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3年生2学期

9月6日(水)曇り時々晴れ 最後の出場種目決め

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 折り返しの妹の日。
 本日から午前中の時間を使って体育祭の練習が始まる。
 体育祭実行委員は2年生が中心になっていて、チーム分けされた際の指示や案内もしっかりと行ってくれていた。

 そんな今年も体育祭の出場種目について相談する時期もやって来た。
 僕と大倉くんは例年通り腰を低くしながら最低限の出場にしてもらえるように備える。

「でも、りょーちゃんは部活対抗リレーの時、結構走れてたから……」

「それ去年も言われた気がするけど、気のせいだから。競ってる相手は文化部だから」

「クラさんも最後のなんだし、記念に走るのもいいんじゃない?」

「ぜ、全然そんなことない! というか、最後だからこそみんなが勝てるような配置がいいと思う!」

 なぜか松永が走らせるようなことを言ってきたので、腰が低いというよりはかなり必死になっていた。
 ただ、体育の時間で僕や大倉くんの運動能力は把握されているので、今年の僕は綱引き、大倉くんは玉入れに出場することが決まった。

「りょーちゃん、岸本ちゃんにかっこいいところ見せられる最後のチャンスなのに」

「別にそこでかっこよさを見せるつもりはない。なんで他の人をちょっと揺さぶるようなこと言ったんだよ……」

「いやぁ、最後だしりょーちゃんと一緒にリレーを繋ぐのもいいかと思って」

「松永…………別に僕は繋ぎたくない」

「この流れでも断られるのは相当だな……」

 エモさを演出したとしても僕の意志は揺らがない。
 クラスメイトが出場する競技や文芸部のリレーは応援するけど、僕自身は体育祭では静かに暮らしたい。

「りょーちゃんとクラさんの分も背負って俺やぽんちゃんは頑張るよ……」

「勝手に背負わされたが、まぁそれなりにやるよ。こんな風に体育祭へ出るのは本当に最後かもしれないし」

 本田くんの言う通り大学や就職先で体育祭的なものが行われるとは限らないから、本当に最後かもしれないけど……やっぱり僕はインドア派だった。
 でも、綱引きではしっかりと力や重量の一部となって頑張りたいと思う。
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