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3年生1学期
6月14日(水)雨時々曇り 大山亜里沙と産賀良助その6
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はっきりしない天気が続く世界献血者デー。
大山さんが友人の男子A(僕の中での勝手な呼称)の誘いを断るために、イマジナリー彼氏を作り上げてから結構時間が経った。
協力者である僕と路ちゃんは時折続報を聞いているけど、とりあえずここ最近は落ち着いた時間になっているらしい。
「それで亜里沙の今彼、そろそろ会わせてくれてもいいんじゃない?」
「あー……今はちょっと都合悪いっていうか……」
「それ、前も言ってなかった?」
しかし、イマジナリー彼氏の件を事実であるように信じさせるにはある程度周りにも言わなければいけなかったらしく、先のような探りを入れられることも増えてきていた。
この日は栗原さんの興味がかなり高まっているようだった。
「そんなに会わせたくないってことは……今回の彼はマジで行きたいってこと?」
「そ……そうそう! そんなカンジ!」
「でも、安心して。私には真ちゃんがいるから!」
「いや、別にそこを疑ってるワケじゃないんだケド……」
「あっ、ゴメン……つい話題に出しちゃって……」
「ううん。本田のことはもう終わった話だから全然」
「じゃあ、今度ダブルデートとか行かない?」
「はぁ!?」
大山さんのわりと大きめの声は騒がしいクラス内だとかき消されるけど、事情を知っている僕の耳にはしっかり入ってきた。
「そ、そんなに驚かなくても。前は一回くらいやってみてもいいって言ってたし」
「それいつ話か覚えてないし! とにかく、この件は放っておいて!」
「亜里沙……ホントはなんかあるんじゃないの?」
「えっ?」
「なんかあんまり今彼との関係性が見えてこなくて……たとえば弱み握られてるとかそういうのじゃないかなと思ってて」
「ち、違うよ。心配してくれるのは嬉しいケド、めちゃめちゃ……すごく良好な関係で……」
「それならいいけど……」
そう言いながらも栗原さんは心配そうな目を向ける。
勘違いではあるけど、イマジナリー彼氏ができた原因は大山さんが困っていたところから始まっているから、栗原さんの勘はあながち間違っていない。
そういえば……大山さんと本田くんを付き合わせようとしていた時も、僕からその情報がバレてしまったのだった。
このままだと栗原さんが気付くのも時間の問題で……いっそ話して協力してもらった方がいいのでは?
いやでも、僕が判断することでは――
「く、栗原さん!」
僕が色々考えていると、いつの間にか大山さんと栗原さんの間に路ちゃんが立っていた。
「わ、わたしと良助くんが代わりにダブルデートの相手になるのは……どう?」
路ちゃんの発言に僕は驚いて思わず立ち上がる。
そして、先ほどの大山さんの驚きはかき消されたはずなのに、路ちゃんが言った時に限ってクラスの会話がぴたりと止まっていた。
「……いいじゃん、それ! 岸本さんも言うようになったねー このこのー」
「そ、そういうわけじゃないのだけれど……」
「じゃあじゃあ、予定決めようか。あっ、産賀くーん! 今の話聞いたー?」
その後、路ちゃんは栗原さんと話す時間になり、僕は他の男子からしこたま弄られた。
普段からあまり匂わせなかった分、路ちゃんの発言は必要以上に大胆に聞こえてしまったのだろう。
まぁ、これも大山さんの秘密のためなら仕方ない……のか?
大山さんが友人の男子A(僕の中での勝手な呼称)の誘いを断るために、イマジナリー彼氏を作り上げてから結構時間が経った。
協力者である僕と路ちゃんは時折続報を聞いているけど、とりあえずここ最近は落ち着いた時間になっているらしい。
「それで亜里沙の今彼、そろそろ会わせてくれてもいいんじゃない?」
「あー……今はちょっと都合悪いっていうか……」
「それ、前も言ってなかった?」
しかし、イマジナリー彼氏の件を事実であるように信じさせるにはある程度周りにも言わなければいけなかったらしく、先のような探りを入れられることも増えてきていた。
この日は栗原さんの興味がかなり高まっているようだった。
「そんなに会わせたくないってことは……今回の彼はマジで行きたいってこと?」
「そ……そうそう! そんなカンジ!」
「でも、安心して。私には真ちゃんがいるから!」
「いや、別にそこを疑ってるワケじゃないんだケド……」
「あっ、ゴメン……つい話題に出しちゃって……」
「ううん。本田のことはもう終わった話だから全然」
「じゃあ、今度ダブルデートとか行かない?」
「はぁ!?」
大山さんのわりと大きめの声は騒がしいクラス内だとかき消されるけど、事情を知っている僕の耳にはしっかり入ってきた。
「そ、そんなに驚かなくても。前は一回くらいやってみてもいいって言ってたし」
「それいつ話か覚えてないし! とにかく、この件は放っておいて!」
「亜里沙……ホントはなんかあるんじゃないの?」
「えっ?」
「なんかあんまり今彼との関係性が見えてこなくて……たとえば弱み握られてるとかそういうのじゃないかなと思ってて」
「ち、違うよ。心配してくれるのは嬉しいケド、めちゃめちゃ……すごく良好な関係で……」
「それならいいけど……」
そう言いながらも栗原さんは心配そうな目を向ける。
勘違いではあるけど、イマジナリー彼氏ができた原因は大山さんが困っていたところから始まっているから、栗原さんの勘はあながち間違っていない。
そういえば……大山さんと本田くんを付き合わせようとしていた時も、僕からその情報がバレてしまったのだった。
このままだと栗原さんが気付くのも時間の問題で……いっそ話して協力してもらった方がいいのでは?
いやでも、僕が判断することでは――
「く、栗原さん!」
僕が色々考えていると、いつの間にか大山さんと栗原さんの間に路ちゃんが立っていた。
「わ、わたしと良助くんが代わりにダブルデートの相手になるのは……どう?」
路ちゃんの発言に僕は驚いて思わず立ち上がる。
そして、先ほどの大山さんの驚きはかき消されたはずなのに、路ちゃんが言った時に限ってクラスの会話がぴたりと止まっていた。
「……いいじゃん、それ! 岸本さんも言うようになったねー このこのー」
「そ、そういうわけじゃないのだけれど……」
「じゃあじゃあ、予定決めようか。あっ、産賀くーん! 今の話聞いたー?」
その後、路ちゃんは栗原さんと話す時間になり、僕は他の男子からしこたま弄られた。
普段からあまり匂わせなかった分、路ちゃんの発言は必要以上に大胆に聞こえてしまったのだろう。
まぁ、これも大山さんの秘密のためなら仕方ない……のか?
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