上 下
888 / 942
3年生2学期

9月8日(金)曇り 後輩との日常・姫宮青蘭の場合その20

しおりを挟む
 ところによっては台風の影響があった林の日。
 本日も文芸部の活動が行われるけど、部活対抗リレーに参加する5人は創作活動の前に、リレーに関する相談をしていた。
 純粋に走る速さで言えば桐山くん、日葵さん、伊月さん、結香さん、姫宮さんの順になるらしい。

「とはいってもわたしと日葵、結香ちゃんはそんなに変わらないから……」

「青蘭をどこに設置するかが鍵ってこと?」

「序盤中盤終盤のどこでもいける」

 姫宮さんは何故かドヤった空気を出しながら言う。
 どうやら予想していた通り姫宮さんはそれほど走りが速いわけではないようだ。

「さすが姫宮さん!」

「桐山は真面目に考えて。去年は追い上げ式だったと思うから、先頭を青蘭にして、アンカーを桐山にする感じかな」

「私もそれでいいと思うけど、結香ちゃんはどう?」

「私は先輩方に迷惑がかからなければ……」

「もう。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。一人だけ1年生だから遠慮しちゃう気持ちもわかるけど」

 伊月さんと日葵さんを中心に作戦が立てられる中、暇になったのか姫宮さんが僕の方へやって来る。

「良助先輩」

「どうしたの?」

「日葵と茉奈が私のことを戦力外のように言ってきます。かなしい」

「そうだったのか。でも、足の速さに関係なく、積極的に参加しようとしたのはえらいと思うよ」

「それは慰めなのか褒めているのかわかりません」

「一応、褒めたつもりだったんだけど……実際、僕はクラスの種目決めだとめちゃめちゃ逃げ腰だった」

「そうですか。でしたらもう一度褒めてください」

「うん。姫宮さんはえらい」

「そしてかしこい」

「か、かしこい」

「さらにかわいい」

「かわ……って、なんで誘導してるの」

「だいぶ満足しました」

 そうやって話している間にリレーの走順は決まり、間の3人は伊月さん、実香さん、日葵さんと1年生を挟む形になったようだ。
 楽しむのが一番だと言いつつも伊月さんと日葵さんはわりと好戦的なので、姫宮さんの速さはややネックになっているのかもしれない。
 でも、僕としては本当に立候補したことは偉いと思うので、ここでももう一度褒めておこう。
 姫宮さんはえらい。
しおりを挟む

処理中です...