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3年生1学期

4月13日(木)晴れ 大山亜里沙と産賀良助

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 新入生の宿泊研修が始まった決闘の日(宮本武蔵と佐々木小次郎が戦った日らしい)。
 明莉は少し早めに起きていたけど、しっかりと目が覚めてテンション高めだったので、楽しみにしていたのがよくわかった。

 一方、在校生は聴力検査を挟みつつ、普通に授業を受けていく。
 3年生的には一学期から二学期前半の授業までが受験範囲になるので、今からしっかり身に付けていきたいところだ。

「うぶクンさ。前の授業のノートちょっと見せてくれる?」

 そんな中、3時間目が終わった後の休み時間に隣の席の大山さんがそう言ってくる。

「いいけど……寝てたの?」

「起きてたケド、ちょっと確認したいところがあって。ふむふむ……」

 久しぶりにノートを見せたので、思わず聞いてしまったけど、確かに先ほどの時間は横目に見ても寝ていなかったように思う。

「ありがと」

「いやいや。黒板で見づらいところでもあったの?」

「そうじゃなくて、単純にうぶクンがどんな風にまとめてるか久々に見てみたかっただけ。ほら、数Ⅲの棚町先生、アタシたちは初めてじゃん?」

「そういうことか。先生の都合だから仕方ないんだろうけど、3年でいきなり変わるのはちょっと調子狂うよね」

「だよね? ちょっと板書も独特なカンジだからさ。そういう時はうぶクンの書き方が役立つってワケ」

「まぁ、そうは言っても基本は黒板に書いてあるやつと同じだけどね」

「かもしれないケド、なんか見やすい気がするの。次からは真似させて貰うから」

 僕はどちらかというと人にノートを貸す側の人間だったけど、書き方についてこんなに信頼を置かれるのは大山さんが初めてだった。
 宿泊研修での出会いからノートを写させる仲になり、今日まで縁が続いているけど、今の大山さんは授業で寝ていた時はもう違う。

「……さっきはごめん」

「えっ? 何が?」

「いや、寝てたと疑うようなことを言って……」

「別に気にしてないから。アタシがうぶクンにノートを見せて欲しいって言ったら、そういう流れだったもん」

「そうだけど、最近の大山さんを考えたら……」

「もー、何珍しくネガってるの? 最近のうぶクンは自信たっぷりのデキる男のコだったのに」

「えっ? そんなイメージ持たれてたの……?」

「うん。まぁ……たまには初期のうぶクンを見るのもいいかもだケド」

 大山さんはからかうような笑いを見せるので、僕は少し困りながらも笑ってしまった。

 僕としてはデキる感を出していたつもりはないけど……いや、そもそも何に関してデキると思われていたのだろう。
 頼られる分には嬉しいので、デキる印象が続くように頑張ろうと思う。
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