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3年生1学期

6月29日(木)曇り 大山亜里沙と産賀良助その7

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 期末テストが始まった佃煮の日。
 これまでならこの期末を乗り越えれば夏休み一直線だったけど、3年生の僕らにとってその夏休みは楽しいだけじゃない長期休みになる。
 僕も塾の集中講義が入っているし、人によっては推薦入試などが始まる時期だ。

「はぁ……」

 そんな中、いつも通り出席番号順に戻ったことで隣になった大山さんがわりと大きめのため息をつく。
 昨日の塾では話題が話題だっただけにちょっとテンション高めに見えたから、急な変化だった。

「どうしたの、大山さん?」

「うーん……これ終わったら夏休みに入るじゃん?」

「うん」

「そうなると、否が応でも小中の同級生と会う確率が上がるから……」

「あー……」

 すなわち、現在大山さんが自己防衛するために創り上げているイマジナリー彼氏の件が厄介になってくるということだ。
 男子Aさん(仮)といつ知り合ったかまでは教えてもらってないけど、以前は他の同級生を含めて遊ぶ仲だったと思われる。
 だから、男子Aさん(仮)からその話が広まっている可能性もあるし、言ってないにしてもまた誤魔化す必要があるのだ。

「テスト始まったのに何考えてるんだって話だケドね」

「いやいや。実際休みに入ると全然会わなかった人にもあったりするし」

「でしょ? まぁ、今年は受験生だから家に籠りっぱなしでもいいんだろうケド、学校や塾へ行く時に会うかもしれないし、何より……たまには遊びに行きたい!」

「ははっ。それはそうだ」

「えっ、そこ肯定してもいいの?」

「だって、テスト勝負で出かける予定はあるし、それに……」

「ミチともたまにはデートに行きたい?」

「ま、まぁ、うん……」

 敢えて言わないつもりだったけど、見透かされてしまった。
 そうでなくとも勉強の合間には息抜きは必要だと思うから……その息抜きの時間がストレスになるのは結構問題だ。

「一応さ。この悩みを一気に解決できる方法があるんだケド」

「えっ? そんな方法あったの?」

「うん。アタシがホンモノのこれを作る」

 そう言いながら大山さんは親指を立てた。

「それは……」

「わかってるって。簡単にできないから嘘ついてるワケだし。でも、夏休み中にいい出会いがある可能性もゼロじゃない」

「そ、そうか……」

「それか……もう出会っているケド、気付いてないだけとか」

「でも、あんまり焦らない方がいいと思うよ」

「おっ。現役リア充からありがたい言葉」

「そういう嫌味な感じじゃなくて……本当に」

「……うん。ありがと。ふう……まずはそれで悩むより目の前のテストだよね!」

 僕が思わず真剣になってしまったのは……去年の夏休み、実際の僕が焦ってしまったからだ。
 いや、大山さんの場合は僕と違ってフラれる可能性は低いだろうけど、付き合い始めてしまってからの方が面倒くさいこともある。
 ……なんて、いつから僕は人の恋愛事情に上から目線になってしまったんだろう。
 今週は余計なことを言わない方がいいと思っていたのに、また口が滑ってしまった。
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