768 / 942
3年生1学期
5月11日(木)晴れ 後輩との日常・姫宮青蘭の場合その16
しおりを挟む
過ごしやすい気温だったご当地キャラの日。
この日は母さんがお弁当を作れなかったので、珍しく購買で昼食を買うことになった。
同じく買いに行く予定だった松永と共に3時間目終わりの休み時間に1階の購買へ向かう。
「あっ、姫宮さん」
すると、偶然何かを買い終えた姫宮さんと出会った。
現2年生とは部室以外ではあまり遭遇しないので、これまた珍しいことだ。
「こんにちは。良助先輩」
「う、うん……」
「へー、りょーちゃんは後輩に名前呼びさせてるんだ。意外~」
「い、いや、これはその……」
「別に悪いとは言ってないから。でも、今さら呼ばれて照れるの?」
松永はからかい気味にそう言ってくる。
ただ、この呼び方に変わったのはつい最近のことで、他の後輩は呼ばないからまだ慣れていない。
「そちらの方は確か」
「おっ、覚えてくれてるの? まぁ、茉奈ちゃんといる時に会ったりしてたから――」
「テニス部のウェイ系の人でしたか」
「なにその覚え方!?」
「間違えました。テニス部のうるさい人です」
「ひどくなってない!? ねぇ、りょーちゃん! もしかしてこれ嫌われてる!?」
嫌われているかどうかの判定は難しいところだけど、姫宮さんからすると松永はだいぶやかましい人に見えているらしい。
僕が知らないところで伊月さんと一緒の時に会っていたのだろうか。
「良助先輩はなにを買う予定ですか?」
「無視された!?」
「まだ決めてないよ。今日は何が売ってたの?」
「よく覚えていませんがメロンパンがおすすめです」
「そうなの? というか、姫宮さんってお昼は購買だったんだ」
「週3くらいです。残りは他の人から奪っています」
「ま、マジか」
「いえ。奪っているというのは嘘です。ただ菓子パンばかり食べているとなぜか分け与えられるので」
「なるほどね。でも、今日くらいは菓子パンにするのもありかも」
「そうですか。だったら――」
そう言いながら姫宮さんは袋から購入した物を取り出す。
「メロンパンとチョココロネ。これでお揃いです」
「うん?」
「おすすめなので」
「わ、わかった。参考にする」
唐突な行動に少し戸惑ってしまったけど、姫宮さんはそれだけ言い残すと先に帰ってしまった。
しかし、そう言われてしまったからには僕もメロンパンとチョココロネを買わざるを得ない。
「……なぁ、りょーちゃん」
「なんだよ。まだ凹んでるのか」
「いや、それもあるけども。そっちじゃなくて、姫宮さんってさ」
「なに?」
「――やっぱ何でもないわ」
「別に隠さなくてもいいぞ。姫宮さんは……結構変な子だよ」
「言っちゃっていいの」
「だって、事実だし。でも、変で面白い子だから、そこは勘違いしないように」
それがフォローになっているのか微妙なところだけど、松永はそれ以上追及してこなかった。
はからずも甘い昼食になったけど、たまにはこういう昼食もありだと思ったので、おすすめしてくれた姫宮さんに感謝する。
この日は母さんがお弁当を作れなかったので、珍しく購買で昼食を買うことになった。
同じく買いに行く予定だった松永と共に3時間目終わりの休み時間に1階の購買へ向かう。
「あっ、姫宮さん」
すると、偶然何かを買い終えた姫宮さんと出会った。
現2年生とは部室以外ではあまり遭遇しないので、これまた珍しいことだ。
「こんにちは。良助先輩」
「う、うん……」
「へー、りょーちゃんは後輩に名前呼びさせてるんだ。意外~」
「い、いや、これはその……」
「別に悪いとは言ってないから。でも、今さら呼ばれて照れるの?」
松永はからかい気味にそう言ってくる。
ただ、この呼び方に変わったのはつい最近のことで、他の後輩は呼ばないからまだ慣れていない。
「そちらの方は確か」
「おっ、覚えてくれてるの? まぁ、茉奈ちゃんといる時に会ったりしてたから――」
「テニス部のウェイ系の人でしたか」
「なにその覚え方!?」
「間違えました。テニス部のうるさい人です」
「ひどくなってない!? ねぇ、りょーちゃん! もしかしてこれ嫌われてる!?」
嫌われているかどうかの判定は難しいところだけど、姫宮さんからすると松永はだいぶやかましい人に見えているらしい。
僕が知らないところで伊月さんと一緒の時に会っていたのだろうか。
「良助先輩はなにを買う予定ですか?」
「無視された!?」
「まだ決めてないよ。今日は何が売ってたの?」
「よく覚えていませんがメロンパンがおすすめです」
「そうなの? というか、姫宮さんってお昼は購買だったんだ」
「週3くらいです。残りは他の人から奪っています」
「ま、マジか」
「いえ。奪っているというのは嘘です。ただ菓子パンばかり食べているとなぜか分け与えられるので」
「なるほどね。でも、今日くらいは菓子パンにするのもありかも」
「そうですか。だったら――」
そう言いながら姫宮さんは袋から購入した物を取り出す。
「メロンパンとチョココロネ。これでお揃いです」
「うん?」
「おすすめなので」
「わ、わかった。参考にする」
唐突な行動に少し戸惑ってしまったけど、姫宮さんはそれだけ言い残すと先に帰ってしまった。
しかし、そう言われてしまったからには僕もメロンパンとチョココロネを買わざるを得ない。
「……なぁ、りょーちゃん」
「なんだよ。まだ凹んでるのか」
「いや、それもあるけども。そっちじゃなくて、姫宮さんってさ」
「なに?」
「――やっぱ何でもないわ」
「別に隠さなくてもいいぞ。姫宮さんは……結構変な子だよ」
「言っちゃっていいの」
「だって、事実だし。でも、変で面白い子だから、そこは勘違いしないように」
それがフォローになっているのか微妙なところだけど、松永はそれ以上追及してこなかった。
はからずも甘い昼食になったけど、たまにはこういう昼食もありだと思ったので、おすすめしてくれた姫宮さんに感謝する。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
とうめいな恋
春野 あかね
青春
とうめい人間と呼ばれている瑞穂と、余命僅かと宣告された爽太は一週間だけ、友達になるという約束をする。
しかし瑞穂には、誰にも言えない秘密があった。
他人に関して無関心だった二人が惹かれあう、二人にとっての最期の一週間。
2017年 1月28日完結。
ご意見ご感想、お待ちしております。
この作品は小説家になろうというサイトにて掲載されております。
あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!
コウ
青春
またダメ金か、、。
中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。
もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。
[絶対に入らない]そう心に誓ったのに
そんな時、屋上から音が聞こえてくる。
吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。
GUNGIRLs -MädchenWaffE- SidE-Y
SchutzausrüstunG
青春
極近未来で行われている競技サバイバルゲーム(CNS)は、
世界規模の競技へと昇り詰めていた。
最新のAR・AI技術を駆使して行われる戦いは、
安全な戦争(セーフウォー)と呼ばれ、
両若男女、多数のプレイヤーが日々競っている。
学力以外は問題のない主人公『弓木雪菜』
彼女は憧れの選手を目指してCNSに取り組んでいた。
しかし、
文武両道とは行かず、夢半ばで諦めてしまう。
大きな犠牲を払い挑む高校受験。
志望校への進学と待ち受ける運命的な出逢い。
ここから彼女の人生は大きく変わっていく。
この物語はそんな彼女の視点で語られていきます。
全年齢を前提としますが、
表現によっては年齢制限をつける予定です。
※恋愛百合物語が主体で、
ミリタリー要素が多数含まれます。
専門用語等は別章にて追記してあり、
ちょっと見づらいかもしれません、ご了承ください。
カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる