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2年生2学期
10月5日(水)曇り 花園華凛との日常その17
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ニュースの通り急に寒さがやって来た水曜日。
ただ、10月の初週であればこれくらいの気温が普通らしく、この時期はこんなに肌寒かったのかと少し驚く。
「そんな貴方に花月堂のおしるこをおすすめします」
そう言ってきたのはいつの間にか僕の席の横に来ていた花園さんだった。
「な、なぜ急に」
「リョウスケが寒いと呟いたので絶好の宣伝タイミングかと。最近はお金を落としに来てくれませんし」
「その言い方はどうなの。まぁ、行ってないのは事実だけど」
明莉にあれやこれやがあって、夏休みに京都のお土産を買いに行った時から足を運ばなくなっていた。
距離的にも少し遠いし、やっぱり男一人で甘味処に乗り込むのは勇気がいる。
「あれ、うぶクンはぞのさんとこあんまり行ってないの?」
その言葉に反応したのは後ろの席の大山さんだ。
「そう言う大山さんは行ってるの?」
「うん。まぁ、月に一回くらいのペースだケド。これからあったかいスイーツが出るなら利用頻度上がるかも」
「いつもご贔屓にして頂きありがとうございます」
「いや~ それほどでも~」
そのやり取りからして大山さんが常連になっているのは本当らしい。
意外だと思ってしまったけど、そういえばこの2人はいつの間にか関係性ができあがっていたから、僕が知らないところで仲良くしているのかもしれない。
「それに比べてリョウスケは薄情です」
「そこまで言われるの!? わ、わかったよ。また今度近いうちに行くから」
「本当ですか? 華凛は口だけの男は許しませんよ」
「だったら、みちを誘っていけばいいんじゃない?」
「えっ?」
「ほら、文化祭で部長・副部長で忙しくしたんだから、終わった後にお疲れ様会的な?」
突然の提案に僕は少し驚いて返答を迷ってしまう。
日葵さんもやたらと打ち上げをしたがっていたけど、女子はそういうのが好きなんだろうか。
それとも男女関係なく、僕がインドア派だからあまり思わないのだろうか。
「あっ、ミチちゃん。こっちこっち」
「どうしたの? 2人で良助くんを囲んで?」
「「じー……」」
花園さんと大山さんから次の行動を期待されるような目を向けられる。
僕は同意も否定もしていないけど、この流れで何も言わなければ何か言われる気がする。
「あ、あのー……暫く花園さんのお店に行ってないから今度暇を見つけて行こうと思うんだけど……良かったら路ちゃんも行かない?」
「えっ!? わ、わたし!?」
「文化祭の後に打ち上げとは別で行く感じで。まだ日付とかは決めてないけど」
「わ、わたしで良ければ……うん。予定空けておくね」
結局は口約束をしているけど、路ちゃんとは部活と塾で顔を合わせるから忘れることはまずないと思われる。
それにしても完全に流されて言ってしまった。
「では、華凛も楽しみにしています」
そう言い残して花園さんと路ちゃんは自分の席に帰っていく。
いきなり始まって約束してしまったけど……まぁ、実際に路ちゃんは部長としてがんばっているのだからお疲れ会を開くのも悪くないだろう。
「……ごめんね」
「うん? なにか言った?」
「なんでもない! アタシも近いうちに行こうかなー」
「それなら僕らと一緒にでも……」
「……なんでそっちは自然に誘えるの」
「自然に……?」
「もう、本当になんでもない! お疲れ会は2人で行ってらっしゃい!」
大山さんは少しギレ気味に言うので、僕は頷くことしかできなかった。
何だか違和感を覚えるけど、今はおしるこを楽しみにしておこう。
ただ、10月の初週であればこれくらいの気温が普通らしく、この時期はこんなに肌寒かったのかと少し驚く。
「そんな貴方に花月堂のおしるこをおすすめします」
そう言ってきたのはいつの間にか僕の席の横に来ていた花園さんだった。
「な、なぜ急に」
「リョウスケが寒いと呟いたので絶好の宣伝タイミングかと。最近はお金を落としに来てくれませんし」
「その言い方はどうなの。まぁ、行ってないのは事実だけど」
明莉にあれやこれやがあって、夏休みに京都のお土産を買いに行った時から足を運ばなくなっていた。
距離的にも少し遠いし、やっぱり男一人で甘味処に乗り込むのは勇気がいる。
「あれ、うぶクンはぞのさんとこあんまり行ってないの?」
その言葉に反応したのは後ろの席の大山さんだ。
「そう言う大山さんは行ってるの?」
「うん。まぁ、月に一回くらいのペースだケド。これからあったかいスイーツが出るなら利用頻度上がるかも」
「いつもご贔屓にして頂きありがとうございます」
「いや~ それほどでも~」
そのやり取りからして大山さんが常連になっているのは本当らしい。
意外だと思ってしまったけど、そういえばこの2人はいつの間にか関係性ができあがっていたから、僕が知らないところで仲良くしているのかもしれない。
「それに比べてリョウスケは薄情です」
「そこまで言われるの!? わ、わかったよ。また今度近いうちに行くから」
「本当ですか? 華凛は口だけの男は許しませんよ」
「だったら、みちを誘っていけばいいんじゃない?」
「えっ?」
「ほら、文化祭で部長・副部長で忙しくしたんだから、終わった後にお疲れ様会的な?」
突然の提案に僕は少し驚いて返答を迷ってしまう。
日葵さんもやたらと打ち上げをしたがっていたけど、女子はそういうのが好きなんだろうか。
それとも男女関係なく、僕がインドア派だからあまり思わないのだろうか。
「あっ、ミチちゃん。こっちこっち」
「どうしたの? 2人で良助くんを囲んで?」
「「じー……」」
花園さんと大山さんから次の行動を期待されるような目を向けられる。
僕は同意も否定もしていないけど、この流れで何も言わなければ何か言われる気がする。
「あ、あのー……暫く花園さんのお店に行ってないから今度暇を見つけて行こうと思うんだけど……良かったら路ちゃんも行かない?」
「えっ!? わ、わたし!?」
「文化祭の後に打ち上げとは別で行く感じで。まだ日付とかは決めてないけど」
「わ、わたしで良ければ……うん。予定空けておくね」
結局は口約束をしているけど、路ちゃんとは部活と塾で顔を合わせるから忘れることはまずないと思われる。
それにしても完全に流されて言ってしまった。
「では、華凛も楽しみにしています」
そう言い残して花園さんと路ちゃんは自分の席に帰っていく。
いきなり始まって約束してしまったけど……まぁ、実際に路ちゃんは部長としてがんばっているのだからお疲れ会を開くのも悪くないだろう。
「……ごめんね」
「うん? なにか言った?」
「なんでもない! アタシも近いうちに行こうかなー」
「それなら僕らと一緒にでも……」
「……なんでそっちは自然に誘えるの」
「自然に……?」
「もう、本当になんでもない! お疲れ会は2人で行ってらっしゃい!」
大山さんは少しギレ気味に言うので、僕は頷くことしかできなかった。
何だか違和感を覚えるけど、今はおしるこを楽しみにしておこう。
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