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2年生夏休み
8月26日(金)曇り 後輩との日常・姫宮青蘭の場合その7
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夏休み37日目。夏休み中の文芸部の活動も残りわずかになってきた。夏休み明けでも活動内容は大きく変わらないけど、たっぷり時間が使えるのはこの夏休み中しかない。そういう意味だと僕は追い詰められている気がする。
「副部長。書き上がりました」
そんな中、姫宮さんは衝撃のひと言を言ってくる。
「か、書き上がった……?」
「はい。カッコ仮ではありますが。なので部長と副部長に添削して貰おうかと」
「添削なんてそんな。姫宮さんが書きたいように書けばそれでいいよ」
「私はそうした上で一度目を通して欲しいんです。提出したら直すことはできませんし」
姫宮さんはそう言いながら原稿を突き付けてくる。僕が1年生の時は完成させるのに精一杯で、直して貰うところまで行かなかった。それが夏休み中に書き上がっていて、なおかつより良いものにしようとしているのは、創作に真剣であることが窺える。
「わかった。あんまりアドバイスはできないかもしれないけど、読ませて貰うよ」
文章や表現を指摘できるほど、僕は詳しくない。その辺りは路ちゃんに任せるとして、僕は誤字脱字とか、そういう部分も見ていこう。そう思って僕は読み始めるけど……
『お姉ちゃん~! アコのこと置いてかないでよぉー!』
「…………」
「何かありましたか副部長」
ありました。まさかの妹モノだった。いや、確かにそんな話をしていたような気がするけど、本当にそれをテーマに書き上げると思ってなかった。自分には妹がいないから理想になってしまうかもしれないと言っていたのに。
あらすじとしてはお姉ちゃんのことが大好きな妹のアコが、実は血の繋がりのないことが判明し、さらには今まで向けていた感情は姉妹を超えたもので……姫宮さん、そういう作風で来るのか。それも全く予想していなかった。
そして、読み終わってみると、これが短編として綺麗にまとまっていて面白い。テーマ的にはラノベのような空気感で、似たような題材は無限にありそうだけど、姫宮さん特有の語彙が程よいコメディになっている。
唯一懸念点があるとすれば、僕は普段から姫宮さんの語彙を浴びて慣れているので、所見の人はややギョッとしてしまう可能性があるくらいだ。
「……姫宮さん」
「はい副部長」
「面白かったよ。一度読んだ限りだと誤字脱字はないように見えた」
「ありがとうございます。でもそれだけですか」
「僕としては添削するようなところはなかったように思う」
「そうですか。実際に妹がいる副部長ならこんな妹なんてあり得るわけないだろうと言われると思ったのですが」
「いやいや、そこにリアリティは求めてないから」
「あとは部活の冊子にこういうタイプの作品を載せるのは如何なものだろうかと言われることも考えていました」
「別にジャンルは決めてないからそこも大丈夫。文章量もちょうどいいよ」
僕は次々と肯定の言葉を述べるけど、姫宮さんは微妙に納得してないように見えた。向上心によってそう思っているなら見習いたいところだ。
「それなら副部長にはお墨付きを貰ったことにしておきます。部長にも見せてきますね」
姫宮さんはそのまま路ちゃんの方へ向かい、同じように原稿を突き付けていた。その後の路ちゃんの反応も悪い感じではなかったから、姫宮さんの作品はひとまず形になったと言える。
後輩が先に書き上げてしまったことについて焦りが無いと言われたら嘘になるけど、それよりもいい作品を読めて刺激を貰えた方が僕にとって大きかった。文化祭までの日数を有効に使って、僕もいい作品を書き上げたいと思う。
「副部長。書き上がりました」
そんな中、姫宮さんは衝撃のひと言を言ってくる。
「か、書き上がった……?」
「はい。カッコ仮ではありますが。なので部長と副部長に添削して貰おうかと」
「添削なんてそんな。姫宮さんが書きたいように書けばそれでいいよ」
「私はそうした上で一度目を通して欲しいんです。提出したら直すことはできませんし」
姫宮さんはそう言いながら原稿を突き付けてくる。僕が1年生の時は完成させるのに精一杯で、直して貰うところまで行かなかった。それが夏休み中に書き上がっていて、なおかつより良いものにしようとしているのは、創作に真剣であることが窺える。
「わかった。あんまりアドバイスはできないかもしれないけど、読ませて貰うよ」
文章や表現を指摘できるほど、僕は詳しくない。その辺りは路ちゃんに任せるとして、僕は誤字脱字とか、そういう部分も見ていこう。そう思って僕は読み始めるけど……
『お姉ちゃん~! アコのこと置いてかないでよぉー!』
「…………」
「何かありましたか副部長」
ありました。まさかの妹モノだった。いや、確かにそんな話をしていたような気がするけど、本当にそれをテーマに書き上げると思ってなかった。自分には妹がいないから理想になってしまうかもしれないと言っていたのに。
あらすじとしてはお姉ちゃんのことが大好きな妹のアコが、実は血の繋がりのないことが判明し、さらには今まで向けていた感情は姉妹を超えたもので……姫宮さん、そういう作風で来るのか。それも全く予想していなかった。
そして、読み終わってみると、これが短編として綺麗にまとまっていて面白い。テーマ的にはラノベのような空気感で、似たような題材は無限にありそうだけど、姫宮さん特有の語彙が程よいコメディになっている。
唯一懸念点があるとすれば、僕は普段から姫宮さんの語彙を浴びて慣れているので、所見の人はややギョッとしてしまう可能性があるくらいだ。
「……姫宮さん」
「はい副部長」
「面白かったよ。一度読んだ限りだと誤字脱字はないように見えた」
「ありがとうございます。でもそれだけですか」
「僕としては添削するようなところはなかったように思う」
「そうですか。実際に妹がいる副部長ならこんな妹なんてあり得るわけないだろうと言われると思ったのですが」
「いやいや、そこにリアリティは求めてないから」
「あとは部活の冊子にこういうタイプの作品を載せるのは如何なものだろうかと言われることも考えていました」
「別にジャンルは決めてないからそこも大丈夫。文章量もちょうどいいよ」
僕は次々と肯定の言葉を述べるけど、姫宮さんは微妙に納得してないように見えた。向上心によってそう思っているなら見習いたいところだ。
「それなら副部長にはお墨付きを貰ったことにしておきます。部長にも見せてきますね」
姫宮さんはそのまま路ちゃんの方へ向かい、同じように原稿を突き付けていた。その後の路ちゃんの反応も悪い感じではなかったから、姫宮さんの作品はひとまず形になったと言える。
後輩が先に書き上げてしまったことについて焦りが無いと言われたら嘘になるけど、それよりもいい作品を読めて刺激を貰えた方が僕にとって大きかった。文化祭までの日数を有効に使って、僕もいい作品を書き上げたいと思う。
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