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2年生2学期
9月2日(金)曇り 切り替えの新学期
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実力テストが実施された金曜日。
学校再開直後から一日中テストを受けさせられるのは、恒例とはいえど、なかなかハードなものだ。
出席番号順に戻った席での大倉くんとの会話は自ずと愚痴めいた話が多くなってしまう。
「それに来週なったら体育祭の準備も始まるだろうし……」
自分でそう言ったものの、これについては単に運動が苦手なだけなので、八つ当たりもいいところである。
そう、2学期が始まれば体育祭、文化祭が立て続けにある。
だから、学校生活の感覚が戻る前に、行事と勉強に挟まれた状態になるのだ。
「た、体育祭かぁ……産賀くんは今年も部活対抗リレー出るの?」
「恐らく。1年生に出て貰う手もあるけど……副部長が出ないわけにもいかないよなぁ」
「で、でも、去年は活躍してたから」
「……去年」
大倉くんがフォローするためにそう言ってくれたのだろうけど、今の僕にその言葉は別の意味で刺さってしまった。
大倉くんは事情を知らないから仕方がないけど、今年は去年と同じように走るのは難しいと思う。
「まぁ、逆に考えればこの実力テストが終われば、体育祭の準備期間中はゆっくりできるって考えればいいか。今年も……体育委員に忖度して貰おう」
「そ、そうだね。最低限出場させて貰えれば……」
そんなネガティブな会話しつつ、実力テストは滞りなく終わった。
しかし、僕には1つだけやり残したことがある。
それは……隣の席の大山さんへの報告だ。
「大山さん、ちょっといい?」
「うん? どしたの、うぶクン」
「……あの件だけど、駄目だった」
僕が端的にそう伝えると、大山さんはすぐに理解してくれた。
けれども、その表情は驚きと少しの憐れみが混ざっていた。
「でも、アドバイスとか色々助かったよ。ありがとう」
「う、うん。それなら……良かったケド……」
大山さんは何か言いたかったのかもしれないけど、僕はその続きを聞く前に自分の席へ戻っていく。
これでひとまずは言うべき相手には言えた。
だから、次は……僕自身が切り替える時間だ。
体育祭が終われば文芸部にとって本番と言える文化祭がある。
それが終われば今度は3年生に向けて将来的なことを考える時期になるだろう。
その方向へ向かって行くためにも新学期から切り替えていきたい。
学校再開直後から一日中テストを受けさせられるのは、恒例とはいえど、なかなかハードなものだ。
出席番号順に戻った席での大倉くんとの会話は自ずと愚痴めいた話が多くなってしまう。
「それに来週なったら体育祭の準備も始まるだろうし……」
自分でそう言ったものの、これについては単に運動が苦手なだけなので、八つ当たりもいいところである。
そう、2学期が始まれば体育祭、文化祭が立て続けにある。
だから、学校生活の感覚が戻る前に、行事と勉強に挟まれた状態になるのだ。
「た、体育祭かぁ……産賀くんは今年も部活対抗リレー出るの?」
「恐らく。1年生に出て貰う手もあるけど……副部長が出ないわけにもいかないよなぁ」
「で、でも、去年は活躍してたから」
「……去年」
大倉くんがフォローするためにそう言ってくれたのだろうけど、今の僕にその言葉は別の意味で刺さってしまった。
大倉くんは事情を知らないから仕方がないけど、今年は去年と同じように走るのは難しいと思う。
「まぁ、逆に考えればこの実力テストが終われば、体育祭の準備期間中はゆっくりできるって考えればいいか。今年も……体育委員に忖度して貰おう」
「そ、そうだね。最低限出場させて貰えれば……」
そんなネガティブな会話しつつ、実力テストは滞りなく終わった。
しかし、僕には1つだけやり残したことがある。
それは……隣の席の大山さんへの報告だ。
「大山さん、ちょっといい?」
「うん? どしたの、うぶクン」
「……あの件だけど、駄目だった」
僕が端的にそう伝えると、大山さんはすぐに理解してくれた。
けれども、その表情は驚きと少しの憐れみが混ざっていた。
「でも、アドバイスとか色々助かったよ。ありがとう」
「う、うん。それなら……良かったケド……」
大山さんは何か言いたかったのかもしれないけど、僕はその続きを聞く前に自分の席へ戻っていく。
これでひとまずは言うべき相手には言えた。
だから、次は……僕自身が切り替える時間だ。
体育祭が終われば文芸部にとって本番と言える文化祭がある。
それが終われば今度は3年生に向けて将来的なことを考える時期になるだろう。
その方向へ向かって行くためにも新学期から切り替えていきたい。
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