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3年生2学期

9月13日(水)曇りのち晴れ 魅惑のダンス

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 絶妙な蒸し暑さが続く世界法の日。
 本日も午前中の2時間くらいは体育祭の練習になり、今年は中心で動かない3年生的にはやや暇な時間になった。
 やるべき授業が残り少ないからそれほど焦る必要はないのだろうけど、夏休み中に塾に通い詰めていた時よりもゆったりできている気がする。

「いやぁ、みんな若いなぁ。俺たちにもあんな時期があったんだぜ」

「たった1年前の話だろうに。少なくともオレは同じクラスで率先して動いている松永を見てたぞ」

「1年経ったからこそだよ。もうあんなにきゃぴきゃぴはできないんだ……」

 そんな中、今日は松永と本田くんも暇を持て余しているようで、運動場の適当な場所を陣取りながら、1・2年生の練習風景を眺めていた。

「僕たちにきゃぴきゃぴって表現は合ってるのか?」

「逆にどう言えばいいの? ギンギン?」

「いや、それはだいぶ違うだろう」

「でも、りょーちゃん見てみなよ。あそこでダンスの練習している赤チームの女子陣」

 松永にそう言われて僕はそちらへ視線を移すけど、すぐに何が言いたいかわかって視線を逸らした。

「お前えなぁ!?」

「俺は何も言ってないですー」

「今度伊月さんにチクってやる」

「それをしたら間接的に路子ちゃんに伝わっちゃうかもよ?」

「ぼ、僕は見てないし……」

「でも、そうなったらクラさんしか今の光景を楽しめなくなっちゃうじゃん」

「ぼ、ボクも別に楽しんでるわけでは……」

「いや、さっき倉さんも見てた」

「本田くん!?」

「そう言うぽんちゃんは?」

「……まぁ見たが」

「素直だ。りょーちゃんもこれくらい素直になりなよ」

「……本当そういうの良くないからな!」

「おー? 仲良し4人組は何してんの~?」

 突然の実香さんの登場に僕らは一斉に視線を散らして、各々言い訳をした。
 こんな感じで今日は特に何もない平和な日だったけど、夏休みで忙しかった分、こういう日もあっていいと個人的には思った……いや、さすがにこの内容ばかりだと良くないか。
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