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2年生3学期

3月20日(月)晴れ 奮起する大山亜里沙その10

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 2年生として最後の週となる月曜日。
 この日に学期末試験の正式な点数がわかったので、塾に行った際に4人の点数を確認し合う。
 3人からおごられることになった栄えある1位は……

「アタシだぁ!」

 言い出しっぺの大山さんだった。
 その宣言に対して僕らは軽く拍手を送る。

「おめでとう、亜里沙ちゃん」

「素直に凄いよ。塾に入った一番遅かったのに」

「でしょ? もっと褒めていいからね」

「調子に乗ってるなぁ。ということは、私達3人が何かご馳走するのか」

「いや、そこは適当でいいよ。アタシから仕掛けといてなんか悪いし」

「いいじゃん。せっかく塾でしか会わない組み合わせなんだから、たまには遊びに行くのも……」

 重森さんはそう言いかけて僕の方を見てくる。
 まぁ、その組み合わせに僕が入っているのが少々ややこしいのはわかる。
 すると、重森さんは路ちゃんに視線を移した。

「みーちゃん的には本人同行でも他の女と一緒に遊ばせるのは嫌?」

「えっ!? ぜ、全然そんなことはないけれど……」

「こういう時は正直に言っておいた方がいいよ。というか……逆に産賀くんが気まずいと思うし」

「そ、そうなの?」

「まぁ、全く気まずくないかと言われたら嘘になるかも。全然3人で行って貰っても構わないよ。お金は出すから」

「全員分?」

「なんで!?」

「みーちゃんの分は彼氏が払うとするから、ついでに私の分も払って貰えるかなと」

「わたし、普段もたかってるわけじゃないよ……?」

「しまった。みーちゃんからまともにツッコまれる可能性を失念していた」

 重森さんがそう言うと、路ちゃんは冗談だったことに気付いて少し顔を赤くする。
 ……重森さんなら本気で言っている可能性もありそうだけど。

「うぶクンは変わらないね」

 そうしていると、急に大山さんがそんなことを言ってくる。

「えっ? 何の話?」

「いや、3人で行けばいいなんて言うから。あっ、ノリが悪いとかじゃなくて……ミチのことを考えての発言ってこと。相変わらず真面目なんだから」

「いや、それも考えてないわけじゃないけど、単純に女子3人に混ざるのはどうかと思っただけだよ」

「えー そっちなの? 別に大丈夫でしょ。文芸部だって女子だらけなんだから」

「それはそうだけど……」

「……ふーん。アタシと遊ぶのはもう嫌になっちゃった?」

「そ、それは違うから。うん。よく考えたら遠慮するようなことじゃない」

「あはは。冗談だったのに。うぶクンはやっぱり変わらないね」

 それはからかいやすいという意味では変わらないという意味なんだろうか。
 まぁ、良くも悪くも変わらないタイプではあるけど……さっきの発言は言うほど真面目さがあっただろうか。

「それじゃあ、春休みのどこかで遊びに行こう! もちろん、他の用事があるなら全然優先してくれて大丈夫だから!」

 それで言うなら休みの予定を埋めてくれる大山さんこそ、変わらない存在だと僕は思う。
 その後も3人は休憩時間中に遊びに行く候補を話し合っていた。
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