を隠すひまわり。

突然の出来事に心臓がバクバクしているが、
状況を確かめるべく、ソッと茂みから顔を出した。

「私、太陽とつき合いたいの。
入学式で一目見たときから好きだったの!」

告白している女の子は、
確か隣のクラスの美少女で
男子の間で騒がれている子だ。

『あんなかわいい子だったら、
桐島くんもOKするんじゃないのかな・・・』

別に自分が告白しているわけじゃないのに、
ひまわりの心臓はドキドキしている。
なぜだか分からないが、
少し胸が痛むようなドキドキも感じられる。

「あ・・」

太陽が口を開いた。

「ごめん・・・、
今は恋愛よりやりたいことがあるから・・・」

その言葉を聞いたひまわりは耳を疑った。

『え!?ふりました!?
恋愛よりやりたいことがあるって、
魔法相談所のことですか!?
桐島君、おかしいですよ、
あんなにかわいい子をふってまで、
魔法のことを選ぶなんて・・・』

太陽の魔法相談所にかける熱意を
ひまわりは改めて感じると同時に、
助手のプレッシャーもズンとのしかかってきた。

ふられた女の子は、
「そっか・・、じゃあ」
と言ってその場を走り去って行く。
目にはうっすら涙が浮かんでいた。

走り去っていく後姿を見ていると、
自分が告白したわけでもないのに、
ひまわりもつらい気持ちになってくる。

『なんだかかわいそうです・・・だけど、
桐島くんはもてるから、
こんなこと慣れているんでしょうね・・・』

と、そんなことを考えていた時だった。

「おい」

背後から突然声をかけられ、ひまわりは飛び上がった。

「盗み見か?」

うっすらと怒りを浮かべている太陽の顔を見て、
ひまわりはブンブンと顔を横に振る。

「べ、別に盗み見しようなんて思ってなくて、
桐島くんを探していたらたまたま、でしてね!
アハハハハ・・・」

必死に言い訳をするひまわりを
またジロッとにらむ太陽。

その気まずい雰囲気に耐えられないのか、
ついひまわりは余計なことまでベラベラとしゃべり出した。

「で、でも、
あんなかわいい子ふっちゃうんですか?」

と、自分で言い出しておきながら、
事態をさらに悪化させているような気がして、
聞いたことを後悔した・・・。

太陽は「フーッ」とため息1つつくと、
「付き合うとか、
中学時代に嫌ほどやったから
しばらくは興味が無いし」
とプレイボーイ発言をしたため、
ひまわりはギョッとした。

『な・・・何ですか・・・、その発言は・・。
私なんか告白したこともされたことも、
付き合ったこととかも1回もないのに・・・』

自分の恋愛経験の無さをさみしく感じているひまわりに、
太陽はさらに付け加えた。

「それに第一、
どうせ好きな人には一生ふり向いてもらえないからな」

再びの意味深発言に、
またもやひまわりはドキッとさせられる。

『好きな人には一生ふり向いてもらえない・・・?
え、桐島くんの好きな人って誰なんですか?
しかも桐島くんでさえも、ふり向いてもらえない相手って・・・』

太陽の言葉に振り回され、
自分が何をしに来たのかすっかり忘れていたひまわりだったが、
「杖はどうなったんだ?」
という太陽の一言で、ハッと我に返った。

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