上 下
861 / 942
3年生夏休み

8月12日(土)晴れ 祖父母宅での夏休みⅢ

しおりを挟む
 夏休み22日目の配布の日。
 今日から1泊2日で京都の祖父母の家にお世話になる。
 いつも通り朝から父さんの運転で向かっている間は二度寝をさせてもらって、起きてから30分ほどすると到着した。

「よく来たねぇ、良助、明莉」

「おお、早う家に入って涼みんさい」

 祖父母はそう言って迎え入れてくれたけど、僕は何だか違和感を覚える。
 ばあちゃんが大きくなったと言わなくなった……のは別として、気になったのはじいちゃんの方だ。
 その違和感は父さんも感じていたようで、部屋に案内された後、本人ではなくばあちゃんの方に話しかける。

「あの……お義父さん、少しやせられました?」

「ああ……ちょっと最近の暑さに滅入ってるみたいでねぇ。特に熱中症とかじゃないんだけど、今年はまだお墓の掃除もできてないんだよ」

「そうだったんですか……じゃあ、僕がやってきますよ」

「いやいや。運転で疲れてるんだから少し休んだ方が……」

「だったら、僕と明莉が行くよ。たっぷり寝てたから疲れてないし」

 僕がそう言うと明莉は一瞬「えっ」という表情になったけど、すぐに笑顔に切り替える。

「まかせといて! でも、戻ったらアイス食べたいな」

「それじゃあ、お願いしようかねぇ」

 そうして、僕と明莉は掃除道具を持って祖父母宅から少し歩いたところにあるお墓へ向かう。

「うー……強制的に巻き込まれた」

「さすがに僕一人だと時間かかりそうだから……ごめん」

「素直に謝られると罪悪感がある」

「まぁ、これで僕らが熱中症になったら元も子もないから、ちゃちゃっと終わらせよう」

「うん……おじいちゃん、大丈夫かな」

 明莉はそうぽつりと呟いた後、周りの雑草抜きを始めたので、僕はバケツに水を汲んでから墓石を掃除する。
 夏休みに京都で会うじいちゃんの姿はいつもの元気な姿だったから、今日のじいちゃんが弱々しく見えたのは間違えじゃなかった。
 日々の暑さに滅入るのは僕達も同じだけど、じいちゃんがそうなるのは少しワケが違う。
 この夏の間に家でエアコンを付けずに亡くなるお年寄りも多いと聞くから、今日は僕達のために付けてくれていたとしても、普段はどうなのだろうか。

「おうおう。すまんな良助、明莉。代わりにしてもろうて」

「じ、じいちゃん。外に出て大丈夫なの?」

「ちょっとくらいは大丈夫じゃ。うん、十分綺麗になっとる」

「だったら、もう家に戻ろう! おじいちゃんもアイス食べて涼まなきゃ」

「はは。実は毎日のように食べてばあさんからちょっと怖い目で見られとるんじゃ」

「この暑さなら全然いいとあかりは思うけどなー」


「いや、たぶんアイスしか食べんせいじゃ」

「それは……あかりもちょっとダメだと思う。しっかり食べて体力付けないと。ね、りょうちゃん?」

「うん。今日は僕らも一緒に食べるから」

「そうじゃのう。今日はたくさん食べようか」

 そんな会話を終えた後、僕ら3人は家に戻ってばあちゃんが用意してくれたアイスを食べた。
 そして、夕飯の時には豪勢な料理が並んでいたけど……じいちゃんの食欲はかなり落ちているようだった。
 心配をかけないように僕らが来るまで何も言ってなかったようだけど、反対に心配してしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...