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3年生1学期
7月5日(水)雨 伊月茉奈との日常その17
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テスト最終日の穴子の日。
少しだけ夏の暑さに振り回されたテストも何とか乗り越えることができた。
受験生的には油断しちゃいけないけど、ひとまず落ち着ける。
「茉奈ちゃーん、こっちこっち~」
そんな今日の午後からは特に予定がなかったけど、たまたま部活がなかった松永が僕と路ちゃんをお昼ご飯に誘ってきた。
もちろん、3人で食べに行くわけではなく、校門前で伊月さんと合流した。
「お疲れ様です、産賀さん、路子さん。浩太くんが唐突にすみません……」
「えー、別にいいじゃん。このメンツで食べたいと思っただけなんだし」
「だからって当日に言うと困るでしょ」
「だ、大丈夫。わたし達もお昼どうしようかと思ってたところだったから」
「でも、路子さん的には産賀さんと2人が良かったんじゃ」
「そ、それを言うなら茉奈ちゃんも……」
「わ、わたしは違います! 断じて!」
「ほら、りょーちゃん。俺達の話題で盛り上がってるぜ」
「そう言われても……」
なんて口では言いつつも見ている分には少し楽しかった。
それから10分ほどかけてファストフード店に入り、ジャンクな昼食を取り始める。
「それで、実際のところはどうしてこのメンツでお昼を?」
「だから、俺が食べに行きたいと思ったから」
「本当にそれだけなのか……」
「まぁあとは、りょーちゃんと岸本さんが俺達より先にWデートしちゃうのがちょっと悔しいから飯だけでも的な?」
「お、お二人ともWデートするんですか!?」
その単語に食い付いたのは意外にも伊月さんだった。
「う、うん。過程は話せば長くなるから割愛するけど、同じクラスの2人と」
「バカップルとね」
「おい、松永……と言いたいところだけど、若干否定しづらい」
「路子さん、なんで教えてくれなかったんですか!」
「えっ? 言うにしても行ってからでいいかと……」
「そうかもしれないですけど! 逆によく我慢できてましたね。普段の路子さんなら――」
「ああー! ストップ!」
路ちゃんは普段は見せない素早い動きで目の前にいた伊月さんの口を塞ぐ。
「岸本さんって意外にも言いたがりだったり?」
「ち、違います! だったら、茉奈ちゃんだってこの前――」
「あー! ダメです! 絶対に言わないで!」
「先に言ったのは茉奈ちゃんの方なのだけれど」
「す、すみません……つい」
「りょーちゃん……2人はいつも文芸部でどんな話をしてるんだい?」
「わからないから僕は困惑してるよ」
盗み聞きする趣味はないので、狭い部室内でも女子陣が何を話しているのかはわからない。
何となく路ちゃんと茉奈ちゃんは真面目寄りだから、部室での話もそういう内容だと思っていたけど……いや、もしかしてLINEとかでも話したりするのか。
「茉奈ちゃん的にはWデートしてみたい?」
「……いや、自分でやるのはちょっと」
「そうなんだ。この4人で行くとしても?」
「わたしからすると先輩2人を前にすることになるから……」
「安易にイチャイチャできないと」
「し、してないから! 普段も!」
「でも、実際どういうもんなんかねー 仲良し4人で行くのとカップル2組で行くのは何か違うんだろう」
「それは……僕もわからない。というか、行きたいのはあっちサイドだから」
その後も暫くはWデートについて話していったけど……結局Wで行く意味があまり見出せない結論になった。
それでも行く予定は立てられてしまったので、本番で体験するしかない。
少しだけ夏の暑さに振り回されたテストも何とか乗り越えることができた。
受験生的には油断しちゃいけないけど、ひとまず落ち着ける。
「茉奈ちゃーん、こっちこっち~」
そんな今日の午後からは特に予定がなかったけど、たまたま部活がなかった松永が僕と路ちゃんをお昼ご飯に誘ってきた。
もちろん、3人で食べに行くわけではなく、校門前で伊月さんと合流した。
「お疲れ様です、産賀さん、路子さん。浩太くんが唐突にすみません……」
「えー、別にいいじゃん。このメンツで食べたいと思っただけなんだし」
「だからって当日に言うと困るでしょ」
「だ、大丈夫。わたし達もお昼どうしようかと思ってたところだったから」
「でも、路子さん的には産賀さんと2人が良かったんじゃ」
「そ、それを言うなら茉奈ちゃんも……」
「わ、わたしは違います! 断じて!」
「ほら、りょーちゃん。俺達の話題で盛り上がってるぜ」
「そう言われても……」
なんて口では言いつつも見ている分には少し楽しかった。
それから10分ほどかけてファストフード店に入り、ジャンクな昼食を取り始める。
「それで、実際のところはどうしてこのメンツでお昼を?」
「だから、俺が食べに行きたいと思ったから」
「本当にそれだけなのか……」
「まぁあとは、りょーちゃんと岸本さんが俺達より先にWデートしちゃうのがちょっと悔しいから飯だけでも的な?」
「お、お二人ともWデートするんですか!?」
その単語に食い付いたのは意外にも伊月さんだった。
「う、うん。過程は話せば長くなるから割愛するけど、同じクラスの2人と」
「バカップルとね」
「おい、松永……と言いたいところだけど、若干否定しづらい」
「路子さん、なんで教えてくれなかったんですか!」
「えっ? 言うにしても行ってからでいいかと……」
「そうかもしれないですけど! 逆によく我慢できてましたね。普段の路子さんなら――」
「ああー! ストップ!」
路ちゃんは普段は見せない素早い動きで目の前にいた伊月さんの口を塞ぐ。
「岸本さんって意外にも言いたがりだったり?」
「ち、違います! だったら、茉奈ちゃんだってこの前――」
「あー! ダメです! 絶対に言わないで!」
「先に言ったのは茉奈ちゃんの方なのだけれど」
「す、すみません……つい」
「りょーちゃん……2人はいつも文芸部でどんな話をしてるんだい?」
「わからないから僕は困惑してるよ」
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「茉奈ちゃん的にはWデートしてみたい?」
「……いや、自分でやるのはちょっと」
「そうなんだ。この4人で行くとしても?」
「わたしからすると先輩2人を前にすることになるから……」
「安易にイチャイチャできないと」
「し、してないから! 普段も!」
「でも、実際どういうもんなんかねー 仲良し4人で行くのとカップル2組で行くのは何か違うんだろう」
「それは……僕もわからない。というか、行きたいのはあっちサイドだから」
その後も暫くはWデートについて話していったけど……結局Wで行く意味があまり見出せない結論になった。
それでも行く予定は立てられてしまったので、本番で体験するしかない。
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