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2年生3学期

1月19日(木)晴れ 奮起する大山亜里沙その2

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 すっきりとした晴れ間が続いた木曜日。
 しかし、これからまた強い寒波がやってくるらしいので、冬の寒さとはもうしばらく付き合うことになりそうだ。

 そんな今日は休み明け直後に行われた実力テストのデータが配られる。
 偏差値や学年順位、選んだ大学への合格率などが載っているのはいつも通りだけど、今回の結果については緊張感があった。
 なぜなら……冬休みは少し緩んでいた自覚があったから。
 結果的には大きな変化はなかったけど、塾に通っているならもう少し頑張るべきだろう。

「うぶクン、ちょっといい?」

 すると、データが配られた後の放課後。部活に行く前であろう大山さんに声をかけられる。

「どうしたの?」

「今日の実力テストの結果、どんな感じだったか聞きたくて」

「ああ、それね。あんまり変わってなかったよ……って、前の結果を知らないとわからないか」

 僕はそう言いながらデータが載った用紙を手渡す。
 よく考えたら結構恥ずかしいことをしているけど、大山さんとは何度もこういう話をしているから、全然抵抗がなかった。
 それを受け取った大山さんは真剣な表情で養子を確認していく。

「へー……ふむふむ」

「ちなみに大山さんは?」

「えっ。アタシの見せるのはちょっと……」

「そ、そうか……」

「……ぶっちゃけると、あんまり良くなかったんだよね。だから、成績キープできているうぶクンは凄いと思う」

 大山さんから素直に褒められて僕は照れてしまった。
 塾のおかげで変化がなかったと考えれば、通っていた意味も大いにある。
 まぁ、追加で頑張るべきなのは変わらないけど。

「それでさ。うぶクンに相談なんだケド……アタシも同じ塾、通ってみようかと思ってて」

「おお。だったら……サイトに情報は載ってると思うけど、今度塾に行った時に色々聞いとくよ。たぶん、入塾自体はいつでもオッケーだったはずだし」

「助かる~ とりま資料見てからって考えてたし、言って良かったぁ」

「全然遠慮せずに言ってくれたら良かったのに」

「いや、テストの結果を見て、さっき思い付いたばっかりだったから、」

「さっきなの!?」

「うん。頑張る目標は早めに決めた方がいいと思って」

 なるほど、先週そう言っていたけど……まぁ、前々から塾について気になっていたようだから即断即決というわけではないのだろう。

「でも、塾の相談なら路ちゃんにしても良かったんじゃない?」

「それはまぁそうだケド……」

 僕の何気ない指摘に大山さんはなぜか顔を逸らす。

「あー、とにかく! 資料はよろしく!」

 その理由はわからなかったけど、大山さんも来年に向けて進みだしたようだった。
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