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3年生1学期

6月19日(月)晴れ 大倉伴憲との日常その39

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 晴れたけど、土日よりは暑さがマシだった朗読の日。
来週の木曜から1学期の期末テストなので、今日から部活停止するところもあるようだ。
 文芸部も明日から部活を停止するので、僕としてはテスト勉強を始める目安になっている。
 
 一方、帰宅部の大倉くんはテスト勉強に入るタイミングがなかなか難しいと言っていた。

「今回は土曜にオープンキャンパスへ行くからこの土日で始めようと思ったけど、一応再来週は土日も挟むから少し余裕があるとも思って……」

「それで、結局はどうしたの?」

「……新作ネットゲームをがっつりやってました」

「あー……トレンドに上がってたやつ」

「う、産賀くんもぜひ。めちゃくちゃ時間溶けるから」

「そ、そうなんだ。テスト終わってから考えるよ」

「……はっ!? ご、ごめん。勉強するかどうかの話だったのに」

「まぁ、僕もこの土日はどっちも出かけてたし。普段から勉強していれば何とか……」

 僕がそう言うと、大倉くんは露骨に目を逸らす。

「えっ。なんかちょっと前はゲーム作りのためにがんばる熱意を見せてたのに」

「そ、そこは変わらないけど、なんか……この5月から6月にかけて気になるタイトルがめっちゃ出てるというか……産賀くんもそう思わない!?」

「う、うーん……そう言われるとそんな気もするけど、ゲーム業界的にはそうなのかな? どっちかというと夏休みとか狙った方がいいように思うけど」

「その前に発売しておくことで、夏休み中にがっつり遊べるようにするんだと思う。それで休みに入ったらセールで過去作を売り出す」

「おお。そういう戦略か」

「ま、まぁ、実際は開発の延期とかもあるから、狙い通りとはいかないんだろうけどね……でも、開発者の人も大変で――」

 その後も大倉くんとゲームの発売や開発についてちょっとした議論を交わした。
 恐らく専門書や動画で見た内容も説明してくれたので、熱意が消えていないのは本当だったようだ。
テスト勉強はどうしたと思われるかもしれないけど、単に遊ぶ話だけじゃない内容だったから良い会話だった……ということにしておこう。
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