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3年生2学期
9月15日(金)曇り時々晴れ 後輩との日常・岸元日葵の場合その21
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体育祭前日のひじきの日。
明日の天気もところによっては雷雨が発生する可能性があるけれど、今日の時点では行うつもりで最後の準備が進められていく。
そんな今日は文芸部の休みになったので、放課後はそのまま帰宅するつもりだった。
途中までは路ちゃんと一緒に帰ろうと思い、僕が自転車を取ってくるまで校門で待ってもらっていると、僕の姿が見えた時点で路ちゃんは焦った様子で手招きする。
「どうしたの?」
「あ、あそこ……」
路ちゃんが指差した方向には日葵さんと桐山くんが並んで歩いていた。
文芸部の部長と副部長が偶然、帰るのが一緒になった……と一瞬考えたけど、すぐにそうではないかもしれないと思う。
「み、路ちゃんって、その……日葵さんの件は知ってるの?」
「知っているというか……何回か相談的なことを受けたから。良助くんにも相談した話は聞いてたから」
逆に僕は路ちゃんにまで相談していたことは知らなかったけど、ようやくこの話題を共有できる相手がいて少し安心する。
いや、協力者が2人なったところで良い方向に進むかはわからないけど。
「それで……良助くん。これはとてもいけないことだとは思うのだけれど……」
「気になるからちょっと後を付けてみよう、と」
「ふ、普通に明日の相談とかかもしれないけれど、一応というか……」
「まぁ……ちょうど帰り道の方向だし、ちょっとくらいなら許されるか」
「じゃあ、急がないと!」
路ちゃんはそう言いながらいつになく早足で追いかけ始める。
この手の話題では妙に張り切るので、止めた方が良かったかもしれないけど、僕も気になってはいたから乗っかるしかなかった。
ただ、路ちゃんは現状をどれくらい知っているのだろうか。
日葵さんの策略かどうかはわからないけど、現在の桐山くんは日葵さんにやや……だいぶピンクな感情を抱いている。
体育祭前は部活対抗リレーの件もあって真面目にやり取りしていたけど、あれから何か変化があったか僕も把握できていない。
少なくとも桐山くんが姫宮さんを好きな気持ちは変わってなさそうだから……日葵さんは体育祭というイベントに乗じて何か起こすつもりなのだろうか。
「……楽しそうに話している……感じには見えるけれど」
「なんだかんだで部活でも仲は良さそうだしね。ボケとツッコミ的な感じで」
「あっ。日葵ちゃんが肩を叩いた」
「やっぱりボディタッチが多めになってる……」
「やっぱり?」
「いや……何となくそんな気がしただけ」
「……言われてみると、そうかも。距離間も近いし……」
「まぁ、あれは道がちょっと狭いからじゃない?」
「良助くんは女子があれくらいの距離で近づいても何とも思わないの?」
「えっ? そう言われてもここ見た感じだけじゃわからな――」
突然の質問に答えとしたその時、日葵さんは急に後ろを振り向くので僕と路ちゃんは適当な物陰に隠れようとする。
だけど、自転車を押している僕がそう簡単に隠れられるわけがなかった。
それでも、日葵さんは何事もなかったかのように向き直して再び前に進みだす。
「き、気付かれちゃったかな……」
「そこそこ距離があったとは思うけど……どうだろう?」
すると、立ち止まっている僕と路ちゃんのスマホにそれぞれ通知が入る。
そこには「見届けご苦労様です」という文字とウインクした知らないキャラクターのスタンプがあった。
「……バレてたみたい」
「じゃあ……今日は撤収で」
スタンプの感情をどう取るべきかわからなかったけど、罪悪感の方が勝ったので僕らは撤退した。
結局、日葵さんと桐山くんがどうして一緒にいたかはわからなかったけど、日葵さんなら上手くやれそうな気がする。
もちろん、桐山くん自身の想いも応援したいけど……どちらが先に動くのだろうか。
明日の天気もところによっては雷雨が発生する可能性があるけれど、今日の時点では行うつもりで最後の準備が進められていく。
そんな今日は文芸部の休みになったので、放課後はそのまま帰宅するつもりだった。
途中までは路ちゃんと一緒に帰ろうと思い、僕が自転車を取ってくるまで校門で待ってもらっていると、僕の姿が見えた時点で路ちゃんは焦った様子で手招きする。
「どうしたの?」
「あ、あそこ……」
路ちゃんが指差した方向には日葵さんと桐山くんが並んで歩いていた。
文芸部の部長と副部長が偶然、帰るのが一緒になった……と一瞬考えたけど、すぐにそうではないかもしれないと思う。
「み、路ちゃんって、その……日葵さんの件は知ってるの?」
「知っているというか……何回か相談的なことを受けたから。良助くんにも相談した話は聞いてたから」
逆に僕は路ちゃんにまで相談していたことは知らなかったけど、ようやくこの話題を共有できる相手がいて少し安心する。
いや、協力者が2人なったところで良い方向に進むかはわからないけど。
「それで……良助くん。これはとてもいけないことだとは思うのだけれど……」
「気になるからちょっと後を付けてみよう、と」
「ふ、普通に明日の相談とかかもしれないけれど、一応というか……」
「まぁ……ちょうど帰り道の方向だし、ちょっとくらいなら許されるか」
「じゃあ、急がないと!」
路ちゃんはそう言いながらいつになく早足で追いかけ始める。
この手の話題では妙に張り切るので、止めた方が良かったかもしれないけど、僕も気になってはいたから乗っかるしかなかった。
ただ、路ちゃんは現状をどれくらい知っているのだろうか。
日葵さんの策略かどうかはわからないけど、現在の桐山くんは日葵さんにやや……だいぶピンクな感情を抱いている。
体育祭前は部活対抗リレーの件もあって真面目にやり取りしていたけど、あれから何か変化があったか僕も把握できていない。
少なくとも桐山くんが姫宮さんを好きな気持ちは変わってなさそうだから……日葵さんは体育祭というイベントに乗じて何か起こすつもりなのだろうか。
「……楽しそうに話している……感じには見えるけれど」
「なんだかんだで部活でも仲は良さそうだしね。ボケとツッコミ的な感じで」
「あっ。日葵ちゃんが肩を叩いた」
「やっぱりボディタッチが多めになってる……」
「やっぱり?」
「いや……何となくそんな気がしただけ」
「……言われてみると、そうかも。距離間も近いし……」
「まぁ、あれは道がちょっと狭いからじゃない?」
「良助くんは女子があれくらいの距離で近づいても何とも思わないの?」
「えっ? そう言われてもここ見た感じだけじゃわからな――」
突然の質問に答えとしたその時、日葵さんは急に後ろを振り向くので僕と路ちゃんは適当な物陰に隠れようとする。
だけど、自転車を押している僕がそう簡単に隠れられるわけがなかった。
それでも、日葵さんは何事もなかったかのように向き直して再び前に進みだす。
「き、気付かれちゃったかな……」
「そこそこ距離があったとは思うけど……どうだろう?」
すると、立ち止まっている僕と路ちゃんのスマホにそれぞれ通知が入る。
そこには「見届けご苦労様です」という文字とウインクした知らないキャラクターのスタンプがあった。
「……バレてたみたい」
「じゃあ……今日は撤収で」
スタンプの感情をどう取るべきかわからなかったけど、罪悪感の方が勝ったので僕らは撤退した。
結局、日葵さんと桐山くんがどうして一緒にいたかはわからなかったけど、日葵さんなら上手くやれそうな気がする。
もちろん、桐山くん自身の想いも応援したいけど……どちらが先に動くのだろうか。
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