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2年生3学期

1月29日(日)曇り時々雪 大倉伴憲との日常その30

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 気付けば1月最後の日曜日。
 残った雪でまだ身動きが取りづらいことから、今日は家でゆっくりする日になった。
 午前中は課題に取り組み、午後は大倉くんがちょうどゲームに誘ってくれたので、通話を繋いで遊ぶことになった。

『土曜授業があったのもあるけど、今週は雪のせいで何だか長く感じたね』

「確かに。僕の場合は明莉の受験もあって凄く濃い一週間だった気がする」

『お疲れ様っていうのはまだ早いかもしれないけど、ひとまずゆっくりして欲しいね』

「まぁ、言わなくても昨日と今日は普通に雪の中出かけてたよ。昨日は友達で、今日は彼氏に会ってるみたい」

 こんなに寒いのにとは思うけど、一時的に受験から解放されたのなら仕方ないとも思う。
 本番まで英気を養って貰いたいところだ。

『そっかぁ……妹さんも彼氏いるんだもんなぁ……』

「あれ? 言ってなかったっけ?」

『き、聞いてはいたけど……改めて兄妹揃ってリア充だと思うと凄いなぁと』

「そうかな?」

『なんていうか……周りがみんな付き合ってると、ボクが間違っているようにも思えてくる』

「そ、そんなことはないから。僕は運良くって感じだし。そういえばあんまり聞いてなかったけど、大倉くんは好きな子いないの?」

『えっ!?』

 大倉くんの大きな驚きがイヤホンから漏れる。
 それは質問の内容もだけど、僕にしては珍しい話題の振り方だったからかもしれない。

「いや、何となくね?」

『変わっちゃったね、産賀くん……』

「そこまで言われるのか……」

『でも、好きな子はいないなぁ……そもそも女子との絡みがないし』

「絡みがなくても何となく憧れてるとかも?」

『ないない。現実が駄目とかじゃなくて、恐れ多い感じがしちゃってるから。それに……今は受験とか、そっち方を考えるのが大事だと思ってるし』

「耳が痛いな」

『い、今のは半分くらい負け惜しみだから……いや、負けてるわけじゃないけど。一人だと自由だし!』

「大丈夫。大倉くんは一人じゃないよ」

『うーん。女の子から言われたいセリフだったなぁ』

 そんな冗談を飛ばしながら和やかな時間は過ぎていった。
 別に大倉くんを追い込むつもりはなかったんだけど、気になって聞いてしまったのは、恐らく僕自身に余裕が生まれているせいだろう。
 その点は少し反省しつつも、大倉くんとの時間も大切にしたいなぁと思った。
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