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3年生夏休み

8月8日(火)曇り 後輩との日常・岸元日葵の場合その19

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夏休み18日目のそろばんの日。
 そんな今日はお盆前最後の文芸部の活動だった。

「というわけで、夏休み前にも言ったような気がしますが、各々この夏を楽しみましょー!」

 日葵さんらしい締めの言葉を聞いた後、僕と路ちゃんは午後から塾へ向かうのでその準備をしていると、日葵さんが僕のところへやって来る。

「産賀センパイ、ちょっといいですかー? 忙しいとは思うんですけど、文芸部内でやつ集まりの参加について聞きたくて」

「あっ、うん。明日のやつ再来週の土曜は参加できないけど、それ以外は調整できるかも」

「本当ですか!」

「ちなみに他の日は何する予定なの?」

「えっと、今週の金曜はカラオケで、お盆明けの木曜はプール。その次の週はちょっと遠出してお昼頃からやってるお祭り的なやつに参加して……」

「け、結構盛りだくさんだね」

「そうですか? 夏休みなんだし、これくらいやってもいいと思います」

 日葵さんは当然のようにそう言ってきたので、僕が出不精なだけかもしれない。
 
「日葵さんって、その日以外も他の友達と遊びに行ったりするの?」

「はい。でも、今年は部活内で行くのを重視したいと思って」

「ああ、去年は友達とたくさん遊んだから的な?」

「それもありますけど……まぁ、あいつに会うにはこれが一番都合がいいので」

 そう言いながら日葵さんの目線は桐山くんに向けられる。
 勉強の日々ですっかり忘れていたけど、そういえば日葵さんと桐山くんの関係はまだどちらにも転んでいないんだった。

「もちろん、みんなで楽しむ目的が第一なんですけどね。あっ、この前の買い物の件はありがとうございます」

「えっ、僕何かしたっけ……?」

「いや、ひまりも具体的には知らないんですけど、宗太郎にアドバイスか何かしてくれたみたいじゃないですか。おかげでなんか張り切ってました」

「あっ、そういうことか。いい方向に行ったなら良かった」

「はい。おっと、路子センパイの予定も一応聞いてきますね」

「一応?」

「だって、産賀センパイがOKなら路子センパイもいいって言いそうだし」

 日葵さんは少しからかうような笑いを見せながら今度は路ちゃんの方へ聞きに行った。

 ただ、普段は鈍感な僕でも聞き逃さなかった。
 日葵さんの呼び方がいつの間にか宗太郎に変わっていたことを。
 部室内では桐山呼びだから本人をそう呼んでいるかはわからないけど、日葵さんはこれからもどんどん詰めていくのだと思う。
 でも、その部活の集まりには姫宮さんもいるだろうから……なかなか複雑なことになりそうだ。
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