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2年生2学期
11月13日(日)曇り時々雨 松永浩太との歓談その9
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久しぶりの雨が降った日曜日。
この日、僕は松永の家へ遊びに……ではなく、相談しに向かう。
連絡を入れた時は直球な言葉に少し驚いていたけど、すぐに「もちろん」と返してくれた。
「それでわざわざ顔を合わせてまでしたい相談って何?」
「……松永はさ。相手が好きだと思っているのに、自分に自信がない時ってどうする?」
「りょーちゃん……まさか茉奈ちゃんから何か探りを入れるように言われた……?」
ただ、何の相談かまでは言っていなかったので僕の言葉を松永は警戒する。
「探りを入れられるような心当たりがあるのか?」
その反応が少し面白かったので、僕は少し意地悪な返しをしてしまった。
「ないない! いや、こんな風にりょーちゃんから相談されるのが珍しくて、それが恋愛っぽい話題だったから……」
「冗談だよ。それに……本当に恋愛相談なんだ」
「なーんだ。それなら……恋愛相談!? オレに!? りょーちゃんが!?」
予想通りの反応を返してくれたので、僕は素直に頷く。
「その……凄く迷ってるんだ。僕も……たぶん相手も」
「おお! もっと詳しく聞かせてくれ!」
「た、楽しそうだな。でも、松永が思っているような爽やかな状況じゃないんだ。むしろ拗れそうな感じがして……」
「わ、わかった。真面目に聞く」
松永はそう言ってわざわざ姿勢を正す。
そこから僕は相手の……路ちゃんの名前は隠しつつ、今の状況を話していった。
だけど、僕が松永に喋った今まで日常の話と今日の話を照らし合わせると、言わなくても察せられると思った。
現に聞き終わった松永はどこか納得した表情をしていた。
「なるほどなぁ……まぁ、どっちも悪いとは言えない状況だな」
「また僕が自惚れているだけって可能性もあるけど……」
「いや、それはないね。そこで怒ってしまうんだったら……少なくともりょーちゃんに対して大きな信頼を寄せている」
「そ、そうか……」
「相手が恋愛感情を持ってるのはいつから気付いてたの?」
「本当に気付いたのはこの件からだよ。それまでは……半分以上僕の想像の部分が大きいと思ってた」
「ふむ。じゃあ、りょーちゃんもその子といい感じになることは、別に嫌じゃなかったと」
「そう言われると……そうなんだけど」
はっきり言われると恥ずかしい。
しかも、その時期の僕は清水先輩に強く惹かれていたのだから、何とも不誠実な奴だ。
「いや、別に悪いと言ってるわけじゃないぜ? 想像くらい誰だってするものだし。オレだってちょっとだけ清水先輩と付き合ったとしたらと考えたことが……」
「は?」
「ご、ごめん。例えが悪かった。オレが言いたかったのは現実と妄想は話が別だって話。芸能人といい感じに妄想とかみんなすることだし」
「……まぁ、そこについては伊月さんに任せるよ」
「怖いこと言うなぁ。ただ、それで言うならりょーちゃんは恋愛に対して潔癖過ぎるところはあると思うぜ。自分が傷心の時に優しく声をかけてくれた相手に惚れるなんて珍しくないことだし」
松永は少し強めの口調でそう言う。
「いや、僕は惚れてるわけじゃなくて……」
「じゃあ、別に気まずくなる必要もないじゃん。相手から何も言わない限りはお友達のままってことで」
「で、でも、仮に言ってきたら……」
「断って関係がこじれるのが嫌だ? それとも失恋した傷を癒すために君を代わりにするのが不純?」
松永は試すような口調で聞いてくる。
「1つ目を思ってるならちゃんと断らない方が不誠実。2つ目を思ってるなら……惚れてるは言い過ぎかもしれないけど、意識してるってことだと思う」
「……そうか」
「まぁ、こんだけ言っといてなんだけど、りょーちゃんの言う通り自惚れの可能性もある。なにせオレも男子の思考で言ってるから」
「いや……助かったよ。ありがとう」
「お安い御用だ。じゃあ、別の話でもするかぁ」
結局、その場ですぐに答えは出せなかったけど、松永のおかげで大きく進むことができた。
あとは……本人と話し合うだけだ。
この日、僕は松永の家へ遊びに……ではなく、相談しに向かう。
連絡を入れた時は直球な言葉に少し驚いていたけど、すぐに「もちろん」と返してくれた。
「それでわざわざ顔を合わせてまでしたい相談って何?」
「……松永はさ。相手が好きだと思っているのに、自分に自信がない時ってどうする?」
「りょーちゃん……まさか茉奈ちゃんから何か探りを入れるように言われた……?」
ただ、何の相談かまでは言っていなかったので僕の言葉を松永は警戒する。
「探りを入れられるような心当たりがあるのか?」
その反応が少し面白かったので、僕は少し意地悪な返しをしてしまった。
「ないない! いや、こんな風にりょーちゃんから相談されるのが珍しくて、それが恋愛っぽい話題だったから……」
「冗談だよ。それに……本当に恋愛相談なんだ」
「なーんだ。それなら……恋愛相談!? オレに!? りょーちゃんが!?」
予想通りの反応を返してくれたので、僕は素直に頷く。
「その……凄く迷ってるんだ。僕も……たぶん相手も」
「おお! もっと詳しく聞かせてくれ!」
「た、楽しそうだな。でも、松永が思っているような爽やかな状況じゃないんだ。むしろ拗れそうな感じがして……」
「わ、わかった。真面目に聞く」
松永はそう言ってわざわざ姿勢を正す。
そこから僕は相手の……路ちゃんの名前は隠しつつ、今の状況を話していった。
だけど、僕が松永に喋った今まで日常の話と今日の話を照らし合わせると、言わなくても察せられると思った。
現に聞き終わった松永はどこか納得した表情をしていた。
「なるほどなぁ……まぁ、どっちも悪いとは言えない状況だな」
「また僕が自惚れているだけって可能性もあるけど……」
「いや、それはないね。そこで怒ってしまうんだったら……少なくともりょーちゃんに対して大きな信頼を寄せている」
「そ、そうか……」
「相手が恋愛感情を持ってるのはいつから気付いてたの?」
「本当に気付いたのはこの件からだよ。それまでは……半分以上僕の想像の部分が大きいと思ってた」
「ふむ。じゃあ、りょーちゃんもその子といい感じになることは、別に嫌じゃなかったと」
「そう言われると……そうなんだけど」
はっきり言われると恥ずかしい。
しかも、その時期の僕は清水先輩に強く惹かれていたのだから、何とも不誠実な奴だ。
「いや、別に悪いと言ってるわけじゃないぜ? 想像くらい誰だってするものだし。オレだってちょっとだけ清水先輩と付き合ったとしたらと考えたことが……」
「は?」
「ご、ごめん。例えが悪かった。オレが言いたかったのは現実と妄想は話が別だって話。芸能人といい感じに妄想とかみんなすることだし」
「……まぁ、そこについては伊月さんに任せるよ」
「怖いこと言うなぁ。ただ、それで言うならりょーちゃんは恋愛に対して潔癖過ぎるところはあると思うぜ。自分が傷心の時に優しく声をかけてくれた相手に惚れるなんて珍しくないことだし」
松永は少し強めの口調でそう言う。
「いや、僕は惚れてるわけじゃなくて……」
「じゃあ、別に気まずくなる必要もないじゃん。相手から何も言わない限りはお友達のままってことで」
「で、でも、仮に言ってきたら……」
「断って関係がこじれるのが嫌だ? それとも失恋した傷を癒すために君を代わりにするのが不純?」
松永は試すような口調で聞いてくる。
「1つ目を思ってるならちゃんと断らない方が不誠実。2つ目を思ってるなら……惚れてるは言い過ぎかもしれないけど、意識してるってことだと思う」
「……そうか」
「まぁ、こんだけ言っといてなんだけど、りょーちゃんの言う通り自惚れの可能性もある。なにせオレも男子の思考で言ってるから」
「いや……助かったよ。ありがとう」
「お安い御用だ。じゃあ、別の話でもするかぁ」
結局、その場ですぐに答えは出せなかったけど、松永のおかげで大きく進むことができた。
あとは……本人と話し合うだけだ。
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