上 下
659 / 942
2年生3学期

1月22日(日)曇り 急接近する岸本路子

しおりを挟む
 あいにく曇天の日曜日。
 本日は昼食から路ちゃんとデートする日だ。
 昨日あれだけ明莉の心配をしておいて、僕だけ遊びに行くのは少し申し訳ないけど、僕にとってはこれも重要なので許して貰おう。

「そっか。中学生も受験が始まる時期なんだね。それなら……やっぱり良助くんの家にお邪魔するのは、もう少し先にした方がいいのかな」

「いやまぁ、家に来るくらいは……僕の家に!?」

「前にも言ってなかったっけ? 妹さんにも挨拶しておきたいって」

「あ、ああ。そうだったね」

 忘れていたわけじゃないけど、改めて言われるとまだ緊張してしまう。
 でも、付き合い始めてから約1ヶ月……良くも悪くも僕と路ちゃんに大きな変化はない。
 僕としてはまだ次のステップに進まなくても大丈夫だと思っている。
 ただ、進まなさ過ぎるのも、それはそれでどうかと思うわけで……

「それなら……先にわたしの家に来てみるのもいいかも」

「それなら……路ちゃんの家に!?」

「う、うん。あんまり出かけるばかりでもお金かかって良助くんにも悪いし」

 路ちゃんが気遣ってくれたのは、デートの時に払えそうなところは僕が全て払っていたからだろうか。
 確かにバイトをしているわけではないので、僕もお金はなるべく抑えたい気持ちはある。
 だけど、それで路ちゃんの家に行くのはなかなか……

「両親に紹介したいとかじゃなくて、普通に家でゆっくりするのもいいかなと」

「な、なるほど。でも、そろそろ挨拶した方がいい気もしてたし……」

「そ、それはそれでまた機会を作りたいのだけれど……平日の放課後なら2人とも仕事でいないから……」

「……えっ?」

「あっ! えっと……塾に行く前とかに……うちに寄って貰ってもわたしは大丈夫だから……」

 路ちゃんの言葉は途切れ途切れだったけど……これは……来て欲しいと言っているのだろうか?
 ……いや、単に家デートがしたいという意味だろう。何も焦る必要はない。

「じゃ、じゃあ……その、明莉の入試が終わったらお邪魔してもいいかな。僕も終わるまでは何だか落ち着かなくて」

「う、うん。わたしもその方がいいと思う」

「…………」

「…………」

「そろそろお店……出ようか」

「わ、わかったわ。今日は……わたしも払うから」

 その後、僕と路ちゃんは何とも言えない空気のまま夕方近くまで時間を過ごした。
 
 本当ならこの件をどう判断するか、松永あたりに相談したいところだけど……さすがにこれを自分の口から伝えるのは恥ずかしい。
 とりあえず……ネットの知識で予習しておこう。たとえ正解が書いてないとしても。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

片翼のエール

乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」 高校総体テニス競技個人決勝。 大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。 技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。 それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。 そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。

片思いに未練があるのは、私だけになりそうです

珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。 その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。 姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。 そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。

サクッと読める♪短めの意味がわかると怖い話

レオン
ホラー
サクッとお手軽に読めちゃう意味がわかると怖い話集です! 前作オリジナル!(な、はず!) 思い付いたらどんどん更新します!

お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜

桜井 恵里菜
青春
今から数年後。 少子高齢化対策として、 政府はハチャメチャな政策を打ち出した。 高校3年生に課せられた必須科目の課外活動 いわゆる『お試しデート』 進学率トップの高校に通う結衣は、 戸惑いながらも単位の為に仕方なく取り組む。 それがやがて、 純粋な恋に変わるとは思いもせずに… 2024年5月9日公開 必須科目の『お試しデート』 結衣のペアになったのは 学年トップの成績の工藤くん 真面目におつき合いを始めた二人だが いつしかお互いに惹かれ合い 励まし合って受験に挑む やがて『お試しデート』の期間が終わり… 𓈒 𓂃 𓈒𓏸 𓈒 ♡ 登場人物 ♡ 𓈒𓏸 𓈒 𓂃 𓈒 樋口 結衣 … 成績2位の高校3年生 工藤 賢 … 成績トップの高校3年生

上京して一人暮らし始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん
青春
都内の大学に進学し、春から一人暮らしを始める北の大地からやってきた南大地(みなみだいち)は、上京後、幼馴染・隣人・大学の先輩など様々な人に出会う。 そして、気が付けば毎日自分の家に美少女が毎日泊まりに来るようになっていた!? ※この作品は、カクヨムで『日替わり寝泊りフレンド』として投稿しているものの改変版ですが、内容は途中から大きく異なります。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...