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3年生1学期
6月26日(月)雨 忘却の児島さんその6
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雨の一週間が始まった露天風呂の日。
先週よりは少しだけ涼しく感じるけど、雨が続いても気温はあまり下がらないらしい。
「岸本さん、ちょっといい? さっきの授業のここなんだけど……」
「うん。えっと……そこはね」
そんな今日は路ちゃんと児島さんが話している姿を見かける。
席替えをしたので2人の席は遠くなっているはずだけど、先日の一件から話す機会が増えたのか、児島さんの方が路ちゃんの席までわざわざ行っているようだ。
「う、産賀くん。岸本さんと児島さんって仲良かったんだ」
その様子を見た大倉くんは少し驚きながら言う。
「元からちょっと話してたらしいけど、この前偶然会ってから仲良くなったんだ。僕もその場に居合わせてたけど」
「そ、それで……児島さんについて何か聞いたりした?」
「特に何も聞いてないけど……大倉くん。児島さんは僕たちが思っているような人じゃなかったんだよ。いたって普通の女子だったんだ」
「で、でも、みんなの記憶に残ってない問題は?」
「それは……単に印象に残るほど話していないだけじゃないかな」
「大山さんがあんまり覚えてなかったのも?」
その話を持ち出されると……僕は大倉くんを説得できるようなことは言えない。
それまで絡んだ回数で言えば、路ちゃんよりも多いはずの大山さんが特に印象を語れなかった理由とは何だろう。
この前の一件で変な考えは止めていたけど……
「み、路ちゃん。ちょっといい? さっきの休み時間もだけど、最近、児島さんとよく話してるよね?」
「うん。この前の土曜に話してから、よく話しかけてくれるようになったの」
「じゃ、じゃあ……今のところの児島さんの印象ってどう?」
その次の休み時間。僕は我慢できずに聞いてしまった。
しかし、路ちゃんは僕の質問に眉をひそめる。
「質問の意図がわからないのだけれど……」
「いやその……1年生の時とちょっと印象違うかなぁと思って」
「どんな印象だったかわからないけれど……わたしからいい人としか言えないわ」
「そ、そうか……」
「良助くん。あまり言いたくないはないのだけれど……あまり探るようなことをするのは良くないと思う」
「は、はい」
普通に怒られてしまったので、僕はそれ以上何も聞けなかった。
これから路ちゃんが絡んでいく中で、何か情報を得られるかもしれなかったけど、この感じだと今後はあまり話してくれないかもしれない。
先週よりは少しだけ涼しく感じるけど、雨が続いても気温はあまり下がらないらしい。
「岸本さん、ちょっといい? さっきの授業のここなんだけど……」
「うん。えっと……そこはね」
そんな今日は路ちゃんと児島さんが話している姿を見かける。
席替えをしたので2人の席は遠くなっているはずだけど、先日の一件から話す機会が増えたのか、児島さんの方が路ちゃんの席までわざわざ行っているようだ。
「う、産賀くん。岸本さんと児島さんって仲良かったんだ」
その様子を見た大倉くんは少し驚きながら言う。
「元からちょっと話してたらしいけど、この前偶然会ってから仲良くなったんだ。僕もその場に居合わせてたけど」
「そ、それで……児島さんについて何か聞いたりした?」
「特に何も聞いてないけど……大倉くん。児島さんは僕たちが思っているような人じゃなかったんだよ。いたって普通の女子だったんだ」
「で、でも、みんなの記憶に残ってない問題は?」
「それは……単に印象に残るほど話していないだけじゃないかな」
「大山さんがあんまり覚えてなかったのも?」
その話を持ち出されると……僕は大倉くんを説得できるようなことは言えない。
それまで絡んだ回数で言えば、路ちゃんよりも多いはずの大山さんが特に印象を語れなかった理由とは何だろう。
この前の一件で変な考えは止めていたけど……
「み、路ちゃん。ちょっといい? さっきの休み時間もだけど、最近、児島さんとよく話してるよね?」
「うん。この前の土曜に話してから、よく話しかけてくれるようになったの」
「じゃ、じゃあ……今のところの児島さんの印象ってどう?」
その次の休み時間。僕は我慢できずに聞いてしまった。
しかし、路ちゃんは僕の質問に眉をひそめる。
「質問の意図がわからないのだけれど……」
「いやその……1年生の時とちょっと印象違うかなぁと思って」
「どんな印象だったかわからないけれど……わたしからいい人としか言えないわ」
「そ、そうか……」
「良助くん。あまり言いたくないはないのだけれど……あまり探るようなことをするのは良くないと思う」
「は、はい」
普通に怒られてしまったので、僕はそれ以上何も聞けなかった。
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