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3年生2学期

9月27日(水)曇り 野島実香との日常・再その9

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 雨が降りそうで降らなかった世界観光の日。
 昨日の結香さんに伝えた件とお礼の伝言についてはLINEで実香さんに知らせた。
 しかし、その後がどうなったか気になったから、朝一番に実香さんに聞いてみることにした。
 すると、実香さんは得意げな顔する。

「特に何も言われなかった!」

「言われなかったんだ……」

「いや、まともに会話できてたら良さんに伝言頼んでないって」

「確かに。でも、結香さんとは家で全く話してないの?」

「ううん。今は文芸部の追い込み期間だから話しかけるなって言われてるの」

「なるほど……なのに応援しようとしたんだ」

「どうしても言いたかったの! 良さんだって妹ちゃんが大事な何かに挑む前には全力で応援するでしょ?」

「それはもちろん」

「よっ! さすがシスコン屋!」

 その称号は願い下げだけど、実香さんの方は相変わらず妹への想いが強いようである。
 それに対して結香さんはこの機会を利用して、会話を禁じているわけだ。
 ……僕がそれをやられたら普通に泣いてしまう。

「実香さんはえらいよ……」

「なんかわからないけど、褒められてるのに素直に喜べない感じがする」

「でも、半分心配でもある。結香さんがここまで拒否しているのが」

「本当だよねぇ。この先が思いやられるよ」

「……まぁ、実香さんがその調子なら仕方ないか」

「でもまぁ、私は今年で卒業だし、来年には家を出る(予定)だから、結香はそこまでは我慢してもらうしかない」

「えっ。実香さんはそれでいいの……?」

「いいも何もそういう流れだし。だからこそ、今全力で絡んでるところもあるかな」

 実香さんはそう言いながら少し寂しそうにも見える表情になったけど、そこでチャイムが鳴ってこの話は終わってしまった。

 これまでは実香さんがうっとうしがられるくらい絡むのが悪いと思っていたけど、その事情を聞いたら少しだけ共感してしまった。
 でも、これは兄及び姉の側の感想でしかないから、うっとうしい事実は変わらないのだろう。
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