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2年生2学期

10月18日(火)曇り 後輩との日常・姫宮青蘭の場合その10

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 また少し肌寒くなった火曜日。
 本日は文化祭明けての文芸部であり、路ちゃんから先日のお疲れ様という言葉と共に、今後の予定が発表される。
 去年と同じように冊子に載せた小説を全員で評論しつつ、次は卒業生に向けた冊子に載せる作品を考えていくことになる。
 それ以外の時間はおすすめ本の発表や文章表現などの勉強をしていくことになるだろう。

 ただ、その話が終わった後は、今日は来ていたソフィア先輩の元に女子達は集まって喋り始めてしまった。
 路ちゃんを含めてこの件は暫く文芸部内のホットな話題になるのかもしれない。

 そんな中、女子の中だと姫宮さんだけその会話に混ざらずに、今回の冊子を真剣な表情で見つめていた。

「どうしたの、姫宮さん。もしかして、何か不備でもあった?」

「いいえ。冊子を貰ってから少しずつ読み進めていましたが皆さんの作品はどれも面白かったです」

「おお。それは良かった」

「でも作者がわからないから直接感想を伝えられません」

「ま、まぁ、確かにそうか。でも、そこは今後の評論の時に……」

「なので誰がどの作品を書いたか予想していました」

 姫宮さんは何故かドヤ顔で言う。
 姫宮さんにとってはこっちの方がホットな話題らしい。

「副部長は作者を把握しているんですよね」

「いや、チラッと見た程度だから全員覚えてるわけじゃないよ」

「それなら副部長の表情から判断するのは無理ですか」

「尋問みたいなのはやめてよ……?」

「でしたら今から副部長がどれを書いたのか当ててみます。いいですか」

 そう言われたので僕は一瞬考えてしまったけど、本当に当てられるか面白そうだったので頷いてみる。
 すると、姫宮さんは冊子を飛ばし読みするように素早く捲っていく。
 何か質問されるかと思っていたけど、どうやら作品から読み取れる要素だけで当てるらしい。
 そして、あるページの作品で手を止めて少し考えた後、そのページを僕に見せながら言う。

「私の感覚ではダイ・アーリーが副部長だと思います」

「……なぜ?」

「副部長の普段の話し方やよく使う言葉がでてきている気がします」

「す、すごいな。正解だよ」

 僕は素直に感心して軽く拍手してしまう。
 それと同時に僕が書いた文章にはちゃんと僕の語彙力が反映されていたことにちょっと驚いた。
 なるべく作中の人物として書いていたつもりだったけど、やっぱり癖はあるのだろうか。

「なるほど。副部長がこんな話を――」

「ああ、ちょっと待って! 急に恥ずかしくなってきた……」

「別に恥じることはありません。先ほども言いましたが普通に面白かったです。ただ」

「た、ただ?」

「意外なテーマ選択でした。副部長はもっと硬派な感じだと思っていたので」

「それは……まぁ、うん。書いた時期の影響も大きいかも」

「それは――」

「な、何でもない! でも、感想はありがとう!」

 色々言われる前に僕は姫宮さんの前から離脱した。
 こうなることは予想できたはずなのに、好奇心の方が勝ってしまった。
 いや、当てられないと思っていたのもあるから、余計に恥ずかしい。

 これからダイ・アーリーとして書く作品は、姫宮さんに僕とわかった上で詠まれてしまうことになる。
 まぁ、作者がわかったところでアマチュアの僕が書く文章だからそれほど影響はないだろうけど……僕自身はより気合を入れようと思った。
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