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2年生2学期

10月29日(土)晴れ 明莉との日常その64

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 テスト終わりの土曜日。
 天気としてはこの上ない快晴だったけど、さすがにこの時期だと寒さの方が勝ってくる。
 だからというわけではないけど、僕はいつも通り自宅で過ごした日になった。

「はい、りょうちゃん。トリックオアトリート」

 そんなゆっくりしている中、明莉は唐突にそう言って僕にお菓子を渡してくる。

「あげる側が言うんだ」

「まぁ、実際にいたずらするわけでもないし、お菓子のやり取りする呪文みたなものでしょ」

「なんか悪い事するのを隠す暗号みたいだ。でも、ありがとう」

 そう言いながら貰ったお菓子を確認すると、かぼちゃのランタンやコウモリが描かれたパッケージのチョコ菓子だった。

「明莉からお菓子貰えるなんて珍しい……」

「そんなことないもん。あかりだって1年に2回くらいはお菓子あげるもん」

「そのうちの1回はバレンタイン?」

「うん。だから、今年のノルマは終了」

「ノルマ制だったのか」

 しかもこれがハロウィン扱いだろうから、実質的にイベントがなければお菓子を貰うことはない。
 いや、本当はもっと貰っているだろうけど、僕があげる回数が多いから印象が薄れている。

「冗談はこれくらいにして、昨日、コンビニで衝動買いしちゃったからりょうちゃんにも分けてあげたってわけ。ハロウィンも近いし」

「なるほどね。確かにハロウィン仕様になっているだけでも妙に惹かれるものがある」

「やっぱりハロウィン=お菓子の印象が強いから目が行っちゃうのかなぁ。まんまと商業の罠に引っかかった」

「そんな言い方しなくても。でも、最近は買い食いを控えてる印象ある」

「この前も言ったけど、部活引退してるから、体重管理がシビアになってるんだよ……」

 明莉は真剣な表情で言う。
 ということは、全部食べないようにする意味でも分けてくれたのかもしれない。
 本人には絶対言わないけど、今のところ明莉が部活を辞めたことで、身体的な変化があるようには見えない。
 ただ、隠されている数値では明莉なりの戦いが行われているのだろう。

「まぁ、無理しない程度に」

「ありがとう。でもなぁ……月曜日のハロウィン当日は絶対お菓子交換するだろうしなぁ……」

「ああ、女子間でやるのか」

「……じゃあ、いっそこの期間は食べるだけ食べて次の週辺りから……いやでも、11月以降も冬のお菓子が出るし、12月なんてケーキラッシュだし……」

「僕の誕生日の時、ケーキ抜きにする?」

「やだぁ! 年に4回+アルファしか食べるチャンスないのに!」

「個人で食べられるなら結構チャンスあると思うけど」

「やだやだぁ! 家族の誕生日はケーキ食べる口になってるもん!」

「じゃあ、仕方ないかぁ」

 僕はそう言うけど、明莉の中ではまだ葛藤があるようだった。
 食欲の秋から冬にかけては体重が増えやすいと聞くし、明莉を含めた運動部を引退後の女子達は様々な思いを持って過ごす数ヶ月になるのかもしれない。
 僕も他人事とは思わず食べ過ぎには注意しようと思った。
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