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2年生2学期

10月27日(木)曇り 後援する大山亜里沙その6

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 2学期中間テスト3日目。
 本日もテスト前に大倉くんと軽く出題してからテストに望んだ。
 僕の調子は今のところ順調なので、明日が問題なく終われば気持ちよく休日を迎えられそうだ。

「むむむ……」

 そんな今日のテストが終わった後、いつも通り出席番号順で隣の席に来ていた大山さんは難しい顔をしていた。
 しかし、そのうなり声はスマホを見ての反なのでテストとは無関係のように見える。

「どうしたの、大山さん?」

「いや、ちょっとね……」

「難しい話?」

「ううん。アタシの超個人的な悩みだから」

「そうなんだ」

 詳細は言ってくれないのであまり触れて欲しくない話題なのだろうか。
 それならば追求するのはやめておこう。

「当ててみる?」

 そう思っていたら大山さんは急に悪戯な笑みを浮かべてそう言った。
 ……触らぬ神に祟りなしだったか。

「いや、遠慮しておくよ……」

「そんなこと言わないで。うぶクンが想像するアタシの超個人的な悩みがどんなイメージか聞いてみたいし」

「ええっ……こ、これからテスト勉強しなきゃ……」

「まぁまぁ。今日は塾もないんだし、テスト終わりのリフレッシュとして、ね?」

 逃げられない圧を出されてしまったので、僕は大人しく考えることにする。
 超個人的な……いや、全くヒントが出されていないじゃないか。
 これは面白がるために吹っ掛けられたに違いない。
 スマホを見つめて悩むようなことと言えば……ネットで何か買いたい物でも見つけたとか。
 テスト中だけど、思わず手が伸びてしまうような、限定品が販売されたと考えれば悩んでしまってもおかしくない。

「違いまーす」

 それなら……予想外の発表があったとか。
 テストを受けている間に好きな芸能人が想定外のスキャンダルが……何だか自分で言ってて胸が痛くなってきた。

「ほう。昨今らしい推測だけど違う」

 うーん……超個人的というくらいだから、もっと大山さん自身にかかることなのか。
 だとすれば……1つ思い付いたけど……そもそも正解を当てるべきなんだろうか。
 面白回答を待っているのだとしたら、僕は真面目に考え過ぎているのかもしれない。
 昨日、ノリの悪さを反省したばかりなのだから、ちょっと捻った方がいいのか。

「うぶクン……思った以上に考えてくれてるみたいで何かゴメン」

「えっ? いや、別にそこは大丈夫だけど」

「そして、この答えは教えられない……」

「ええっ!? ここまで引っ張っておいて!?」

「まぁ、女の子は1つや2つ秘密を抱えるものだから……」

「体重が」

「こら。うぶクン」

大山さんは真顔のまま手のひらを突き出してきた。

「ご、ごめん。最後に考えてたことだから」

「…………」

「えっ、まさか当たり……」

「はい、今日は解散!」

 大山さんは荷物を持ってそのまま帰宅してしまった。
 本当に正解かはわからなかったけど、聞かれて困る問題なら出題しなければ良かったのに……いや、もしかしてこれはまた僕が悪いのか?
 何だか2日間連続で自分のコミュニケーション力が不安になってきた。
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