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2年生2学期
12月5日(月)曇り 17歳の誕生日
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日記を書き始めてから2回目の誕生日。
去年は期末テストが始まる直前に誕生日を迎えたようで、今年は少しテストが遅いのかと謎の振り返りをしてしまう。
嬉しいことに日付が変わった時点でお祝いのメッセージを多数貰っていて、その度に僕はお礼の言葉と一応定番ネタの「午後9時生まれだからまだ16歳」と返していった。
そして、今日の朝に登校してからも親しい人から周りに聞いた流れで来た人まで色々な人に祝ってもらった。
自分がクラスの中心にいるとは一度も思ったことがないけど、今日ばかりはクラスでちょっとした主役になれた気分だ。
これはひとえに2年3組がわりと穏やかで良い雰囲気のクラスだったからだと思う。
でも、そう思うとこのクラスで過ごす日数が少なくなったのはちょっと寂しい。
「りょーちゃんがまた大人の階段を一歩登ったということで……かんぱーい」
「いや、その言い方だとちょっと意味が変わってくるだろう」
昼休みは松永と本田くんがこちらの教室に来て、大倉くんを交えて昼食を食べた。
松永はジュースを、本田くんと大倉くんはそれぞれお菓子を買ってきてくれたので、いつもよりは豪華なデザート付きの昼食になった。
ただ、それを見た僕はちょっと気が引けてしまう。
「なんか、みんなの誕生日の時はあんまりこういう感じなかったら悪い気がするな……」
「そうだっけ? 毎回、お菓子とか食べてなかった?」
「オレは去年から引き続き良ちゃんにはよく世話になってるから、その気持ちを込めて」
「ぼ、ボクも今年は色々お世話になってると思って……」
「えっ、じゃあ、俺もそういうことにしとく」
最後の松永はともかく、2人は僕に恩義的なものを感じているようだった。
大倉くんはわかるけど、本田くんは逆に最近の僕がお世話になっているから何だか妙な気分だ。
「良助、お誕生日おめでとう……間違ってないよな?」
放課後。清水先輩に呼び出された僕は確認されながらも誕生日を祝われる。
朝の段階でメッセージを貰っていたけど、そこでも自信は無さそうだった。
「そんなに不安なら確認しておけば良かったのに。あっ、私からもおめでとうを言っておこうかしら」
それに続けて今日は一緒に来ていた桜庭先輩も祝ってくれる。
「ありがとうございます。2人とも忙しいのに」
「産賀くんが思ってるほど忙しくはないわよ? むしろ、部活や生徒会が無くなった分、自由に動ける時間が増えたくらいだし」
「あっ、桜庭先輩はそうですよね」
僕がごたごたしているうちに、生徒会は新しいメンバーに変わって桜庭先輩は副会長の役割を終えていた。
そう考えると、これまでの方が忙しかったのかもしれない。
「良助。それだと私は忙しくしてないみたいに聞こえる」
「そんなことはありません。清水先輩は……ちゃんと勉強してるはず……ですよね?」
「そこそこはやってるわよ。私も全部は面倒見切れないけど」
「なんで小織に聞くんだ!?」
「わからないところは素直に質問する。とてもいい事じゃない。夢愛も見習って」
「べ、別に私はできるし……」
「はいはい。じゃあ、今日もテスト勉強行きましょうね」
「えっ、もうちょっとくらいサボ……あっ、良助! シュークリームの賞味期限は……」
その言葉を全てに聞き終わる前に清水先輩は桜庭先輩に連れられて行った。
面倒見切れないと言いつつも期末テストはしっかり面倒をみようとしている。
久しぶりに仲が良さそうな2人が見られて安心した。
それから、夕方には塾に行くけど、ここは誕生日を言うようなところじゃないので、祝われることはない……と思っていた。
「りょ、良助くん!」
しかし、塾に着いた時、外で待っていた路ちゃんが僕を呼ぶ。
「どうしたの? 外寒いから中で待っててくれたら」
「そ、そう思ったのだけれど……目立つのも良くないと思ったから……これを」
そう言うのと同時に路ちゃんは僕に小さな包みを渡してくる。
形からしてそれは本であると僕はすぐにわかった。
「誕生日プレゼント。わたしの……最近のお気に入り。本当は学校で渡せば良かったのだけれど、タイミングを逃して……」
「わぁ、ありがとう! 最近は全然読めてないから、これでリハビリさせて貰うよ」
「そ、それなら良かった……」
「でも、今年の路ちゃんの誕生日は僕から何もあげてないのに……」
「それは気にしないで。メッセージだけでも十分だったし、わたしが……あげたいと思ったから」
そう言われてもやっぱり申し訳ない気持ちも出てきてしまう。
2学期中の僕はずっと燻っていたというのに、周りは変わらず祝ってくれるのは、日頃の行いが良かったと思うべきか。
いや、感謝はするとしても、今度は還元できるようにならないと。
その第一歩として……
「じゃ、じゃあ、路ちゃん。代わりと言っては何だけど……」
「えっ?」
「テストが終わった後……どこか遊びに行くとか、どう?」
緊張しているのが伝わりそうな言い方だと自分でもわかってしまう。
いや、これはプレゼント貰う前から決めていたことで……本当は今日の帰り際に言おうと思っていた。
「……うん。わたしで良ければ」
僕の誘いに路ちゃんは少しだけ間を空けてから頷いてくれた。
それを見て僕はほっと胸をなでおろす。
そんなこんなで僕としては色々と中身が詰まった誕生日になった。
本当は17歳の抱負とか書くべきなんだろうけど、今は最後の事の達成感に満たされているので、このまま気持ちよく眠りたいと思う。
去年は期末テストが始まる直前に誕生日を迎えたようで、今年は少しテストが遅いのかと謎の振り返りをしてしまう。
嬉しいことに日付が変わった時点でお祝いのメッセージを多数貰っていて、その度に僕はお礼の言葉と一応定番ネタの「午後9時生まれだからまだ16歳」と返していった。
そして、今日の朝に登校してからも親しい人から周りに聞いた流れで来た人まで色々な人に祝ってもらった。
自分がクラスの中心にいるとは一度も思ったことがないけど、今日ばかりはクラスでちょっとした主役になれた気分だ。
これはひとえに2年3組がわりと穏やかで良い雰囲気のクラスだったからだと思う。
でも、そう思うとこのクラスで過ごす日数が少なくなったのはちょっと寂しい。
「りょーちゃんがまた大人の階段を一歩登ったということで……かんぱーい」
「いや、その言い方だとちょっと意味が変わってくるだろう」
昼休みは松永と本田くんがこちらの教室に来て、大倉くんを交えて昼食を食べた。
松永はジュースを、本田くんと大倉くんはそれぞれお菓子を買ってきてくれたので、いつもよりは豪華なデザート付きの昼食になった。
ただ、それを見た僕はちょっと気が引けてしまう。
「なんか、みんなの誕生日の時はあんまりこういう感じなかったら悪い気がするな……」
「そうだっけ? 毎回、お菓子とか食べてなかった?」
「オレは去年から引き続き良ちゃんにはよく世話になってるから、その気持ちを込めて」
「ぼ、ボクも今年は色々お世話になってると思って……」
「えっ、じゃあ、俺もそういうことにしとく」
最後の松永はともかく、2人は僕に恩義的なものを感じているようだった。
大倉くんはわかるけど、本田くんは逆に最近の僕がお世話になっているから何だか妙な気分だ。
「良助、お誕生日おめでとう……間違ってないよな?」
放課後。清水先輩に呼び出された僕は確認されながらも誕生日を祝われる。
朝の段階でメッセージを貰っていたけど、そこでも自信は無さそうだった。
「そんなに不安なら確認しておけば良かったのに。あっ、私からもおめでとうを言っておこうかしら」
それに続けて今日は一緒に来ていた桜庭先輩も祝ってくれる。
「ありがとうございます。2人とも忙しいのに」
「産賀くんが思ってるほど忙しくはないわよ? むしろ、部活や生徒会が無くなった分、自由に動ける時間が増えたくらいだし」
「あっ、桜庭先輩はそうですよね」
僕がごたごたしているうちに、生徒会は新しいメンバーに変わって桜庭先輩は副会長の役割を終えていた。
そう考えると、これまでの方が忙しかったのかもしれない。
「良助。それだと私は忙しくしてないみたいに聞こえる」
「そんなことはありません。清水先輩は……ちゃんと勉強してるはず……ですよね?」
「そこそこはやってるわよ。私も全部は面倒見切れないけど」
「なんで小織に聞くんだ!?」
「わからないところは素直に質問する。とてもいい事じゃない。夢愛も見習って」
「べ、別に私はできるし……」
「はいはい。じゃあ、今日もテスト勉強行きましょうね」
「えっ、もうちょっとくらいサボ……あっ、良助! シュークリームの賞味期限は……」
その言葉を全てに聞き終わる前に清水先輩は桜庭先輩に連れられて行った。
面倒見切れないと言いつつも期末テストはしっかり面倒をみようとしている。
久しぶりに仲が良さそうな2人が見られて安心した。
それから、夕方には塾に行くけど、ここは誕生日を言うようなところじゃないので、祝われることはない……と思っていた。
「りょ、良助くん!」
しかし、塾に着いた時、外で待っていた路ちゃんが僕を呼ぶ。
「どうしたの? 外寒いから中で待っててくれたら」
「そ、そう思ったのだけれど……目立つのも良くないと思ったから……これを」
そう言うのと同時に路ちゃんは僕に小さな包みを渡してくる。
形からしてそれは本であると僕はすぐにわかった。
「誕生日プレゼント。わたしの……最近のお気に入り。本当は学校で渡せば良かったのだけれど、タイミングを逃して……」
「わぁ、ありがとう! 最近は全然読めてないから、これでリハビリさせて貰うよ」
「そ、それなら良かった……」
「でも、今年の路ちゃんの誕生日は僕から何もあげてないのに……」
「それは気にしないで。メッセージだけでも十分だったし、わたしが……あげたいと思ったから」
そう言われてもやっぱり申し訳ない気持ちも出てきてしまう。
2学期中の僕はずっと燻っていたというのに、周りは変わらず祝ってくれるのは、日頃の行いが良かったと思うべきか。
いや、感謝はするとしても、今度は還元できるようにならないと。
その第一歩として……
「じゃ、じゃあ、路ちゃん。代わりと言っては何だけど……」
「えっ?」
「テストが終わった後……どこか遊びに行くとか、どう?」
緊張しているのが伝わりそうな言い方だと自分でもわかってしまう。
いや、これはプレゼント貰う前から決めていたことで……本当は今日の帰り際に言おうと思っていた。
「……うん。わたしで良ければ」
僕の誘いに路ちゃんは少しだけ間を空けてから頷いてくれた。
それを見て僕はほっと胸をなでおろす。
そんなこんなで僕としては色々と中身が詰まった誕生日になった。
本当は17歳の抱負とか書くべきなんだろうけど、今は最後の事の達成感に満たされているので、このまま気持ちよく眠りたいと思う。
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