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2年生2学期
9月28日(水)曇り時々雨 桜庭くんと桜庭さんその2
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三度台風が迫り始めた水曜日。
今年は台風の話題ばかり書いている気がするから去年より接近回数が多いのかもしれない。
そんな今日は今の僕が接近すると少し困ってしまう人物と出会ってしまう。
「あら、産賀くん。お久しぶり」
塾前にいったん帰宅しようと思っていた放課後、桜庭先輩は僕に声をかける。
下駄箱に行く直前に出会ったので、待ち構えられていたのかと思ってしまった。
「お、お久しぶりです。桜庭先輩は……今日はもう帰りで?」
「ううん。部活があるけど、その前にちょっと用事を済ませようと思って、そしたらたたまたま産賀くんが見えたの」
「そうだったんですか。それじゃあ……」
「あら、そんなにすぐ帰ろうとするの?」
「い、いえ……」
会ってしまったからには今一番ホットな話題を振らないといけない気がする。
逆に考えよう……今日会ったのは早めに言っておけという導きだと。
そう思って僕が口を開こうとすると、その前に桜庭先輩は神妙な面持ちになる。
「産賀くん的にはまだ気になってる……わよね」
「えっ……」
「私も直接声をかけるのはどうかと思っていたから、この機会に言っておくわ。夢愛のこと……変わらず接してくれてありがとう。そして、ごめんなさい。私も煽るようなことをしておいて……」
桜庭先輩は僕に向かって頭を下げる。
僕が躊躇していたのが、清水先輩のことだと思われてしまったらしい。
「さ、桜庭先輩は悪くないです。あれは僕が勝手に勘違いしちゃっただけで……」
「それで言うなら産賀くんも悪くないわ。私だって、てっきり……ごめんなさい。掘り返したかったわけじゃないんだけど」
「えっと……全く気にならなくなったと言ったら嘘になりますけど、それで清水先輩や桜庭先輩と距離を置くつもりはないです。清水先輩にもそう言ったので……」
「……そう。それなら……なんで今日は話を切り上げようとしたの?」
「そ、それは……」
「別にいいのよ。はっきり言っておいてくれれば、私も暫くはむやみやたらに絡むようなことはしないから」
「ち、違うんです! 実は……」
桜庭先輩が珍しくしおらしい感じになってしまったので、僕は慌てて本題を話す。
それを聞いた桜庭先輩は一瞬だけぽかんとしていたけど、すぐに吹き出しだ。
「ふふっ。なにそれ。もしかして、それで私と話すのが気まずかったの」
「そ、そうです……」
「なるほどね。それにしても正弥くんの彼女が産賀くんの妹さんだったなんて」
「彼女ができたのは知ってたんですか?」
「本人からは聞いてないけど、両親から伝わる形でね。これは……また弄りがいのある話題が増えたわ」
「まさか桜庭くんのことも僕みたいな扱いなんですか」
「まるで私が産賀くんのことを弄ってるみたいに言うじゃない。まぁ、でも、正解よ」
「……当たりたくなかった」
「産賀くんと正弥くん、そういう意味では少し似ているところがあるのかも」
何だか急に桜庭くんに対して親近感が湧いてきた。
今度会った時はお互いの被害を報告してもいいかもしれない。
「じゃあ、産賀くんが私もお姉ちゃんと言う未来もあるかもしれないと」
「そうなってもたぶん言わないですよ」
「残念。あっ、そろそろ用事を済ませなきゃいけないから、私はこれで」
話してみると桜庭先輩と気まずさを感じるよりも桜庭くんへの共感性が高まったから、何事もやってみるまでわからないものである。
それに、勘違いの流れではあったけど、清水先輩の件を桜庭先輩に話せたことも結果的には良かった。
今度会う時は、桜庭先輩が気にかけずに済む状態にしておきたい。
今年は台風の話題ばかり書いている気がするから去年より接近回数が多いのかもしれない。
そんな今日は今の僕が接近すると少し困ってしまう人物と出会ってしまう。
「あら、産賀くん。お久しぶり」
塾前にいったん帰宅しようと思っていた放課後、桜庭先輩は僕に声をかける。
下駄箱に行く直前に出会ったので、待ち構えられていたのかと思ってしまった。
「お、お久しぶりです。桜庭先輩は……今日はもう帰りで?」
「ううん。部活があるけど、その前にちょっと用事を済ませようと思って、そしたらたたまたま産賀くんが見えたの」
「そうだったんですか。それじゃあ……」
「あら、そんなにすぐ帰ろうとするの?」
「い、いえ……」
会ってしまったからには今一番ホットな話題を振らないといけない気がする。
逆に考えよう……今日会ったのは早めに言っておけという導きだと。
そう思って僕が口を開こうとすると、その前に桜庭先輩は神妙な面持ちになる。
「産賀くん的にはまだ気になってる……わよね」
「えっ……」
「私も直接声をかけるのはどうかと思っていたから、この機会に言っておくわ。夢愛のこと……変わらず接してくれてありがとう。そして、ごめんなさい。私も煽るようなことをしておいて……」
桜庭先輩は僕に向かって頭を下げる。
僕が躊躇していたのが、清水先輩のことだと思われてしまったらしい。
「さ、桜庭先輩は悪くないです。あれは僕が勝手に勘違いしちゃっただけで……」
「それで言うなら産賀くんも悪くないわ。私だって、てっきり……ごめんなさい。掘り返したかったわけじゃないんだけど」
「えっと……全く気にならなくなったと言ったら嘘になりますけど、それで清水先輩や桜庭先輩と距離を置くつもりはないです。清水先輩にもそう言ったので……」
「……そう。それなら……なんで今日は話を切り上げようとしたの?」
「そ、それは……」
「別にいいのよ。はっきり言っておいてくれれば、私も暫くはむやみやたらに絡むようなことはしないから」
「ち、違うんです! 実は……」
桜庭先輩が珍しくしおらしい感じになってしまったので、僕は慌てて本題を話す。
それを聞いた桜庭先輩は一瞬だけぽかんとしていたけど、すぐに吹き出しだ。
「ふふっ。なにそれ。もしかして、それで私と話すのが気まずかったの」
「そ、そうです……」
「なるほどね。それにしても正弥くんの彼女が産賀くんの妹さんだったなんて」
「彼女ができたのは知ってたんですか?」
「本人からは聞いてないけど、両親から伝わる形でね。これは……また弄りがいのある話題が増えたわ」
「まさか桜庭くんのことも僕みたいな扱いなんですか」
「まるで私が産賀くんのことを弄ってるみたいに言うじゃない。まぁ、でも、正解よ」
「……当たりたくなかった」
「産賀くんと正弥くん、そういう意味では少し似ているところがあるのかも」
何だか急に桜庭くんに対して親近感が湧いてきた。
今度会った時はお互いの被害を報告してもいいかもしれない。
「じゃあ、産賀くんが私もお姉ちゃんと言う未来もあるかもしれないと」
「そうなってもたぶん言わないですよ」
「残念。あっ、そろそろ用事を済ませなきゃいけないから、私はこれで」
話してみると桜庭先輩と気まずさを感じるよりも桜庭くんへの共感性が高まったから、何事もやってみるまでわからないものである。
それに、勘違いの流れではあったけど、清水先輩の件を桜庭先輩に話せたことも結果的には良かった。
今度会う時は、桜庭先輩が気にかけずに済む状態にしておきたい。
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