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3年生1学期

7月9日(日)雨 岸本路子と産賀良助その8

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 僕は得意ではないジェットコースターの日。
 そんな今日は本来なら本田くん・栗原さんとのWデートへ行く予定だったけど、天候が悪いので延期となった。
 まぁ、夏休みの方が天候的にも良さそうなので、そこまで延ばしても良い気がする。

 その代わりといっては何だけど、昼から路ちゃんと通話を繋ぐことになった。

「あれ? りょうちゃん、なんで今髭なんて剃ってるの? まさか出かける感じ?」

 しかし、声だけじゃなく顔を映した状態で通話することになってしまったので、僕は急いで身だしなみを整える。

「えー そういうのってもっと家の中の自然な格好が見たいんじゃないの?」

「だとしても最低限の身だしなみは整えなきゃいけないでしょ」

「それはそうだけど、如何にも外行きって感じだから……」

 確かに服装まで整えたのはやり過ぎな気がしたけど……明莉の言うように家の中の自然な格好はオシャレのオの字もないような恰好だ。
 路ちゃんが家に来る時は制服じゃなければ、多少気合を入れなければならない。

『もしもーし』

 そうして、顔を映した状態での通話が始まる。
 路ちゃんの方はどちらかというと部屋着っぽい雰囲気があったので……これはチョイスミスだったか。

「聞こえてるよ。今日は雨凄いけど、そっちは大丈夫そう?」

『うん。他の地域はもっと凄いことになってるみたいだけれど……』

 いつも話すような雑談から始まり、Wデートの話や夏休みの予定などを僕らは話し合う。
 それだけなら別に顔を映さなくてもいいように思ったけど、ひと通り話が終わった後、路ちゃんは少し遠慮がちにある物を取り出す。

『あの……これから夕飯までの時間なのだけれど』

「うん?」

『もし良かったらこのまま通話を繋げてもらってもいい? わたし、これから読書をしようと思っていて』

「ああ、うん。大丈夫だけど……」

『ほ、本当にいい? 全然、他の予定があったらここで切ってもいいからね? わたしが単に繋いでおきたいというか……』

「いや、今日は僕もゆっくり休もうと思ったから。僕も本読むよ」

『ありがとう』

 その後、路ちゃんの姿を横目に見ながら2時間ほど読書した。
 路ちゃんは少し申し訳なさそうにしていたけど、スマホ越しでも姿が見えると何だか隣にいるかのような安心感というか、充実感というか……そんな何かを感じる。
 Wデートの延期は路ちゃん的に残念だったかもしれないけど、外に出なくてもこうやっていい時間を過ごせるのはいい関係だと僕は思う。
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