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第6話:二人きりの夜(その11)

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「もう一度聞きますけど、先生はなんで水野からの告白を止めてくれなかったんですか?」

西森から詰め寄られ、この狭い部屋の中では逃げるわけにもいかず、おれは恐る恐る理由を話し始めた。

「いや・・・、だからその・・・、水野君が「告白したい」って言っているのを止めるのは、卑怯なような気がして・・・」

「卑怯?」

「卑怯と言うか、その・・・
だって、水野君が告白したら、西森だって心動かされる可能性だってあるかもしれないじゃん。
だから、その可能性をつぶすのは、なんか卑怯なような気がして・・・」

自分の本心を正直に話した。

「卑怯」に思ったことは嘘ではないし、ここで変にウソをついてもすぐにばれてしまうだろう。

西森はしばらく黙っていたが、急に、
「先生は、私が誰かに告白されたらその人のことを好きになると思ったんですか?」
と聞いてきた。

「え?」

西森は悲しそうな顔をしながら、
「だって、水野から告白されたら、水野のことを好きになるんじゃないか、みたいなこと言うから、そんな軽い性格だと思われているのかと思って・・・」
と言ったので、おれはあわてて、
「違う!
そういう意味で言ったんじゃないんだ!」
と叫んだ。

「じゃあ、どういう意味で言ったんですか?
先生は、水野と私が付き合っても構わなかったんですか?
つまり、先生は私のことをそんなに好きじゃないから、水野とくっついても構わないって思ったんじゃないですか?」

西森はそう言うと、プイッと後ろを向いてしまった。

完全なる誤解だ。

誤解をどう上手く解こうか頭で考えようとしたが、それよりも先に体が動いて、気づけば後ろから西森をギュッと抱きしめていた。

「せっ、先生!?」

西森がビックリしたような声を出したが、そのまま抱きしめ続ける。

おれは西森の耳元で、
「言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、ほんとに違うんだ。
水野君に告白を勧めたけど、西森を奪われたくない、とは思ってた」
とささやいた。

「え・・・?」

後ろから抱きしめられたせいか、西森の体が急に熱く火照ったような気がする。

狭い部屋の中、2人の心臓の音だけが「ドキンドキン」と鳴り響く。

おれは西森を抱きしめたままソファーに座った。
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