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2年生2学期

11月26日(土)晴れ 後援する大山亜里沙その9

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 休日授業の土曜日。
 昨日聞いた伊月さんの願いを叶えるべく、僕は松永から欲しい物を聞き出す方法を考えていた。
 しかし、僕が普段やらない探りを入れるようなことをすると、松永は察してしまう可能性が高い。
 そう考えた時、僕はかなり遠回りだけど、一つの作戦を思い付く。

「なるほどねぇ……」

 それは大山さんに聞いて貰うことで間接的に聞くというものだった。
 しかし、話を聞いた大山さんの反応は芳しくない。

「難しいかな?」

「……ぶっちゃけると、最近そんなに松永と話してないんだよね。クラスも違うし、別にLINEで頻繁に会話する仲でもないし。そんなアタシが聞いたら逆に怪しまれない?」

「それはそうだね……」

「そうだな……瑞姫に頼んでみよっか。クラス一緒だし」

「いや、そこまでしなくても大丈夫……」

「えっ、なんで? うぶクン、瑞姫と友達でしょ?」

 大山さんは当然のように言ってくる。
 確かに去年なら自信を持ってそう言えたけど、僕からすると栗原さんとの関係は知り合いのレベルまで戻っていた。
 決して信頼できないわけじゃないけど、僕の範囲から離れすぎている気がする。
 それを素直に伝えると、大山さんは少し意外そうな表情になった。

「へー……それってつまりは、今のアタシなら頼っていい範囲だとうぶクンは思ってるってコト?」
 
「まぁ、そうなるね」

「……この前、あんな失敗したアタシでも?」

「それはもう終わったことだし、それ以上に頼れる実績の方が多いから」

「……そっか。それはちょっと……嬉しいカモ」

 珍しく大山さんは照れた反応を見せる。
 
「でも、そうなると……なかなかバレずに聞き出すのは難しそう。彼女さんには悪いケド、普通に聞いた方がいいと思う。松永なら何でも喜ぶだろうし」

「確かに」

「そこは納得しちゃうんだ?」

「まぁ、松永は伊月さんにぞっこんだってずっとわかってるからね。だけど、伊月さんも松永に対しては結構大きな感情を持ってるから、サプライズで喜ばせたいんだと思う。何とか探れないものかな……」

「よし。アタシもちょっと考えてみるよ。もちろん、お節介にならない程度に」

「助かるよ」

 そんな会話を交わしながら午前中の授業は終わっていった。

 僕が栗原さんとの距離を感じてしまったように、1年生の時にあれだけ親しそうだった松永と大山さんも知らない間に少し距離ができていた。
 大山さんともこれだけ同じクラスや席が近くなければ、距離感を忘れてしまう可能性があったから、継続的なコミュニケーションは大事だと思った。
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