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2年生2学期
10月21日(月)晴れ時々曇り 重森美里の介入その3
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また合間に祝日が挟まる週の月曜日。
その影響かはわからないけど、今週も土曜授業が入っているので、祝日は得だけど通常の休み的には損している気分になる。
そんな日の昼休み。
「おっ、産賀の君」
トイレに行った帰りに僕は重森さんと遭遇する。
同学年かつ隣のクラスではあるけど、僕の記憶では学校でまともに会うのは初めてな気がした。
相変わらず呼び方は安定してないけど。
「何とかの君なんて呼び方、王朝時代のドラマでしか聞いたことないよ」
「私は少女漫画で読んだことあるよ。主人公が崇拝するイケメン男子に対して使ってた。ちなみにそのイケメンとはくっつかない」
「タイトルがわからないからネタバレではないけど……いや、そういう問題じゃないか」
具体的な意味は忘れたけど、尊敬の念とかを込めて使う呼び方だから呼ばれると妙にむずがゆい。
重森さんに関してはそこまで深い仲でもないから余計に。
そう考えていると、また懐かしい声が聞こえてくる。
「おー、産賀くんじゃん。どしたの? 美里に絡まれてる?」
そう言いながら栗原さんは自然に僕と重森さんの間に入ってくる。
僕からすると、軽い挨拶以外では久しぶりの絡みでちょっと緊張するけど、栗原さんはまるで気にしていないらしい。
「違うよ、瑞姫。産賀の君は今同じ塾に通ってるから正式な絡み」
「あっ、そっかそっか。最近やっと話したって言ってたわ。産賀くんは元気してた?」
「う、うん」
「あはは、それは良かった。いやまぁ、私は間接的に産賀くんの話は聞いてるんだけどね」
それは間違いなく本田くんとの話だろう。
そういえば付き合い始めたことを知ってから栗原さんと挨拶すらしてなかった気がする。
こういう場合……お祝いの言葉をかけるべきなんだろうか。
それを迷っている間に重森さんは口を挟む。
「産賀の君……今のは遠回しなノロケアピールだよ。産賀の君を肴に美味しい酒を飲んでるって」
「ええっ!? 違うし! 普通に話振っただけ!」
「私が知ってた頃の瑞姫はここにはもういない……」
「ちょっと~ 私は全然変わってないんですけどぉ。幸せ太りするにはまだ早いし」
「今のノロケアピールと取っても構いませんか?」
「あはは。ちょっとそうかも」
僕を置いてけぼりにして2人の会話は盛り上がっていく。
そうか、これが4組の活発な女子達の現状なのか。
今まで教室にお邪魔した時はそれほど気にならなかったけど、このテンションで話しているなら、そこに松永が飛び込む様子も想像できる。
「それで、産賀くんと里美は何の話をしてたわけ?」
「うんとね。産賀の君が塾でいつも相席してる子の顔が私の好きな顔だったって話」
「へぇ~ そんな可愛い女の子が……うん? 産賀くんっていつも女の子と相席してるの……?」
栗原さんは僕に一歩詰め寄りながら言う。
そんな話は全くしていないし、栗原さんは栗原さんで相席してる子を女子と決めつけて言うのはどうしてだ。
いや、合ってはいるんだけど。
「お、同じ部活の子だから」
「あ~、2年生2人だけだったもんね。その子も同じ塾だったんだぁ……ふーん」
「な、何?」
「……里美。教室に戻ったらもっと詳しい話聞かせて」
「りょです」
「ちょ、ちょっと!?」
「あはは! 産賀くん、また松永でも……真治くん目当てでもいいから4組に遊びにおいで!」
そう言い残して栗原さんは重森さんを引っ張って教室へ戻って行った。
何だかまたあらぬ誤解を生みそうだけど……栗原さんは悪い人ではないので、そこは信じるしかない。
それはそれとして、栗原さんが本田くんの名前を出す時にちょっと照れていたのは……本当に付き合ってるんだなぁと今更実感した。
くっ付けようとしていた栗原さんがそうなるとはなぁ。
その影響かはわからないけど、今週も土曜授業が入っているので、祝日は得だけど通常の休み的には損している気分になる。
そんな日の昼休み。
「おっ、産賀の君」
トイレに行った帰りに僕は重森さんと遭遇する。
同学年かつ隣のクラスではあるけど、僕の記憶では学校でまともに会うのは初めてな気がした。
相変わらず呼び方は安定してないけど。
「何とかの君なんて呼び方、王朝時代のドラマでしか聞いたことないよ」
「私は少女漫画で読んだことあるよ。主人公が崇拝するイケメン男子に対して使ってた。ちなみにそのイケメンとはくっつかない」
「タイトルがわからないからネタバレではないけど……いや、そういう問題じゃないか」
具体的な意味は忘れたけど、尊敬の念とかを込めて使う呼び方だから呼ばれると妙にむずがゆい。
重森さんに関してはそこまで深い仲でもないから余計に。
そう考えていると、また懐かしい声が聞こえてくる。
「おー、産賀くんじゃん。どしたの? 美里に絡まれてる?」
そう言いながら栗原さんは自然に僕と重森さんの間に入ってくる。
僕からすると、軽い挨拶以外では久しぶりの絡みでちょっと緊張するけど、栗原さんはまるで気にしていないらしい。
「違うよ、瑞姫。産賀の君は今同じ塾に通ってるから正式な絡み」
「あっ、そっかそっか。最近やっと話したって言ってたわ。産賀くんは元気してた?」
「う、うん」
「あはは、それは良かった。いやまぁ、私は間接的に産賀くんの話は聞いてるんだけどね」
それは間違いなく本田くんとの話だろう。
そういえば付き合い始めたことを知ってから栗原さんと挨拶すらしてなかった気がする。
こういう場合……お祝いの言葉をかけるべきなんだろうか。
それを迷っている間に重森さんは口を挟む。
「産賀の君……今のは遠回しなノロケアピールだよ。産賀の君を肴に美味しい酒を飲んでるって」
「ええっ!? 違うし! 普通に話振っただけ!」
「私が知ってた頃の瑞姫はここにはもういない……」
「ちょっと~ 私は全然変わってないんですけどぉ。幸せ太りするにはまだ早いし」
「今のノロケアピールと取っても構いませんか?」
「あはは。ちょっとそうかも」
僕を置いてけぼりにして2人の会話は盛り上がっていく。
そうか、これが4組の活発な女子達の現状なのか。
今まで教室にお邪魔した時はそれほど気にならなかったけど、このテンションで話しているなら、そこに松永が飛び込む様子も想像できる。
「それで、産賀くんと里美は何の話をしてたわけ?」
「うんとね。産賀の君が塾でいつも相席してる子の顔が私の好きな顔だったって話」
「へぇ~ そんな可愛い女の子が……うん? 産賀くんっていつも女の子と相席してるの……?」
栗原さんは僕に一歩詰め寄りながら言う。
そんな話は全くしていないし、栗原さんは栗原さんで相席してる子を女子と決めつけて言うのはどうしてだ。
いや、合ってはいるんだけど。
「お、同じ部活の子だから」
「あ~、2年生2人だけだったもんね。その子も同じ塾だったんだぁ……ふーん」
「な、何?」
「……里美。教室に戻ったらもっと詳しい話聞かせて」
「りょです」
「ちょ、ちょっと!?」
「あはは! 産賀くん、また松永でも……真治くん目当てでもいいから4組に遊びにおいで!」
そう言い残して栗原さんは重森さんを引っ張って教室へ戻って行った。
何だかまたあらぬ誤解を生みそうだけど……栗原さんは悪い人ではないので、そこは信じるしかない。
それはそれとして、栗原さんが本田くんの名前を出す時にちょっと照れていたのは……本当に付き合ってるんだなぁと今更実感した。
くっ付けようとしていた栗原さんがそうなるとはなぁ。
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