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第2話:魔法相談所開設(その4)
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太陽は紙人形をひまわりに差し出すと、
「おまえも試しにやってみろ。
ボーっと見てるだけで何もしてないじゃん」
と急に言ってきため、
ひまわりは「え!?」と飛び上がる。
「わ、私がですか!?」
「何驚いてんだよ!
おれより魔力持ってるんだから、何かできるだろ?」
急なムチャぶりを太陽が要求してきたため、
ひまわりはびっくりして固まってしまった。
自分に魔力があるなんて
一度も考えずに育ってきたひまわりゆえ、
急に魔法なんて使えるわけがない。
でも太陽の命令に従わなければ、
また怒られることだけは確かなので、
仕方なく鏡の前に向き合った。
ひまわりは見よう見まねで、
雨鏡の上に人形をソッと置いて、
鏡に向って力を込めてみる。
「雨夜家に伝わる雨鏡よ・・・
人形に魔力を吹き込み、我に仕わせよ・・・」
その瞬間、
今まで何の変化も起こらなかった鏡が
突然パアッと黄金色の光を放ち始めた。
「!」
ひまわりは
何が起こっているのかよく分かなかったが、
反応があったので、
そのまま力を込め続ける。
その横で太陽は、びっくりしすぎて声が出ない。
自分が何十分かけても動かせなかった人形を
一瞬で動かそうとしているひまわりに
ただただ驚くしかなかった。
魂を抜き取られたような状態の太陽に、
「桐島くん!」
とひまわりが声をかけたので、
ハッと我に返る。
ひまわりは鏡を指差しながら、
「人形が動き出してるんですけど、どうしたら・・・」
と言っている最中に、
紙人形がフワッと宙に浮かび始めた。
その様子をポカンとした表情で見ていた2人だったが、
状況を飲み込んだ太陽があわてて、
「あ、あいつを追いかけろ!」
と叫んだ。
ひまわりも「はい!」と返事すると
紙人形を追いかけて2人は走り出した。
突然動き出した紙人形を追いかけていくと、
目の前に廃墟となった古い洋館の前に
いつの間にかたどり着いていた。
赤い屋根と白い壁が
童話に出てきそうな屋敷をイメージさせるが、
今はその面影もなく、
屋根はところどころ穴が開き、
瓦の隙間から草がぼうぼうに生えている。
窓はほとんどガラスが壊れ、
白い壁は今や汚れて灰色と化していた。
さらには、
家の周りをカラスが大量に飛び回っているため、
この廃墟を一層気味悪いものとしている。
紙人形は、まるで廃墟に引き寄せられたかのように
す~っと開いた窓から中に入っていってしまった。
その様子を見ていた2人は、
門のところで立ち止まり、
「桐島くん・・・ここに入っていきましたよ・・・」
「ああ・・廃墟だな」
とつぶやく。
ひまわりは太陽の顔を見ながら、
「でもなんで、こんな空き家にペンダントが・・・?」
と聞くと、
「それはこっちが聞きたいよ。
おまえが紙人形をここまで飛ばしたんだろ」
と太陽が逆に質問してきた。
その時だ。
「おやおや!
すごいじゃないか!」
振り返ると、おばあちゃんが2人を追いかけて
息切れしながら走ってきているではないか。
「ばーちゃん!?なんでここに!?」
「人形が飛んでいくのが見えたから
追いかけてきたんじゃよ!
ひまわりちゃんが飛ばしたのかい?」
そう聞かれてびっくりするひまわり。
「と・・・飛ばしたというか、
なんかよく分からないんですが、
念じたら
急に動き出して飛んだというか・・・」
はっきりいって、
なんで飛んだのかひまわり自身、
よく分かっていない。
何か特別なことをした記憶もないし、
気づいたら動いていたのだ。
それでも、
おばあちゃんは「うんうん」とうなずき、
「いや~、さすがじゃよ!
最初見たときから、
並々ならぬ魔力を持っていると思っていたけど、
やはりすごいよ、ひまわりちゃん!
これから鍛え甲斐がありそうだ!」
とひまわりの魔力を大絶賛した。
誉められることは喜ばしいことだが、
ひまわりとしては
特に何かがんばったわけでもなく
見よう見まねしたところ
たまたま動いただけのことだったので、
すっかり恐縮してしまっている。
「あ、でもおばあさん、
ここにペンダントがあるとは限らないですよ。
ただ単に風にあおられて、
ここに飛んできただけかもしれないので・・・」
と、ひまわりが否定的にモゴモゴと説明していると、
「あるんじゃねーの」
と横から太陽が割って入ってきた。
「え?」
ひまわりが振り返ると、
太陽は背を見せ、
「魔力が強いひまわりがやればいいじゃん。
おれなんかいなくてもさ」
とぶっきらぼうに言い捨てると
スタスタと来た道を帰っていっているではないか。
ひまわりとおばあちゃんは目が点になる。
「え!?
ちょ、ちょっと桐島くん!
どういうことなんですか!?
待ってください!」
ひまわりはあわてて叫んだが、
太陽はそのままどこかへ消え去ってしまった。
残されたひまわりは、
その場で立ち尽くすしかなかった。
『そ・・・そんな・・・
「ひまわりがやればいい」って
別に私はやりたかったわけじゃなくて、
桐島くんのプロジェクトに勝手に巻き込まれただけなのに・・・』
「おまえも試しにやってみろ。
ボーっと見てるだけで何もしてないじゃん」
と急に言ってきため、
ひまわりは「え!?」と飛び上がる。
「わ、私がですか!?」
「何驚いてんだよ!
おれより魔力持ってるんだから、何かできるだろ?」
急なムチャぶりを太陽が要求してきたため、
ひまわりはびっくりして固まってしまった。
自分に魔力があるなんて
一度も考えずに育ってきたひまわりゆえ、
急に魔法なんて使えるわけがない。
でも太陽の命令に従わなければ、
また怒られることだけは確かなので、
仕方なく鏡の前に向き合った。
ひまわりは見よう見まねで、
雨鏡の上に人形をソッと置いて、
鏡に向って力を込めてみる。
「雨夜家に伝わる雨鏡よ・・・
人形に魔力を吹き込み、我に仕わせよ・・・」
その瞬間、
今まで何の変化も起こらなかった鏡が
突然パアッと黄金色の光を放ち始めた。
「!」
ひまわりは
何が起こっているのかよく分かなかったが、
反応があったので、
そのまま力を込め続ける。
その横で太陽は、びっくりしすぎて声が出ない。
自分が何十分かけても動かせなかった人形を
一瞬で動かそうとしているひまわりに
ただただ驚くしかなかった。
魂を抜き取られたような状態の太陽に、
「桐島くん!」
とひまわりが声をかけたので、
ハッと我に返る。
ひまわりは鏡を指差しながら、
「人形が動き出してるんですけど、どうしたら・・・」
と言っている最中に、
紙人形がフワッと宙に浮かび始めた。
その様子をポカンとした表情で見ていた2人だったが、
状況を飲み込んだ太陽があわてて、
「あ、あいつを追いかけろ!」
と叫んだ。
ひまわりも「はい!」と返事すると
紙人形を追いかけて2人は走り出した。
突然動き出した紙人形を追いかけていくと、
目の前に廃墟となった古い洋館の前に
いつの間にかたどり着いていた。
赤い屋根と白い壁が
童話に出てきそうな屋敷をイメージさせるが、
今はその面影もなく、
屋根はところどころ穴が開き、
瓦の隙間から草がぼうぼうに生えている。
窓はほとんどガラスが壊れ、
白い壁は今や汚れて灰色と化していた。
さらには、
家の周りをカラスが大量に飛び回っているため、
この廃墟を一層気味悪いものとしている。
紙人形は、まるで廃墟に引き寄せられたかのように
す~っと開いた窓から中に入っていってしまった。
その様子を見ていた2人は、
門のところで立ち止まり、
「桐島くん・・・ここに入っていきましたよ・・・」
「ああ・・廃墟だな」
とつぶやく。
ひまわりは太陽の顔を見ながら、
「でもなんで、こんな空き家にペンダントが・・・?」
と聞くと、
「それはこっちが聞きたいよ。
おまえが紙人形をここまで飛ばしたんだろ」
と太陽が逆に質問してきた。
その時だ。
「おやおや!
すごいじゃないか!」
振り返ると、おばあちゃんが2人を追いかけて
息切れしながら走ってきているではないか。
「ばーちゃん!?なんでここに!?」
「人形が飛んでいくのが見えたから
追いかけてきたんじゃよ!
ひまわりちゃんが飛ばしたのかい?」
そう聞かれてびっくりするひまわり。
「と・・・飛ばしたというか、
なんかよく分からないんですが、
念じたら
急に動き出して飛んだというか・・・」
はっきりいって、
なんで飛んだのかひまわり自身、
よく分かっていない。
何か特別なことをした記憶もないし、
気づいたら動いていたのだ。
それでも、
おばあちゃんは「うんうん」とうなずき、
「いや~、さすがじゃよ!
最初見たときから、
並々ならぬ魔力を持っていると思っていたけど、
やはりすごいよ、ひまわりちゃん!
これから鍛え甲斐がありそうだ!」
とひまわりの魔力を大絶賛した。
誉められることは喜ばしいことだが、
ひまわりとしては
特に何かがんばったわけでもなく
見よう見まねしたところ
たまたま動いただけのことだったので、
すっかり恐縮してしまっている。
「あ、でもおばあさん、
ここにペンダントがあるとは限らないですよ。
ただ単に風にあおられて、
ここに飛んできただけかもしれないので・・・」
と、ひまわりが否定的にモゴモゴと説明していると、
「あるんじゃねーの」
と横から太陽が割って入ってきた。
「え?」
ひまわりが振り返ると、
太陽は背を見せ、
「魔力が強いひまわりがやればいいじゃん。
おれなんかいなくてもさ」
とぶっきらぼうに言い捨てると
スタスタと来た道を帰っていっているではないか。
ひまわりとおばあちゃんは目が点になる。
「え!?
ちょ、ちょっと桐島くん!
どういうことなんですか!?
待ってください!」
ひまわりはあわてて叫んだが、
太陽はそのままどこかへ消え去ってしまった。
残されたひまわりは、
その場で立ち尽くすしかなかった。
『そ・・・そんな・・・
「ひまわりがやればいい」って
別に私はやりたかったわけじゃなくて、
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