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2年生春休み

3月24日(金)曇り 後輩との日常・桐山宗太郎の場合その15

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 春休み初日の金曜日。
 だけど、春休み中も新入生勧誘のために準備を進めることになっているから、水・金は部活動が行われる日だ。
 去年は部外者だった花園さんが今年は部員なので、ポスターのイラストは快く引き受けてくれた。

「ですが、良助や桐山くんもしっかり考えるように」

「は、はい……」

「りょ、了解っす……」

 男子2人が名指しでそう言われてしまったのは、僕と桐山くんが今のところ戦力外となっているせいだろう。
 男子だからというのは言い訳にならないけど、デザイン面では女子の方が良いアイデアを出せていた。

「じゃあ……僕らは新入生の男子を勧誘する方法を考えようか」

「男子限定っすか?」

「もちろん、男女限らず歓迎なんだけど、ここ2年は男子1人ずつしか入ってないからね。桐山くんも男子1人になると肩身狭いでしょ?」

「いえ。俺、ハーレムは全然歓迎できるタイプっす」

「そういうことではなく……というか、桐山くんは女子に囲まれたら普通に気まずくなるタイプだろうに」

「いやいや。さすがにもう慣れてきましたよ。俺が緊張するのは姫宮さんだけっす」

 そこは未だに緊張するのかと思ったけど、本人が言うならそれ以上は何も言わないことにした。

「じゃあ、男女限らずに考えよう。ちなみに去年の桐山くんは……僕と藤原先輩の勧誘から来てくれたんだっけ?」

「そうっすね」

「ちなみに入部の決定打は何だったの? 男子がいるのがわかった安心感とか」

「えっ。それを改めて聞くんすか?」

「あれ? 聞いたことあったかな。ごめん、忘れちゃったから参考までにもう一度教えてくれる?」

「それはもちろん、説明会の時に姫宮さんがいたからっす」

「…………」

 どうしよう。今年の男子が入ってくるからめちゃめちゃ不安になってきた。
 別に絶対男子がいた方がいいとは思わないけど、数年後に女子しかいない部活になっていたら、僕のように入部しづらいと思う男子が出てくると思う。

「桐山くん」

「はい? なんすか?」

「……今年も声出して頑張って勧誘しよう」

「おお。やっぱりシンプルなアピールが一番っすよね! 俺は声出しなら自信あるっす!」

 結局、碌な案は思い付かなかったけど、男子がいる部活であると主張するのは大事だと思った。
 まぁ、青春を求めて部活に入るのもいいとは思うけど……いや、これを僕が言ったらどの口が言うとツッコまれてしまうか。
 とりあえず春休み中は喉を傷めないように意識しよう。
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