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第3話:ドキドキ初デート(15)
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「青少年自然の館」は、子供達にいろんな科学を学んでもらうために作られた施設で、生物、化学、物理、地学等の展示室や体験コーナーがあり、学校の遠足の行先地となっていることも多い。
本館と新館の2棟の建物が自然あふれる山の中にドンと建っていて、屋上には天体望遠鏡を備えた天体観測室もあり、おれも何度か観測会に参加したことがある。
1階には直径20メートルのプラネタリウムのドームがあるのだが、リニューアルするということで、改装前の上映会におれと西森は招待されたのだ。
「ここの施設、小学校の頃に一度遠足で来たことがあります。」
車から降りた西森は、目をキラキラさせながらそう言った。
車に鍵をかけながら、
「いろんな科学が分かりやすく展示されているから、子供だけでなく大人も楽しめるぞ」
と言うと、西森は、
「教科書に載っていないことを学べそうで、楽しみですね!」
とうれしそうに答えた。
西森は「デート」というより、「遠足」に来たみたいにはしゃいでいる。
ま、喜んでくれているのなら何よりだが。
おれはスマホを取り出し、誘ってくれた友人の前田涼介に電話をかけようとすると、
「先生、誰に電話しているんですか?」
と、西森が聞いてきたので、
「ここの施設で働いている友人にね。
プラネタリウムもそいつが招待してくれたんだ」
と、答えた。
そういや、西森にはまだ涼介のこと話してなかったっけ。
涼介にも西森のことは詳しく話していないし、絶対会ったら、間違いなくいろいろ聞かれるだろう。
そんな不安やらドキドキを抱えながら、電話をかける。
『トルゥルル~』
何度か電話の呼び出し音が鳴った後、
「ハイ、流星か?」
と、涼介が出た。
「今、着いたところだけど、どうしたらいい?」
「了解。
今すぐ行くから、本館の玄関前で待っていてくれ」
そう言うと涼介は電話を切った。
「先生、お友達が来るんですか?」
「ああ、今こっちに向かって来てるから玄関で待ってろって」
おれは西森を連れて、玄関に向かった。
その間も、辺りをキョロキョロ見回し、知り合いがいないかどうか、確認しながら歩く。
涼介の言っていた通り、今日は招待客だけしか来ていないようで、駐車場もほとんど車が止まっていないし、人影も少ない。
これなら、おれと西森が一緒にいるところを知り合いに見られることもないだろう。
でも、油断は禁物だ。
周りを警戒しながら歩いていると、
「流星ーっ!」
と、真正面から涼介が叫ぶ声が聞こえた。
涼介は手を大きく振って、うれしそうにこちらに駆け寄って来る。
「久しぶりだな!
今日は招待してくれて、ありがとう」
お互い、久しぶりの再会にちょっと照れ臭くなってはにかんでいると、
「先生、こちらがお友達さんですか?」
と、西森が声をかけてきた。
西森は涼介の方を見て、
「初めまして。
私、高山先生の生徒の西森夏菜です。
今日はプラネタリウムに招待して下さってありがとうございます。」
と、丁寧にあいさつをした。
「西森・・・、西森って・・・」
涼介は、この前の電話で、おれが言っていた「西森」という名前を思い出したようで、驚いた顔をしておれの方に振り返る。
そして急に腕をつかむと、
「ちょ、ちょっと、流星、こっちに来い!」
と、強引に引っ張って茂みの方に連れて行く。
その様子を西森は不思議そうな顔で見ていた。
本館と新館の2棟の建物が自然あふれる山の中にドンと建っていて、屋上には天体望遠鏡を備えた天体観測室もあり、おれも何度か観測会に参加したことがある。
1階には直径20メートルのプラネタリウムのドームがあるのだが、リニューアルするということで、改装前の上映会におれと西森は招待されたのだ。
「ここの施設、小学校の頃に一度遠足で来たことがあります。」
車から降りた西森は、目をキラキラさせながらそう言った。
車に鍵をかけながら、
「いろんな科学が分かりやすく展示されているから、子供だけでなく大人も楽しめるぞ」
と言うと、西森は、
「教科書に載っていないことを学べそうで、楽しみですね!」
とうれしそうに答えた。
西森は「デート」というより、「遠足」に来たみたいにはしゃいでいる。
ま、喜んでくれているのなら何よりだが。
おれはスマホを取り出し、誘ってくれた友人の前田涼介に電話をかけようとすると、
「先生、誰に電話しているんですか?」
と、西森が聞いてきたので、
「ここの施設で働いている友人にね。
プラネタリウムもそいつが招待してくれたんだ」
と、答えた。
そういや、西森にはまだ涼介のこと話してなかったっけ。
涼介にも西森のことは詳しく話していないし、絶対会ったら、間違いなくいろいろ聞かれるだろう。
そんな不安やらドキドキを抱えながら、電話をかける。
『トルゥルル~』
何度か電話の呼び出し音が鳴った後、
「ハイ、流星か?」
と、涼介が出た。
「今、着いたところだけど、どうしたらいい?」
「了解。
今すぐ行くから、本館の玄関前で待っていてくれ」
そう言うと涼介は電話を切った。
「先生、お友達が来るんですか?」
「ああ、今こっちに向かって来てるから玄関で待ってろって」
おれは西森を連れて、玄関に向かった。
その間も、辺りをキョロキョロ見回し、知り合いがいないかどうか、確認しながら歩く。
涼介の言っていた通り、今日は招待客だけしか来ていないようで、駐車場もほとんど車が止まっていないし、人影も少ない。
これなら、おれと西森が一緒にいるところを知り合いに見られることもないだろう。
でも、油断は禁物だ。
周りを警戒しながら歩いていると、
「流星ーっ!」
と、真正面から涼介が叫ぶ声が聞こえた。
涼介は手を大きく振って、うれしそうにこちらに駆け寄って来る。
「久しぶりだな!
今日は招待してくれて、ありがとう」
お互い、久しぶりの再会にちょっと照れ臭くなってはにかんでいると、
「先生、こちらがお友達さんですか?」
と、西森が声をかけてきた。
西森は涼介の方を見て、
「初めまして。
私、高山先生の生徒の西森夏菜です。
今日はプラネタリウムに招待して下さってありがとうございます。」
と、丁寧にあいさつをした。
「西森・・・、西森って・・・」
涼介は、この前の電話で、おれが言っていた「西森」という名前を思い出したようで、驚いた顔をしておれの方に振り返る。
そして急に腕をつかむと、
「ちょ、ちょっと、流星、こっちに来い!」
と、強引に引っ張って茂みの方に連れて行く。
その様子を西森は不思議そうな顔で見ていた。
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