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3年生1学期
4月25日(火)雨 後輩との日常・野島結香の場合
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完全に冬の寒さが帰って来たカレーラーメンの日。
新入部員が加わって2回目の文芸部が始まり、日葵さんと桐山くんを中心に小説の書き方の基礎などが教えられていく。
1年生3人はそれを真剣に聞いていたけど……
「それじゃあ、お先に失礼します。お疲れ様でした」
三浦くんはメインの活動が終わるとすぐに帰ってしまった。
もしかしたら部活後に何か予定があるのかもしれないけど、それを聞こうにもまだコミュニケーションが取れていない段階だ。
GW中には歓迎会があるから、そこで何とか話せるのを願っている。
「あの、産賀さん」
そんな中、三浦くんとは逆に話しかけてくる1年生がいた。
未だに呼び方がどうしようか迷っている野島さん(妹)だ。
「どうしたの……野島さん?」
「……姉と知り合いというのは本当でしょうか?」
「ああ、うん。野島実香さんだよね」
「はい。じゃあ、私の話も何か聞いてたりしますか?」
「いや……それが恥ずかしいことについ最近妹さんがいるのを知ったんだ。というか、野島さんのお姉さんと話すのも進級してから久しぶりで」
隠してもしょうがないので僕は素直に話すと、野島さん(妹)はなぜか安心したような態度を見せる。
「えっと……僕からも質問になるけど、お姉さんから僕の話を聞いたりした?」
「少しだけ聞きました……が、半分くらいは聞き流したのであまり覚えていません」
「そ、そうなんだ」
「あっ。でも、一つだけ覚えています。産賀さんはああ見えて彼女持ち……と姉が言っていました」
「ああ見えて……」
どう見えているんだと聞きたいところだけど、そこまでは解説していないだろう。
「……で、本当なんですか?」
そう聞いてきた野島さん(妹)は最初に話した時も表情は和らいで、好奇心を抑えられない感じだった。
この手の話題が好きなのはお姉さんと同じらしい。
「まぁ、うん」
「おお……! できれば詳しく聞きたいです」
「あー……プライベートなことなので」
「芸能人みたいな断り方ですね!? まさかただれた恋なんですか……?」
「ち、違うよ。シンプルに……恥ずかしいだけ」
それは半分本当のことだったけど、もう半分はその相手がこの部活内にいると教えるのはまだ早いと思ったからだ。
いや、たぶん野島さん(妹)と距離を縮めるには絶好の話題なんだけど、初絡みからその話題を使えるほど僕はコミュ力が高くない。
「別に恥ずかしがらなくてもいいのに。愛する人がいるのは素敵なことですよ」
「……野島さんは結構積極的なタイプなんだね」
「そうでしょうか? まぁ、先週は少し緊張していましたが、本来の私はこんな感じです。なので、今後はこの感じでいかせて貰えたらと思います」
「わかったよ」
「ところで……本当に詳しく教えてくれないんですか?」
「ま、まぁ、そのうちね」
僕がそう言うと、野島さん(妹)は露骨につまらなさそうな顔になった。
早い段階で打ち解けられそうな新入部員がいるのは良かったけど、僕に対する興味は文芸部から少し離れたところから始まってしまった。
遅かれ早かれ気付かれるとは思うけど……残りの2人も含めてもうしばらく黙っておこう。
新入部員が加わって2回目の文芸部が始まり、日葵さんと桐山くんを中心に小説の書き方の基礎などが教えられていく。
1年生3人はそれを真剣に聞いていたけど……
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「いや……それが恥ずかしいことについ最近妹さんがいるのを知ったんだ。というか、野島さんのお姉さんと話すのも進級してから久しぶりで」
隠してもしょうがないので僕は素直に話すと、野島さん(妹)はなぜか安心したような態度を見せる。
「えっと……僕からも質問になるけど、お姉さんから僕の話を聞いたりした?」
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「そ、そうなんだ」
「あっ。でも、一つだけ覚えています。産賀さんはああ見えて彼女持ち……と姉が言っていました」
「ああ見えて……」
どう見えているんだと聞きたいところだけど、そこまでは解説していないだろう。
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そう聞いてきた野島さん(妹)は最初に話した時も表情は和らいで、好奇心を抑えられない感じだった。
この手の話題が好きなのはお姉さんと同じらしい。
「まぁ、うん」
「おお……! できれば詳しく聞きたいです」
「あー……プライベートなことなので」
「芸能人みたいな断り方ですね!? まさかただれた恋なんですか……?」
「ち、違うよ。シンプルに……恥ずかしいだけ」
それは半分本当のことだったけど、もう半分はその相手がこの部活内にいると教えるのはまだ早いと思ったからだ。
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早い段階で打ち解けられそうな新入部員がいるのは良かったけど、僕に対する興味は文芸部から少し離れたところから始まってしまった。
遅かれ早かれ気付かれるとは思うけど……残りの2人も含めてもうしばらく黙っておこう。
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