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2年生2学期
10月7日(月)晴れのち曇り 花園華凛との日常その21
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11月2週目の月曜日。
他の人にとっては何でもない月曜日だと思われるけど、昨日のことから僕は朝から教室に入るのが億劫だった。
それでもサボるわけにはいかないので、意を決して自分の席に向かう。
すると、そこには花園さんと大山さんが待ち構えていた。
「うぶクン、ちょっとだけ時間貰える?」
「すぐに済ませますから」
そう言われて僕は頷くと一旦廊下に出る。
しかし、最初に言われたのは予想していない言葉だった。
「リョウスケ……この度は本当にすみませんでした」
「アタシもごめん。こうなるなんて思ってなかった」
2人は突然頭を下げて謝る。
「ど、どうしたの。急に」
「昨日、敢えて店から外れていましたが……店員から聞きました。早々と帰ってしまったことを。そして、ミチちゃんからも話は聞きました。リョウスケに……辛い想いをさせてしまったと」
「い、いやいや。そこまで深刻なことじゃないから。聞かれたのはびっくりしたけど」
「……アタシとぞのサンはね、ミチから相談されてたんだ。うぶクンを夏祭りで見かけたことを本人に聞くべきかどうかって。アタシはそれについて知ってたくせに……直接聞いた方がいい方向に行くと思って黙ってた」
「そう……だったんだ」
「時間も経ってるし、うぶクンも大丈夫そうだって勝手に思って……だから、今回のことはアタシが全面的に悪いから」
「いえ。元は華凛が推し進めたことです。最初から華凛が余計なことを……」
「……やだなぁ。2人ともそんなに暗くならないでよ」
僕のあっけらかんとした態度に2人は少し驚く。
「花園さんと大山さんが色々考えてくれたのはわかるし、結果的に路ちゃんの悩みは解決できたんだからいいじゃない。まぁ、僕もこれでようやく踏ん切りが付いた感じだし、全部丸く収まった」
「ですが……」
「そういえば、花園さん。栗ようかん凄く美味しかったよ。今度は明莉も連れて……いや、明莉は別で行くかな。大山さんも食べに行くといいよ」
「うぶクン……」
「だから……この件はもう終わりってことで」
僕はなるべく笑顔を見せるけど、2人は深刻そうな表情は変わらなかった。
別に皮肉でも空元気でもなく、僕は2人が路ちゃんのためを思って、動いていたと思っている。
それがたまたま僕と嚙み合わなかっただけで、きっとこのことも数日すれば人生の失敗の一部として昇華されていくことだろう。
だから……2人には責任を感じて欲しくなかった。
そんな顔を見せられてしまったら、路ちゃんと向き合うのが辛くなってしまうから。
そして、残念ながら……この日の僕は教室でも塾でも路ちゃんとまともに話すことはできなかった。
他の人にとっては何でもない月曜日だと思われるけど、昨日のことから僕は朝から教室に入るのが億劫だった。
それでもサボるわけにはいかないので、意を決して自分の席に向かう。
すると、そこには花園さんと大山さんが待ち構えていた。
「うぶクン、ちょっとだけ時間貰える?」
「すぐに済ませますから」
そう言われて僕は頷くと一旦廊下に出る。
しかし、最初に言われたのは予想していない言葉だった。
「リョウスケ……この度は本当にすみませんでした」
「アタシもごめん。こうなるなんて思ってなかった」
2人は突然頭を下げて謝る。
「ど、どうしたの。急に」
「昨日、敢えて店から外れていましたが……店員から聞きました。早々と帰ってしまったことを。そして、ミチちゃんからも話は聞きました。リョウスケに……辛い想いをさせてしまったと」
「い、いやいや。そこまで深刻なことじゃないから。聞かれたのはびっくりしたけど」
「……アタシとぞのサンはね、ミチから相談されてたんだ。うぶクンを夏祭りで見かけたことを本人に聞くべきかどうかって。アタシはそれについて知ってたくせに……直接聞いた方がいい方向に行くと思って黙ってた」
「そう……だったんだ」
「時間も経ってるし、うぶクンも大丈夫そうだって勝手に思って……だから、今回のことはアタシが全面的に悪いから」
「いえ。元は華凛が推し進めたことです。最初から華凛が余計なことを……」
「……やだなぁ。2人ともそんなに暗くならないでよ」
僕のあっけらかんとした態度に2人は少し驚く。
「花園さんと大山さんが色々考えてくれたのはわかるし、結果的に路ちゃんの悩みは解決できたんだからいいじゃない。まぁ、僕もこれでようやく踏ん切りが付いた感じだし、全部丸く収まった」
「ですが……」
「そういえば、花園さん。栗ようかん凄く美味しかったよ。今度は明莉も連れて……いや、明莉は別で行くかな。大山さんも食べに行くといいよ」
「うぶクン……」
「だから……この件はもう終わりってことで」
僕はなるべく笑顔を見せるけど、2人は深刻そうな表情は変わらなかった。
別に皮肉でも空元気でもなく、僕は2人が路ちゃんのためを思って、動いていたと思っている。
それがたまたま僕と嚙み合わなかっただけで、きっとこのことも数日すれば人生の失敗の一部として昇華されていくことだろう。
だから……2人には責任を感じて欲しくなかった。
そんな顔を見せられてしまったら、路ちゃんと向き合うのが辛くなってしまうから。
そして、残念ながら……この日の僕は教室でも塾でも路ちゃんとまともに話すことはできなかった。
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