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3年生1学期
4月23日(日)曇り時々晴れ 社会人の森本先輩
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モヤついた空の子ども読書の日。
そんな今日は記念日に合わせたわけじゃないけど、路ちゃんと一緒に森本先輩が働いている本屋へ行くことになった。
我が高校は基本的にはアルバイトが禁止なので、該当する本屋は電車で2駅ほど移動する必要がある。
その運賃を払ってまでバイトを続けていたということは、バイト収入はプラスとなっていたのだろう。
本屋の事業展開についてあまり詳しくないので、到着した本屋は初めて聞く名前だった。
「店舗名は違うけれど、系列の店舗はあるみたい。でも、系列店も含めてこちらでは珍しい店舗みたい」
路ちゃんから情報を聞きながら店舗に入ると、店内は比較的新しいように感じた。
店内は結構広くて、本以外にも文房具や小物などが置かれている。
店員おすすめの書籍や今期のドラマ・アニメ化作品のピックアップなどが入ってすぐのところにあり、その他にもポップアップによる書籍紹介が各ジャンルで設置されていた。
「わぁ……! 良助くん、あっちのコーナー見てみてもいい?」
「いいよ。その間に森本先輩探してみる」
「あっ、違うの。森本さんのことを忘れてたわけじゃなくて……や、やっぱり先に会ってから見て回る」
店の雰囲気が良かったのか、路ちゃんのテンションが上がっているのがよくわかる。
森本先輩には伺う時間を連絡していたけど、仕事中なので時間をあまり割かせるわけにはいかない。
そう思いながら店内を回っていると……
(あっ……)
恐らく本の在庫を確認している森本先輩の後ろ姿が見える。
ただ、部活動でゆったりとした空気感を出していた時と違って、少し緊張感のある空気できびきびと動いていた。
だから、僕と路ちゃんは一瞬話しかけるのをためらってしまう。
「……あー! いらっしゃい、ウーブくんに路子ちゃんー」
そんな僕らの気配に気づいたのか、森本先輩はいつもの感じで話しかけてくれる。
「お、お疲れ様です。お仕事中にすみません」
「いいのいいのー いやー、わざわざデート場所に選んでくれるとは光栄だねー」
「で、デートのために来たわけじゃ……」
「ふふー 路子ちゃんまだ照れるんだー いや、何気に休日の2人の姿を見る機会はなかったかもー?」
「森本さーん」
すると、話しているところに女性の店員がやって来る。
「あっ、店長ー この子達が来るって言ってた部活の後輩ですー」
「あっ、そうなの。いらっしゃいませ。今後ともご贔屓にして頂けたら嬉しいわ」
「ちなみにー 2人は……これです」
「ほう……部活内で成立したカップルのうちの1組ね」
どうやら森本先輩は文芸部のことを店長さんによく話していたようで、面識がないのに色々知られていそうだった。
「それはそれとして、ここが終わったらリスト確認お願い」
「りょうかいですー」
「2人は引き続き買い物を楽しんでくださいね」
「そういうことだから、心ゆくまで楽しんでねー」
そうして、森本先輩と店長さんは仕事に戻って行った。
その後、僕と路ちゃんは暫く店内を見て回り、それぞれ本を購入してスタンプカードを作って貰った。
「こういう言い方は良くないのかもしれないけれど……森本さん、部活動の時よりもしっかりしてたように見えたわ」
「うん。水原先輩が心配する必要がないくらいには」
森本先輩の新しい一面を知れた一日だった。
そんな今日は記念日に合わせたわけじゃないけど、路ちゃんと一緒に森本先輩が働いている本屋へ行くことになった。
我が高校は基本的にはアルバイトが禁止なので、該当する本屋は電車で2駅ほど移動する必要がある。
その運賃を払ってまでバイトを続けていたということは、バイト収入はプラスとなっていたのだろう。
本屋の事業展開についてあまり詳しくないので、到着した本屋は初めて聞く名前だった。
「店舗名は違うけれど、系列の店舗はあるみたい。でも、系列店も含めてこちらでは珍しい店舗みたい」
路ちゃんから情報を聞きながら店舗に入ると、店内は比較的新しいように感じた。
店内は結構広くて、本以外にも文房具や小物などが置かれている。
店員おすすめの書籍や今期のドラマ・アニメ化作品のピックアップなどが入ってすぐのところにあり、その他にもポップアップによる書籍紹介が各ジャンルで設置されていた。
「わぁ……! 良助くん、あっちのコーナー見てみてもいい?」
「いいよ。その間に森本先輩探してみる」
「あっ、違うの。森本さんのことを忘れてたわけじゃなくて……や、やっぱり先に会ってから見て回る」
店の雰囲気が良かったのか、路ちゃんのテンションが上がっているのがよくわかる。
森本先輩には伺う時間を連絡していたけど、仕事中なので時間をあまり割かせるわけにはいかない。
そう思いながら店内を回っていると……
(あっ……)
恐らく本の在庫を確認している森本先輩の後ろ姿が見える。
ただ、部活動でゆったりとした空気感を出していた時と違って、少し緊張感のある空気できびきびと動いていた。
だから、僕と路ちゃんは一瞬話しかけるのをためらってしまう。
「……あー! いらっしゃい、ウーブくんに路子ちゃんー」
そんな僕らの気配に気づいたのか、森本先輩はいつもの感じで話しかけてくれる。
「お、お疲れ様です。お仕事中にすみません」
「いいのいいのー いやー、わざわざデート場所に選んでくれるとは光栄だねー」
「で、デートのために来たわけじゃ……」
「ふふー 路子ちゃんまだ照れるんだー いや、何気に休日の2人の姿を見る機会はなかったかもー?」
「森本さーん」
すると、話しているところに女性の店員がやって来る。
「あっ、店長ー この子達が来るって言ってた部活の後輩ですー」
「あっ、そうなの。いらっしゃいませ。今後ともご贔屓にして頂けたら嬉しいわ」
「ちなみにー 2人は……これです」
「ほう……部活内で成立したカップルのうちの1組ね」
どうやら森本先輩は文芸部のことを店長さんによく話していたようで、面識がないのに色々知られていそうだった。
「それはそれとして、ここが終わったらリスト確認お願い」
「りょうかいですー」
「2人は引き続き買い物を楽しんでくださいね」
「そういうことだから、心ゆくまで楽しんでねー」
そうして、森本先輩と店長さんは仕事に戻って行った。
その後、僕と路ちゃんは暫く店内を見て回り、それぞれ本を購入してスタンプカードを作って貰った。
「こういう言い方は良くないのかもしれないけれど……森本さん、部活動の時よりもしっかりしてたように見えたわ」
「うん。水原先輩が心配する必要がないくらいには」
森本先輩の新しい一面を知れた一日だった。
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