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2年生2学期
10月6日(木)曇り時々雨 前進する清水夢愛その2
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冬服姿が増えた木曜日。
かく言う僕も自転車で風を切ると思ったので、昨日の夜に冬の制服を用意していた。
「おっ、良助も冬服にしたのか」
そんな中、僕が駐輪場から下駄箱へ向かうとしていたところに清水先輩と偶然出会う。
「はい。昨日寒くなるって散々ニュースで言われたので」
「実際寒いから正解だな。まぁ、私は小織から言われたから用意したんだが」
「桜庭先輩がですか?」
「この時期に風邪を引いたらいけないと言われてな。まぁ、風邪は年中引かない方がいいんだが」
それは受験生として健康に気を付けようという意味だろう。
お店のコーナーにも受験生に向けた商品やお菓子がちらほらと出てくる時期になっていた。
「私としてはそっちより最後の文化祭を楽しむためにも健康でいないとな。そうだ、今年も文芸部は見学に行くぞ」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「良助も空いた時間に茶道部へ立ち寄ってくれ。去年はタイミングが合わなかったが、今年は私が直々に応対するから」
「そ、そうですね……行かせて貰います」
清水先輩は親切心でそう言ってくれるけど、僕は少し返事に困ってしまった。
ほんのちょっと前なら喜べる言葉だったはずなのに。
「3年生は自由時間を多くして貰ってるから、言ってくれれば茶道部にいる時間合わせるよ。今年はミスコンもないし」
「あっ、そうなんですか?」
「少なくとも私の周りで聞いた話だとな。まぁ、今年は候補から外された可能性もあるが」
「いや、清水先輩が外されることはないかと……」
「ふふっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
僕の言葉に清水先輩は笑顔を向けてくれた。
ただ、今の言葉選びは失敗だった。
素直な気持ちではあるけど、それで清水先輩まで素直に返してしまわれたら、今の僕は少し苦しい。
「じゃあ、文芸部内での詳しい時間が決まったら、また連絡してくれ」
そのまま清水先輩と別れると、僕はようやくひと息つけた。
……全く駄目だ。
もう1ヶ月以上経つというのに、心の中が整理できていない。
文化祭で茶道部に行くまでには、何とかしなければならないと思った。
かく言う僕も自転車で風を切ると思ったので、昨日の夜に冬の制服を用意していた。
「おっ、良助も冬服にしたのか」
そんな中、僕が駐輪場から下駄箱へ向かうとしていたところに清水先輩と偶然出会う。
「はい。昨日寒くなるって散々ニュースで言われたので」
「実際寒いから正解だな。まぁ、私は小織から言われたから用意したんだが」
「桜庭先輩がですか?」
「この時期に風邪を引いたらいけないと言われてな。まぁ、風邪は年中引かない方がいいんだが」
それは受験生として健康に気を付けようという意味だろう。
お店のコーナーにも受験生に向けた商品やお菓子がちらほらと出てくる時期になっていた。
「私としてはそっちより最後の文化祭を楽しむためにも健康でいないとな。そうだ、今年も文芸部は見学に行くぞ」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「良助も空いた時間に茶道部へ立ち寄ってくれ。去年はタイミングが合わなかったが、今年は私が直々に応対するから」
「そ、そうですね……行かせて貰います」
清水先輩は親切心でそう言ってくれるけど、僕は少し返事に困ってしまった。
ほんのちょっと前なら喜べる言葉だったはずなのに。
「3年生は自由時間を多くして貰ってるから、言ってくれれば茶道部にいる時間合わせるよ。今年はミスコンもないし」
「あっ、そうなんですか?」
「少なくとも私の周りで聞いた話だとな。まぁ、今年は候補から外された可能性もあるが」
「いや、清水先輩が外されることはないかと……」
「ふふっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
僕の言葉に清水先輩は笑顔を向けてくれた。
ただ、今の言葉選びは失敗だった。
素直な気持ちではあるけど、それで清水先輩まで素直に返してしまわれたら、今の僕は少し苦しい。
「じゃあ、文芸部内での詳しい時間が決まったら、また連絡してくれ」
そのまま清水先輩と別れると、僕はようやくひと息つけた。
……全く駄目だ。
もう1ヶ月以上経つというのに、心の中が整理できていない。
文化祭で茶道部に行くまでには、何とかしなければならないと思った。
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