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3年生1学期
5月5日(金)晴れのち曇り 大山亜里沙と産賀良助その2
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僕もギリギリ対象になっていると思われるこどもの日。
塾の集中講義も3日目になるけど、今日は路ちゃんと重森さんは用事があったので不参加だった。
だから、今日話せる知り合いは大山さんだけだった。
「それでさー あっち言い分なんだケド……」
しかし、その大山さんは塾内に別の知り合いがいたようで、休憩時間中はその人達と話していた。
よく考えたら英数以外の講義にも出ているから、他に知り合いがいても不思議ではない。
だから、この日はちょっとだけ寂しく抗議を受けていた。
「うぶクン、この後ヒマ?」
そう思っていたら、講義が終わって帰ろうとしていた時に大山さんから声をかけられる。
「うん。暇だけど……何かあるの?」
「ちょっと話してでもしようかと思って。ついでにお昼とか食べちゃう?」
「お、お昼も?」
「いや、無理にとは言わないから」
「無理じゃないよ。ちょっと連絡入れる」
そう言いながら家にお昼を食べるように連絡を入れるけど……少し意外な展開だった。
以前にも食べに行ったことはあるけど、それは勝負した結果のおごりという理由があった。
でも、今回は何の前ぶれもなかったので、少し困惑してしまったのだ。
お昼の場所はハンバーガーショップで、祝日だからドライブスルーはかなり混んでいたけど、店内で食べる分にはそれほど待たずに注文を終えられた。
「結構久しぶりに来るわ~ うぶクンは? ミチと来たりする?」
「いや、僕も久しぶりだよ」
「へぇ。じゃあ、普段はどこで食べてるの?」
「どっちかというとカフェ系かな。まぁ、お昼食べて来てから出かけること多いから」
そんな話をしながら席に座ると、大山さんは食べ始める前に少し前のめりになって言う。
「……でさ。最近、ミチとはどんなカンジなの?」
「えっ? どんな感じと言われても……見たままの感じというか」
「そこはアタシが見えてない範囲の話を聞いてるんじゃん」
「そ、そうか……そうだよね」
大山さんは補足してくるけど、そう言われてもどう答えればいいか困ってしまう。
「……普通な感じだと思う」
「普通って……何が?」
「い、いや、逆に聞くけど、どう返すのが正解なの」
「どう答えるか含めて聞きたかったのにー まぁ、変わらずいいカンジってことね。あっ、食べていいよー」
大山さんはそう言いながら食べ始める。
これまではあんまり聞かれてこなかった話題だから困惑したけど、最近は大山さんと2人で話す機会がほぼなかったことを思い出す。
塾では必ず路ちゃんと重森さんがいるし、学校でも2人きりになることはまずない。
いや、女子の知り合いと2人で話す状況が珍しいのだろうけど……いや、以前はそんなこともなかったような……?
「……今日はゴメンね。うぶクンはぼっちにしちゃって」
「うん? ああ、別にそれは構わないよ。大山さんだって他の知り合いがいるだろうし」
「いや、それもあるんだケド……塾の中だとアタシと2人きりで話してるの見られるのは……なんか違うかなって」
「違うって……」
「いや、ほら。別に全員がうぶクンとミチが付き合ってるの知ってるワケじゃないし」
「そういうことか。でも、それで勘違いされるようなことは……」
「……あったからね」
「……あった。忘れてたよ」
「だから、それも含めてご飯でも食べないって思ったの」
「なるほど。ここなら知り合いに見られる可能性もないか」
「うん? どゆこと?」
「いや、今も一応2人だし」
「あー…………」
「もしかして気付いてなかったの!?」
「い、いや、確かにここならセーフだし! まったく問題ナシ!」
「本当に?」
「本当ホント。でも、後でちゃんとミチには報告してね。アタシからもしとくから」
「わ、わかった」
そんな会話を終えた後は、普通の雑談に戻ったけど、僕は少しだけ周りの目が気になってしまった。
いや、僕としては1年生の頃に勘違いされたのは本当に偶然で、普通は大山さんと関係性を疑わるようなことはないと思っている。
ただ……大山さんの方は思ったよりも気にしていたのかもしれない。
無意識でご飯に誘ってしまうのはちょっと笑ってしまうけど、そこも含めて大山さんらしい。
塾の集中講義も3日目になるけど、今日は路ちゃんと重森さんは用事があったので不参加だった。
だから、今日話せる知り合いは大山さんだけだった。
「それでさー あっち言い分なんだケド……」
しかし、その大山さんは塾内に別の知り合いがいたようで、休憩時間中はその人達と話していた。
よく考えたら英数以外の講義にも出ているから、他に知り合いがいても不思議ではない。
だから、この日はちょっとだけ寂しく抗議を受けていた。
「うぶクン、この後ヒマ?」
そう思っていたら、講義が終わって帰ろうとしていた時に大山さんから声をかけられる。
「うん。暇だけど……何かあるの?」
「ちょっと話してでもしようかと思って。ついでにお昼とか食べちゃう?」
「お、お昼も?」
「いや、無理にとは言わないから」
「無理じゃないよ。ちょっと連絡入れる」
そう言いながら家にお昼を食べるように連絡を入れるけど……少し意外な展開だった。
以前にも食べに行ったことはあるけど、それは勝負した結果のおごりという理由があった。
でも、今回は何の前ぶれもなかったので、少し困惑してしまったのだ。
お昼の場所はハンバーガーショップで、祝日だからドライブスルーはかなり混んでいたけど、店内で食べる分にはそれほど待たずに注文を終えられた。
「結構久しぶりに来るわ~ うぶクンは? ミチと来たりする?」
「いや、僕も久しぶりだよ」
「へぇ。じゃあ、普段はどこで食べてるの?」
「どっちかというとカフェ系かな。まぁ、お昼食べて来てから出かけること多いから」
そんな話をしながら席に座ると、大山さんは食べ始める前に少し前のめりになって言う。
「……でさ。最近、ミチとはどんなカンジなの?」
「えっ? どんな感じと言われても……見たままの感じというか」
「そこはアタシが見えてない範囲の話を聞いてるんじゃん」
「そ、そうか……そうだよね」
大山さんは補足してくるけど、そう言われてもどう答えればいいか困ってしまう。
「……普通な感じだと思う」
「普通って……何が?」
「い、いや、逆に聞くけど、どう返すのが正解なの」
「どう答えるか含めて聞きたかったのにー まぁ、変わらずいいカンジってことね。あっ、食べていいよー」
大山さんはそう言いながら食べ始める。
これまではあんまり聞かれてこなかった話題だから困惑したけど、最近は大山さんと2人で話す機会がほぼなかったことを思い出す。
塾では必ず路ちゃんと重森さんがいるし、学校でも2人きりになることはまずない。
いや、女子の知り合いと2人で話す状況が珍しいのだろうけど……いや、以前はそんなこともなかったような……?
「……今日はゴメンね。うぶクンはぼっちにしちゃって」
「うん? ああ、別にそれは構わないよ。大山さんだって他の知り合いがいるだろうし」
「いや、それもあるんだケド……塾の中だとアタシと2人きりで話してるの見られるのは……なんか違うかなって」
「違うって……」
「いや、ほら。別に全員がうぶクンとミチが付き合ってるの知ってるワケじゃないし」
「そういうことか。でも、それで勘違いされるようなことは……」
「……あったからね」
「……あった。忘れてたよ」
「だから、それも含めてご飯でも食べないって思ったの」
「なるほど。ここなら知り合いに見られる可能性もないか」
「うん? どゆこと?」
「いや、今も一応2人だし」
「あー…………」
「もしかして気付いてなかったの!?」
「い、いや、確かにここならセーフだし! まったく問題ナシ!」
「本当に?」
「本当ホント。でも、後でちゃんとミチには報告してね。アタシからもしとくから」
「わ、わかった」
そんな会話を終えた後は、普通の雑談に戻ったけど、僕は少しだけ周りの目が気になってしまった。
いや、僕としては1年生の頃に勘違いされたのは本当に偶然で、普通は大山さんと関係性を疑わるようなことはないと思っている。
ただ……大山さんの方は思ったよりも気にしていたのかもしれない。
無意識でご飯に誘ってしまうのはちょっと笑ってしまうけど、そこも含めて大山さんらしい。
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