上 下
931 / 942
3年生2学期

10月21日(土)晴れ 明莉との日常その106

しおりを挟む
 まるで妹の記念日のように聞こえるあかりの日。
 実際、明かりを付けると言った時に明莉が反応したこともあるので、関連性がある日と言っていいかもしれない。
 そんな中、本日の明莉は午前中に部活動を終えて、その流れで文化祭の打ち上げをしたらしい。
 屋台を出した運動部系の部活は少しだけ出た売上で打ち上げできるので、展示しかしていない文芸部よりは豪華になりそうだ。
 そして、これは完全なイメージだけど、運動部の打ち上げの方が派手にやっていそうである。

「ただいま~ りょうちゃん、今日もお土産持って帰ったよ」

「えっ。わざわざありがとう」

「はい。臭い消し用のガム」

「……それ店出る前に貰えるやつでは」

「うん。一個余計に貰っても良かったから」

 貰えるだけ嬉しいと思うべきなのかもしれないけど、何だか敗北感を覚えるお土産だ。
 こういうガムや飴が貰える店ということは……

「まさか……焼肉」

「おお。言ってないのによくわかったね」

「ぶ、文化祭の売り上げでそんなに豪華になるのか……」

「いや、さすがにあかり達もちょっと払ってるから。仕入れとか準備に必要なものとかで利益はほとんど出てないし」

「それはそうか。それでも焼肉は豪華だなぁ」

「今回は体育祭の打ち上げも兼ねてるし。あとは何かにつけてみんな焼肉食べたかったんだと思う」

「なるほどなぁ」

 それで言うならうちの日葵さんも何かにつけて打ち上げをしたがるけど、こっちは食べたい物よりも単に打ち上げの雰囲気を楽しみたいやつだと思う。
 これまでもあまり食べ物にこだわっている感じはなかった。

「やっぱり運動部だから肉を食べたい感じなのかな」

「そう? りょうちゃんは文化部だけど肉食べたいんじゃないの?」

「食べたい。話を聞いたせいで無性に食べたくなった」

「亜里沙さんや瑞希さん、美里さんもいい気分転換になったって言ってた」

「なぜピンポイントで知り合いの感想を!?」

「りょうちゃんも食べた気分を味わってほしくて」

「うぅ……今年の誕生日は焼肉にしてもらおうかな」

「いいと思う! 今日行った店、初めてだったけどめっちゃ美味しかったよ」

 そのまま明莉に焼肉屋の紹介を受けて、僕の心は完全に焼肉に支配されてしまった。
 後から冷静に考えると、明莉がもう一度行きたくて誘導された可能性もあるけど……そんなことより今は焼肉が食べたい。
しおりを挟む

処理中です...