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3年生夏休み
8月4日(金)晴れ 後輩との日常・石渡沙綾の場合その7
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夏休み14日目の箸の日または橋の日。
来週の山の日からお盆が始まるところが多いので、夏休み中の文芸部の活動も来週の火曜で一旦お休みになる。
ただ、部活外の集まりは日葵さんが色々考えていたようで、8月から本格的に何かやっていくようだ。
「えっ、路子さんは来られないんですか……?」
「ご、ごめんね。その日は塾を優先させたくて……」
しかし、僕と路ちゃんは全てに参加できるわけではないので、お土産話を聞く方が多くなりそうだ。
「産賀さん!」
「ど、どうしたの?」
路ちゃんと話をしていたと思ったらいつの間にか石渡さんが険しい顔で僕の前に立っていた。
「8月19日の土曜は絶対に塾へ行かないといけないんですか!?」
「ぜ、絶対じゃないけど、その日は塾の集中講義があるから……」
「午後から参加するとかは」
「どっちかというと午後の方が2回分あるので……」
「……はぁ」
石渡さんのため息は「こいつ使えないな」と言われているような気がするのは僕の被害妄想だろうか。
石渡さんなら路ちゃんが受験生という事情を汲み取ってくれそうなものだけど、それとは別に遊びたい気持ちもあるんだろうか。
「石渡さんって部活外で路ちゃんと遊びに行ったことあるの?」
「は? あるわけないじゃないですか。あったら産賀さんは路子さんから聞いて知ってるでしょうに」
「た、確かにそうか。でも、それなら部活の集まりじゃなくて別の休みに遊びに行ったらいいんじゃないかな。日曜なら塾はないし」
「えっ……」
親切心で言ったつもりだけど、石渡さんは大そう驚いた表情を見せる。
何も間違ったことは言ってないつもりだけど……もしかして今のは路ちゃんの日曜の都合を考えてない発言に取られるだろうか。
それとも言い方がやや上からだったかも……
「で……」
「で?」
「で、できません」
「な、なぜ?」
「……恥ずかしいじゃないですか」
「何を……」
恥ずかしがる必要があるの、と言いそうになったけど、目の前の石渡さんが紅葉しているのを見て言葉を止める。
「じゃ、じゃあ……僕が今度それとなく話しとくよ。路ちゃんも後輩と出かけるのは嫌じゃないだろうし」
「ほ、本当に……?」
「うん。今日の話とかは絶対言わないから」
「……今回ばかりは感謝します」
そう言いながら石渡さんはその場で少し跳ねた。
まぁ、部室内なので路ちゃんの耳に聞こえている可能性もあるけれど、そこは路ちゃんも知らない体で聞いてくれるはずだ。
部室でこれだけ話せているなら、外で遊ぶのも問題ないような気がするけど……僕も遊びに誘うのは苦手なタイプなので、あまり強くは言えない。
それにしても……石渡さんの路ちゃんに対する感情は本当に難しい。
来週の山の日からお盆が始まるところが多いので、夏休み中の文芸部の活動も来週の火曜で一旦お休みになる。
ただ、部活外の集まりは日葵さんが色々考えていたようで、8月から本格的に何かやっていくようだ。
「えっ、路子さんは来られないんですか……?」
「ご、ごめんね。その日は塾を優先させたくて……」
しかし、僕と路ちゃんは全てに参加できるわけではないので、お土産話を聞く方が多くなりそうだ。
「産賀さん!」
「ど、どうしたの?」
路ちゃんと話をしていたと思ったらいつの間にか石渡さんが険しい顔で僕の前に立っていた。
「8月19日の土曜は絶対に塾へ行かないといけないんですか!?」
「ぜ、絶対じゃないけど、その日は塾の集中講義があるから……」
「午後から参加するとかは」
「どっちかというと午後の方が2回分あるので……」
「……はぁ」
石渡さんのため息は「こいつ使えないな」と言われているような気がするのは僕の被害妄想だろうか。
石渡さんなら路ちゃんが受験生という事情を汲み取ってくれそうなものだけど、それとは別に遊びたい気持ちもあるんだろうか。
「石渡さんって部活外で路ちゃんと遊びに行ったことあるの?」
「は? あるわけないじゃないですか。あったら産賀さんは路子さんから聞いて知ってるでしょうに」
「た、確かにそうか。でも、それなら部活の集まりじゃなくて別の休みに遊びに行ったらいいんじゃないかな。日曜なら塾はないし」
「えっ……」
親切心で言ったつもりだけど、石渡さんは大そう驚いた表情を見せる。
何も間違ったことは言ってないつもりだけど……もしかして今のは路ちゃんの日曜の都合を考えてない発言に取られるだろうか。
それとも言い方がやや上からだったかも……
「で……」
「で?」
「で、できません」
「な、なぜ?」
「……恥ずかしいじゃないですか」
「何を……」
恥ずかしがる必要があるの、と言いそうになったけど、目の前の石渡さんが紅葉しているのを見て言葉を止める。
「じゃ、じゃあ……僕が今度それとなく話しとくよ。路ちゃんも後輩と出かけるのは嫌じゃないだろうし」
「ほ、本当に……?」
「うん。今日の話とかは絶対言わないから」
「……今回ばかりは感謝します」
そう言いながら石渡さんはその場で少し跳ねた。
まぁ、部室内なので路ちゃんの耳に聞こえている可能性もあるけれど、そこは路ちゃんも知らない体で聞いてくれるはずだ。
部室でこれだけ話せているなら、外で遊ぶのも問題ないような気がするけど……僕も遊びに誘うのは苦手なタイプなので、あまり強くは言えない。
それにしても……石渡さんの路ちゃんに対する感情は本当に難しい。
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