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3年生1学期
6月20日(火)晴れ 後輩との日常・岸元日葵の場合その17
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その爽やかさが欲しいくらいには暑かったペパーミントの日。
本日から部活は休みだけど、今回も石渡さんの希望から部室が解放されることになった。
僕は行っていいものか迷っていたけど、路ちゃんが石渡さんからのお誘いを受けたので、一応僕も付いて行くことにした。
「なるほどー そういう事情だったんですね。産賀センパイは罪な男だ……」
「いや、この場合は路ちゃんが罪な女になるような……って、そういうことじゃなくて」
その事情を日葵さんに説明すると、日曜と同じようなことを言われてしまった。
石渡さんから見たら僕は真逆の存在だろうに。
「というか、もっと早く付き合ってまーすって公表しても良かったんじゃないですか? ひまり達も何となく空気読んで黙ってましたけど」
「空気を読んでくれたのはありがとう。でも……そんな堂々と言うことでもないし」
「部内恋愛禁止ならともかく、何にもないなら付き合うのはいいことじゃないですか。何なら今から部長権限で恋愛大歓迎・推奨にします?」
「部長にそんな権限はない。それよりテスト勉強しに来たんだから口よりペンを動かして」
「わかってますよー だから、今回も産賀センパイに教えてもらおうと思ったんです。あっ。路子センパーイ、今から産賀センパイ借りますねー」
日葵さんの声に路ちゃんはやや思うところがあるような顔をしながらも頷く。
路ちゃん判定もなかなか厳しいけど、頼られたからには僕も応えるしかない。
「それで産賀センパイ。部内恋愛についてですけど」
「いや、そこの質問は受け付けてないから」
「わりと真面目な話なんですけど!」
「そりゃあ、日葵さんにとっては真面目かもしれないけど、話すにしても今度の機会に……」
「今がちょうどいいんです……ちょうどいないし」
「いないって何が?」
「……産賀センパイ。友達から聞いた話って前提いります?」
「えっ? それは……わかった。日葵さんの友達について聞いてることにする」
「たとえば、ある会社で社内恋愛から付き合い始めた2人がいるとします」
「随分年上の友達だ」
「それを他の社員も周知している中で、別の2人もある時期からちょっと気になる関係になってきました」
「恋愛ドラマのようだ」
「でも……前例がある分、少々動きづらい空気がありました。こんな時、どうしたらいいでしょうか?」
「うーん……別に前例は気にしなくてもいいと思うけど」
「その2人が社内恋愛している2人と全く同じ立場にあってもですか?」
「同じって……上司と後輩とかそういう感じ?」
「そんな感じです」
「……あれか。上司からしたら前例からの流れに乗じて後輩を狙ってると思われるのが嫌とか。1組目は社内的にも許容できるけど、2組目からは何を充てられているんだと思われる的な」
「産賀センパイ、いい妄想力です! そこから何か答えを!」
そう言われても結局は少し前の気にしなくていいに戻ってしまいそうになる。
いや、実際に僕が2組目に該当するなら、変に空気を読んでしまいそうな可能性もあるけど……
「あっ」
その時、ちょうど先週に松永と見た光景を思い出す。
松永曰く、何だかいい空気を感じるとかなんとか……
「ああっ!? そういうこと!?」
「…………」
「えっ、いや…………マジで気にする必要ないと思う。もしも否定されるなら、その会社の社風が悪い」
「そうですか……!」
「で、でも、日葵さん。なんで僕にそんな話を……」
「だって、産賀センパイ。先週見てたじゃないですか。茉奈のカレシと一緒に」
「バレてた!?」
「それに……産賀センパイなら口堅そうですし。恋愛においてもセンパイですし」
「そこは……大したことないと思う」
「じゃあ、とりあえず第一関門は突破で! ただなぁ……もっと難しい問題が残ってるんですよねぇ」
そう言った日葵さんの目は「わかりますよね?」と語り掛けているような気がした。
改めて自分のそういう勘が鈍いのと、松永の嗅覚……この場合は視覚か。とにかく察しの良さに驚かされた。
ついでに言うと、残念ながらこの日の部室での勉強は全く捗らなかった。
本日から部活は休みだけど、今回も石渡さんの希望から部室が解放されることになった。
僕は行っていいものか迷っていたけど、路ちゃんが石渡さんからのお誘いを受けたので、一応僕も付いて行くことにした。
「なるほどー そういう事情だったんですね。産賀センパイは罪な男だ……」
「いや、この場合は路ちゃんが罪な女になるような……って、そういうことじゃなくて」
その事情を日葵さんに説明すると、日曜と同じようなことを言われてしまった。
石渡さんから見たら僕は真逆の存在だろうに。
「というか、もっと早く付き合ってまーすって公表しても良かったんじゃないですか? ひまり達も何となく空気読んで黙ってましたけど」
「空気を読んでくれたのはありがとう。でも……そんな堂々と言うことでもないし」
「部内恋愛禁止ならともかく、何にもないなら付き合うのはいいことじゃないですか。何なら今から部長権限で恋愛大歓迎・推奨にします?」
「部長にそんな権限はない。それよりテスト勉強しに来たんだから口よりペンを動かして」
「わかってますよー だから、今回も産賀センパイに教えてもらおうと思ったんです。あっ。路子センパーイ、今から産賀センパイ借りますねー」
日葵さんの声に路ちゃんはやや思うところがあるような顔をしながらも頷く。
路ちゃん判定もなかなか厳しいけど、頼られたからには僕も応えるしかない。
「それで産賀センパイ。部内恋愛についてですけど」
「いや、そこの質問は受け付けてないから」
「わりと真面目な話なんですけど!」
「そりゃあ、日葵さんにとっては真面目かもしれないけど、話すにしても今度の機会に……」
「今がちょうどいいんです……ちょうどいないし」
「いないって何が?」
「……産賀センパイ。友達から聞いた話って前提いります?」
「えっ? それは……わかった。日葵さんの友達について聞いてることにする」
「たとえば、ある会社で社内恋愛から付き合い始めた2人がいるとします」
「随分年上の友達だ」
「それを他の社員も周知している中で、別の2人もある時期からちょっと気になる関係になってきました」
「恋愛ドラマのようだ」
「でも……前例がある分、少々動きづらい空気がありました。こんな時、どうしたらいいでしょうか?」
「うーん……別に前例は気にしなくてもいいと思うけど」
「その2人が社内恋愛している2人と全く同じ立場にあってもですか?」
「同じって……上司と後輩とかそういう感じ?」
「そんな感じです」
「……あれか。上司からしたら前例からの流れに乗じて後輩を狙ってると思われるのが嫌とか。1組目は社内的にも許容できるけど、2組目からは何を充てられているんだと思われる的な」
「産賀センパイ、いい妄想力です! そこから何か答えを!」
そう言われても結局は少し前の気にしなくていいに戻ってしまいそうになる。
いや、実際に僕が2組目に該当するなら、変に空気を読んでしまいそうな可能性もあるけど……
「あっ」
その時、ちょうど先週に松永と見た光景を思い出す。
松永曰く、何だかいい空気を感じるとかなんとか……
「ああっ!? そういうこと!?」
「…………」
「えっ、いや…………マジで気にする必要ないと思う。もしも否定されるなら、その会社の社風が悪い」
「そうですか……!」
「で、でも、日葵さん。なんで僕にそんな話を……」
「だって、産賀センパイ。先週見てたじゃないですか。茉奈のカレシと一緒に」
「バレてた!?」
「それに……産賀センパイなら口堅そうですし。恋愛においてもセンパイですし」
「そこは……大したことないと思う」
「じゃあ、とりあえず第一関門は突破で! ただなぁ……もっと難しい問題が残ってるんですよねぇ」
そう言った日葵さんの目は「わかりますよね?」と語り掛けているような気がした。
改めて自分のそういう勘が鈍いのと、松永の嗅覚……この場合は視覚か。とにかく察しの良さに驚かされた。
ついでに言うと、残念ながらこの日の部室での勉強は全く捗らなかった。
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