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3年生1学期

6月21日(水)雨 塾での日常その6

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 本格的な夏が始まるらしい夏至の日。
 けれども今日から暫くはまた梅雨の天気になってしまうようだ。

 そんな中、今日も学校や塾に行くけれど、僕の頭の中では昨日の日葵さんの話がまだ残っていた。
 口が堅いと信頼してくれるのはありがたいけど、それが意味するところは口外しないで欲しいということだ。
 しかし、この手の話題を僕1人で抱えるのは非常に良くない。
 けれども、同じように友達の話と切り出すわけにもいかず……

「あーあ。みんな受験生だっていうのに彼氏彼女作っちゃってさー」

 塾の休み時間、重森さんはそう言いながら路ちゃんと大山さんを見る。
 そういう話の流れになったのは大山さんに彼氏ができたからだろうけど……その彼氏が偽りの存在だと重森さんは知らない。

「そんな風に言わなくても。美里は今好きな人いないの?」

「おっ、いきなり恋バナ始めちゃう? 今は……いないこともない」

「そ、そうなの!?」

「みーちゃん、こういう話結構好きだよね」

「ご、ごめんなさい。つい……」

「かわいいから全然いいよ」

 重森さんはそう言いながら路ちゃんの頭を撫でた。
 その動作に何か言おうかと思ったけど、その前に大山さんがやらかした表情をしていたのに気付く。
 このまま恋バナになってしまうと、イマジナリー彼氏について詳しく説明しなければならない可能性があるからだろう。
 一方、路ちゃんは重森さんの話題に食い付き気味で、大山さんの窮地に気付いていない。

「あ、あの!」

「うん? どうしたの産賀くん。ボディタッチ厳禁だった?」

「それは……なんとも言えないけど、ちょっと別で聞いて欲しい話があって」

「なになに?」

「…………」

「すっごい貯めるね?」

 これは貯めているのではなく、僕の頭の中で今一番ホットな話題が恋バナだから困ってしまっただけだ。
 流れを変えるためには別の話をしないといけないのに。
 でも、僕が提供できる話題で恋バナよりも興味をそそられるような話題なんてあるわけ……

「こ、今回のテスト、勝負しない? 期末終わったら夏休みも近いし、そのタイミングで何かおごる感じで」

「へぇ。今回は自信あるんだ?」

「いや、そういうわけじゃないけど……モチベーションアップのためにね。それに夏休み中も勉強する時間が多くなるだろうから、1つ楽しみを増やそう……的な」

「負けた人は楽しみかどうかわからないけど……私はいいよ。前回みたいにみんなで食べにいくの楽しいし」

「わ、わたしも……モチベーションアップのために」

「もちろん、アタシもオッケーだよ」

 大山さんはそう言いながら僕を見て少し頭を下げる。
 その後、話題は何を食べたいかの話に流れたから、窮地からは脱出できた。

 勝負するのは良いけど……最近の金銭事情的にはおごられる側になりたいところだ。
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