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3年生夏休み

8月5日(土)晴れ 明莉との夏休みⅢその3

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 夏休み15日目のハンコの日。
 本日も塾の集中講義をこなしたので、僕の周りでは特筆すべきことは何も起こらなかった。
 ただ、僕が帰宅した我が家の方では色々なことが起こっていたようである。

「りょうちゃん、おかえりー」

「ただいま。あれ……?」

 居間に入って目に入ったのは明莉の姿と……机の上に置かれたティーカップだった。

「今日はお茶会でもあったの?」

「うん。今日は正弥くんと小織さんが来ててー」

「へー、桜庭くんと……桜庭先輩!?」

「両方苗字だとわかりづらいよ」

「ご、ごめん……じゃなくて! 桜庭先輩も来てたの!?」

「ついさっきまでいたよ」

 明莉はさっきまで桜庭先輩がいた場所を指差しながら言う。
 ちなみにいつもは僕の席となる場所だった。

「そんな話全然聞いてない……というか、いつ帰って来たんだ……」

「昨日だって。うちに来るって知ったのは今日だったけど」

「な、なるほど。ちなみに……どんな話したの?」

「お互いの近況報告とか最近の流行りの話とか」

「普通だ……」

「りょうちゃんはいったい何を警戒してるの。まずは元気だったかどうかを確認するでしょ」

 明莉はそう言うけど、我が家に襲来する時点で元気一杯なのは何となくわかる。
 でも、明莉の言う通り僕は少々警戒し過ぎているのかもしれない。
 僕と面識があって従弟の彼女が僕の妹だから同伴する……いや、普通しないだろう。

「桜庭くんはどんな気持ちで過ごしてたんだ……」

「うーん、いつもより緊張してる感じ?」

「それはそう。はぁ……来るんだったら僕にもひと言くらい連絡してくれたらいいのに」

「あかりもそう言ったけど、勉強の邪魔するのは悪いって。それにこっちにいる間はまた会う機会もあるだろうしって言った」

「それでもメッセージくらいは送っておこうかな。明莉、何も失礼なことはしてないよな?」

「当たり前じゃん。むしろ話が盛り上がって帰るまでにはもう2回くらいは来たいって言ってたよ」

「2回も来るつもりなのか……」

 その後、僕は少しばかり考えてから「明莉がお世話になりました」と送ると、桜庭先輩からは「相変わらず可愛い妹さんだった」と返信がきた。
 まぁ、桜庭先輩は元気そうで何よりで……桜庭くんはお疲れ様と言っておこう。
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