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2年生冬休み
1月7日(土)曇り ばあちゃんとの新年Ⅱ
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冬休み15日目。
本日は父方のばあちゃんと新年の挨拶をする日だ。
しかし、例年とは違い、僕らの方がばあちゃんの家に赴くことになる。
「いや~ 本当なら新年から初詣がてら旅行する予定だったんだけど、友達が不調になっちゃって。一人で行ってもしょうがないし、大人しく家で新年を迎えたんだよ」
「ちょうどいいじゃないか。普段の母さんは動き過ぎだし」
「どこがいいんだい!? 新年の楽しみなのに!」
ばあちゃんの友達には申し訳ないけど、ばあちゃん自身が不調じゃなかったのは少し安心した。
いや、こちらのばあちゃんに限って言えば、不調になるイメージはあんまりないけれど。
「それよりお昼はどこか外食へ行くよ。うちには何にもないから。明莉は何か食べたいものある?」
「そうだなぁ……お寿司!」
「おお、いいね。回ってるやつか、回らないやつのどっちがいい?」
「うーん……カジュアルさで言うと、回ってる方がいいんだけど、たまには高級志向でも……」
「こら、明莉。少しは遠慮しなさい。お義母さんもあんまり甘やかさないでください」
「いいじゃないの。これから数ヶ月は勢い付けなきゃいけないんだし」
そうかと思ったらお昼から出かける気満々だった。
恐らくご飯を食べた後も家ではなくどこか行くつもりだろう。
「おっと、良助の希望を聞かなきゃね。何か食べたい物は?」
「僕は回ってる寿司がちょうどいいよ」
「謙虚だねぇ。ちょっぴり大人になったかい?」
ばあちゃんは少しからかう風に言う。
でも、僕は遠慮しているわけじゃなかった。
もっと言えば……出かけるよりもこの家でゆっくりするぐらいがちょうどいい。
久々に来たこちらのばあちゃん宅は、何とも言えない懐かしさがあった。
最後に来たのは……結構前な気もする。
記憶として鮮明に残っているのはまだじいちゃんが生きている頃で、それ以降はだんだんと来る機会が減っていた。
「良助……?」
つまりはその時期からばあちゃんはよく出かけるようになったということで……僕は勝手な想像をしてしまう。
普段はあっけらかんとしたばあちゃんだからこそ、思うところがあるんじゃないかと。
「結構綺麗にしてるだろう?」
「えっ!?」
「なんだい。てっきり家を空けがちだからもっと家が汚いと思ってた、って話かと」
「ううん。ちょっとノスタルジックな気分になってただけ」
「ノスタル……感傷に浸るってやつ? 大人になったというか、詩人になったかい?」
「いやいや、おばあちゃん。りょうちゃんはここ数週間で一気に大人になったんですよ。なんとクリスマスイブに……ごにょごにょ」
「な、なんだって!? どうしてすぐに言わないんだい、良助!?」
明莉が告げ口すると、ばあちゃんは物凄い勢いで詰め寄ってくる。
……もう少しノスタルジックに浸りたかったから言わなかったのに。
明莉の余計なお節介だ。
「これはもう回らない方に決定だね!」
「わーい! いいネタ食べるぞ~」
そんな感じに2人が盛り上がり始めたので、この日の昼からは回らない寿司をご馳走になった。
まだ付き合っただけなんだけど……みんな僕がそうなる可能性が低いと思っていたが故の喜びなんだろうか。
何とも複雑な気持ちだけど……僕の話で美味しいお寿司が食べられたのなら、何も文句は言えない。
本日は父方のばあちゃんと新年の挨拶をする日だ。
しかし、例年とは違い、僕らの方がばあちゃんの家に赴くことになる。
「いや~ 本当なら新年から初詣がてら旅行する予定だったんだけど、友達が不調になっちゃって。一人で行ってもしょうがないし、大人しく家で新年を迎えたんだよ」
「ちょうどいいじゃないか。普段の母さんは動き過ぎだし」
「どこがいいんだい!? 新年の楽しみなのに!」
ばあちゃんの友達には申し訳ないけど、ばあちゃん自身が不調じゃなかったのは少し安心した。
いや、こちらのばあちゃんに限って言えば、不調になるイメージはあんまりないけれど。
「それよりお昼はどこか外食へ行くよ。うちには何にもないから。明莉は何か食べたいものある?」
「そうだなぁ……お寿司!」
「おお、いいね。回ってるやつか、回らないやつのどっちがいい?」
「うーん……カジュアルさで言うと、回ってる方がいいんだけど、たまには高級志向でも……」
「こら、明莉。少しは遠慮しなさい。お義母さんもあんまり甘やかさないでください」
「いいじゃないの。これから数ヶ月は勢い付けなきゃいけないんだし」
そうかと思ったらお昼から出かける気満々だった。
恐らくご飯を食べた後も家ではなくどこか行くつもりだろう。
「おっと、良助の希望を聞かなきゃね。何か食べたい物は?」
「僕は回ってる寿司がちょうどいいよ」
「謙虚だねぇ。ちょっぴり大人になったかい?」
ばあちゃんは少しからかう風に言う。
でも、僕は遠慮しているわけじゃなかった。
もっと言えば……出かけるよりもこの家でゆっくりするぐらいがちょうどいい。
久々に来たこちらのばあちゃん宅は、何とも言えない懐かしさがあった。
最後に来たのは……結構前な気もする。
記憶として鮮明に残っているのはまだじいちゃんが生きている頃で、それ以降はだんだんと来る機会が減っていた。
「良助……?」
つまりはその時期からばあちゃんはよく出かけるようになったということで……僕は勝手な想像をしてしまう。
普段はあっけらかんとしたばあちゃんだからこそ、思うところがあるんじゃないかと。
「結構綺麗にしてるだろう?」
「えっ!?」
「なんだい。てっきり家を空けがちだからもっと家が汚いと思ってた、って話かと」
「ううん。ちょっとノスタルジックな気分になってただけ」
「ノスタル……感傷に浸るってやつ? 大人になったというか、詩人になったかい?」
「いやいや、おばあちゃん。りょうちゃんはここ数週間で一気に大人になったんですよ。なんとクリスマスイブに……ごにょごにょ」
「な、なんだって!? どうしてすぐに言わないんだい、良助!?」
明莉が告げ口すると、ばあちゃんは物凄い勢いで詰め寄ってくる。
……もう少しノスタルジックに浸りたかったから言わなかったのに。
明莉の余計なお節介だ。
「これはもう回らない方に決定だね!」
「わーい! いいネタ食べるぞ~」
そんな感じに2人が盛り上がり始めたので、この日の昼からは回らない寿司をご馳走になった。
まだ付き合っただけなんだけど……みんな僕がそうなる可能性が低いと思っていたが故の喜びなんだろうか。
何とも複雑な気持ちだけど……僕の話で美味しいお寿司が食べられたのなら、何も文句は言えない。
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