924 / 942
3年生2学期
10月14日(土)曇り時々雨 最後の文化祭・前
しおりを挟む
文化祭1日目の鉄道の日。
予定通り京都の祖父母も2泊3日でこちらにやって来て、今日の午後から見て回ることになった。
位置的にはバド部が出している屋台の方が近かったけど、祖父母は文芸部の展示室から訪れてくれた。
「おお、良助。元気しとったか?」
「う、うん。わざわざ来てくれてありがとう。」
「高校に入るなんて久しぶりだねぇ。あら、もしかしてそちらのお嬢さんが……」
「は、はい! 岸本路子と申します。そ、その良助くんとは……」
「君が路子さんかぁ。いやぁ、良助から話は……あんまり聞とらんな。昔からシャイなところが――」
「じいちゃん! 他に見学する人もいるから!」
展示室に入るや否や祖父母はマイペースに色々言ってくる。
来てくれたのは本当に嬉しいけど、身内が来た独特の恥ずかしさはある。
「産賀センパイのおじいちゃんおばあちゃんいらっしゃいませ! 現文芸部部長の岸元日葵です!」
「おや? 部長さんは岸元さんなのかい?」
「ひ……私は元気の元ですけど、路子先輩は本なんですよ。凄い偶然ですよね?」
「本当だねぇ。ああ、じゃあ、部長さんに渡しておこうかね」
そう言いながらばあちゃんは一冊のノートを取りだす。
前の奴とは違うけど、それが何なのか僕はすぐにわかった。
「これ、良助が2年生の時にもらった文化祭の冊子の感想文。前の3年生はいないだろうけど、部長さんの年代の子は全員感想を書いたから、良かったら」
「ええっ!? すごっ!? 作品の感想、友達や家族にしか聞いたことなかったから、めっちゃありがたいです!」
「そこまで喜んでもらえるとこっちまで嬉しくなるねぇ。今年もなるべく早く書くようにして、良助に渡してもらうようにするよ」
いきなり渡したらどうなるかと思ったけど、日葵さんの明るい対応のおかげでばあちゃんも満足そうにしていた。
それから展示を一周した後、2人とも冊子を持って(1冊はどこかへ配布する用)、今度は明莉のバド部の屋台に向かう。
僕も見送りとしてそこまで一旦ついて行くことになった。
今年のバド部はミックスジュースを取り扱っているらしい。
「おっ、良助に京都のご両親! お久しぶり~」
すると、屋台の前に父方のばあちゃんが来ていた。
「お久しぶりです。お中元にはあんな高級な物を送ってもらって……」
「いやいや。結構安く手に入るところがあるからそんな高価じゃないんですよ。京都へ行った時に寄りたいんだけど、車で行かないからなかなか……」
「りょうちゃん! なんか2人が話し出してるから止めて! そして、なんか買って行って!」
どうやら明莉もこっちのばあちゃんが来て僕と同じ思いをしていたらしい。
その後、屋台で京都の祖父母と別れてから、今度はこっちのばあちゃんを文芸部へ連れて行った。
それ以外にもいつメンや知り合いが見学に来てくれたけど、この日の祖父母たちの印象が強くなってしまった。
でも、3人とも楽しそうにしてくれたので、来てもらえて本当に良かったと思う。
予定通り京都の祖父母も2泊3日でこちらにやって来て、今日の午後から見て回ることになった。
位置的にはバド部が出している屋台の方が近かったけど、祖父母は文芸部の展示室から訪れてくれた。
「おお、良助。元気しとったか?」
「う、うん。わざわざ来てくれてありがとう。」
「高校に入るなんて久しぶりだねぇ。あら、もしかしてそちらのお嬢さんが……」
「は、はい! 岸本路子と申します。そ、その良助くんとは……」
「君が路子さんかぁ。いやぁ、良助から話は……あんまり聞とらんな。昔からシャイなところが――」
「じいちゃん! 他に見学する人もいるから!」
展示室に入るや否や祖父母はマイペースに色々言ってくる。
来てくれたのは本当に嬉しいけど、身内が来た独特の恥ずかしさはある。
「産賀センパイのおじいちゃんおばあちゃんいらっしゃいませ! 現文芸部部長の岸元日葵です!」
「おや? 部長さんは岸元さんなのかい?」
「ひ……私は元気の元ですけど、路子先輩は本なんですよ。凄い偶然ですよね?」
「本当だねぇ。ああ、じゃあ、部長さんに渡しておこうかね」
そう言いながらばあちゃんは一冊のノートを取りだす。
前の奴とは違うけど、それが何なのか僕はすぐにわかった。
「これ、良助が2年生の時にもらった文化祭の冊子の感想文。前の3年生はいないだろうけど、部長さんの年代の子は全員感想を書いたから、良かったら」
「ええっ!? すごっ!? 作品の感想、友達や家族にしか聞いたことなかったから、めっちゃありがたいです!」
「そこまで喜んでもらえるとこっちまで嬉しくなるねぇ。今年もなるべく早く書くようにして、良助に渡してもらうようにするよ」
いきなり渡したらどうなるかと思ったけど、日葵さんの明るい対応のおかげでばあちゃんも満足そうにしていた。
それから展示を一周した後、2人とも冊子を持って(1冊はどこかへ配布する用)、今度は明莉のバド部の屋台に向かう。
僕も見送りとしてそこまで一旦ついて行くことになった。
今年のバド部はミックスジュースを取り扱っているらしい。
「おっ、良助に京都のご両親! お久しぶり~」
すると、屋台の前に父方のばあちゃんが来ていた。
「お久しぶりです。お中元にはあんな高級な物を送ってもらって……」
「いやいや。結構安く手に入るところがあるからそんな高価じゃないんですよ。京都へ行った時に寄りたいんだけど、車で行かないからなかなか……」
「りょうちゃん! なんか2人が話し出してるから止めて! そして、なんか買って行って!」
どうやら明莉もこっちのばあちゃんが来て僕と同じ思いをしていたらしい。
その後、屋台で京都の祖父母と別れてから、今度はこっちのばあちゃんを文芸部へ連れて行った。
それ以外にもいつメンや知り合いが見学に来てくれたけど、この日の祖父母たちの印象が強くなってしまった。
でも、3人とも楽しそうにしてくれたので、来てもらえて本当に良かったと思う。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
サザン・ホスピタル 短編集
くるみあるく
青春
2005年からしばらくWeb上で発表していた作品群。
本編は1980~2000年の沖縄を舞台に貧乏金髪少年が医者を目指す物語。アルファポリスに連載中です。
この短編は本編(長編)のスピンオフ作品で、沖縄語が時折出てきます。
主要登場人物は6名。
上間勉(うえま・つとむ 整形外科医)
東風平多恵子(こちんだ・たえこ 看護師)
島袋桂(しまぶくろ・けい 勉と多恵子の同級生 出版社勤務)
矢上明信(やがみ・あきのぶ 勉と多恵子の同級生 警察官)
粟国里香(あぐに・りか 多恵子の親友で看護師)
照喜名裕太(てるきな・ゆうた 整形外科医)
主人公カップルの子供である壮宏(たけひろ)と理那(りな)、多恵子の父母、サザン・ホスピタルの同僚たちが出たりします。
私立桃華学園! ~性春謳歌の公式認可《フリーパス》~
cure456
青春
『私立桃華学園』
初中高等部からなる全寮制の元女子校に、期待で色々と膨らませた主人公が入学した。しかし、待っていたのは桃色の学園生活などではなく……?
R15の学園青春バトル! 戦いの先に待つ未来とは――。
麗しのマリリン
松浦どれみ
青春
〜ニックネームしか知らない私たちの、青春のすべて〜
少女漫画を覗き見るような世界観。
2023.08
他作品やコンテストの兼ね合いでお休み中です。
連載再開まで今しばらくお待ちくださいませ。
【あらすじ】
私立清流館学園は学校生活をニックネームで過ごす少し変わったルールがある。
清流館高校1年2組では入学後の自己紹介が始まったところだった。
主人公のマリ、新堂を中心にクラスメイトたちの人間関係が動き出す1年間のお話。
片恋も、友情も、部活も、トラウマも、コンプレックスも、ぜんぶぜんぶ青春だ。
主要メンバー全員恋愛中!
甘くて酸っぱくてじれったい、そんな学園青春ストーリーです。
感想やお気に入り登録してくれると感激です!
よろしくお願いします!
CROWNの絆
須藤慎弥
青春
【注意】
※ 当作はBLジャンルの既存作『必然ラヴァーズ』、『狂愛サイリューム』のスピンオフ作となります
※ 今作に限ってはBL要素ではなく、過去の回想や仲間の絆をメインに描いているためジャンルタグを「青春」にしております
※ 狂愛サイリュームのはじまりにあります、聖南の副総長時代のエピソードを読了してからの閲覧を強くオススメいたします
※ 女性が出てきますのでアレルギーをお持ちの方はご注意を
※ 別サイトにて会員限定で連載していたものを少しだけ加筆修正し、2年温めたのでついに公開です
以上、ご理解くださいませ。
〜あらすじとは言えないもの〜
今作は、唐突に思い立って「書きたい!!」となったCROWNの過去編(アキラバージョン)となります。
全編アキラの一人称でお届けします。
必然ラヴァーズ、狂愛サイリュームを読んでくださった読者さまはお分かりかと思いますが、激レアです。
三人はCROWN結成前からの顔見知りではありましたが、特別仲が良かったわけではありません。
会えば話す程度でした。
そこから様々な事があって三人は少しずつ絆を深めていき、現在に至ります。
今回はそのうちの一つ、三人の絆がより強くなったエピソードをアキラ視点で書いてみました。
以前読んでくださった方も、初見の方も、楽しんでいただけますように*(๑¯人¯)✧*
へたくそ
MO
青春
野球が大好きなのに“へたくそ”な主人公、児玉良太。
チームメイトで野球センス抜群なキャッチャー、松島健介。
後輩マネージャーで児玉に想いを寄せる、町村早苗。
3人の視点から物語は進行していきます。
チームメイトたちとの友情と衝突。
それぞれの想い。
主人公の高校入学から卒業までの陵成高校野球部の姿を描いた物語。
この作品は
https://mo-magazines.com/(登場人物一覧も掲載しています)
小説家になろう/カクヨム/エブリスタ/NOVEL DAYS
にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる