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2年生夏休み
7月31日(日)晴れ 清水夢愛との夏散歩Ⅱその2
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夏休み11日目。今日は市内で開催される夏祭りの日だ。昨年と同じく僕は清水先輩と桜庭先輩と共に回れることになった。
「産賀くん、お久しぶり。夏休みも夢愛に付き合って貰ってごめんなさいね」
「いえいえ。僕は暇ですから」
「そうなの? 遊べる夏休みを満喫しているものかと思っていたけど」
「やっぱり3年生になると忙しいんですか……?」
「人によるんじゃないかしら? 夢愛からどう聞かされてるかわからないけど、私も程々に遊んだりはしているからね」
「おーい! 2人とも早くいくぞ~!」
「……まぁ、勉強量的には彼女より忙しくしてると思うわ。もちろん、夢愛も何も考えていないわけじゃないだろうけど」
桜庭先輩は若干の皮肉を込めてそう言っていそうだった。たぶん、桜庭先輩が程々に遊べているのは元々できる方であるからだと思う。それで考えれば清水先輩も多少は余裕があるのかもしれないけど……問題の解決にはまだ至っていない。
「桜庭先輩。1つ聞きたいことがあるんですけど……清水先輩のご両親って会ったことありますか?」
「ええ、あるわよ。こういう言い方はよくないかもしれないけど、夢愛と比べて凄く真面目なご両親」
「真面目……」
「いきなり両親の話を聞くなんて、産賀くんもなかなかいい度胸してるわね」
「桜庭先輩が考えてる意味とは違います。その……話を聞いた限りだと清水先輩とご両親は何というか……具体的に言えないんですけど、もやっとする感じがあるんです」
「それは……」
「おいおい。本当に2人してどうしたんだ。久々に会って会話が弾んでるのかもしれないが、それで言うなら私も小織とは久々なんだぞ」
「あら。嫉妬してくれるなんて嬉しい」
「嫉妬じゃないが……とにかく何か食べようじゃないか。ほら、良助も」
清水先輩が割り込んでしまったので会話が途切れてしまったけど、桜庭先輩が清水先輩のご両親に会っているなら、何かヒントを得られるかもしれない。今日はひとまずお祭りを楽しむとして、いいタイミングで話をまた聞けたらと思った。
「小織、わたあめちょっと食べる?」
「それじゃ遠慮なく……あむ。うん、この口周りがべたつく感じ」
「美味しいって言うんじゃないのか」
「それも含めてお祭り感ってこと。夢愛だって甘いものそんなにだけどわたあめ買っちゃってるじゃない」
「確かに。完全にお祭りの空気感で流されて買ってしまった。市の策略に引っかかってしまった」
「そう。コスパの良い食材で売り上げを伸ばす市のボーナスタイムみたいなものだから」
途中までは可愛いやり取りだった気がするけど、急に流れが変わってしまった。それでも清水先輩と桜庭先輩が仲良さそうにしているところを見ると、何だか安心する。僕が桜庭先輩と会う機会が減っているだけで、2人は茶道部でも会うのだから何も心配する必要はないんだけど。
「おっ。良助も食べる、わたあめ?」
なんてことを考えながら2人の後ろにいたら、清水先輩は急にそんなことを言ってくる。しかし、僕はすぐに断るべきところを一瞬悩んでしまった。清水先輩が食べたわたあめを……?
「ちょっと夢愛。勝手に間接キスさせようとしてる?」
「え。小織ってそういうの気にするタイプだったんだ」
「気にするわよ。今後の産賀くんの弄り方が変わってくるんだから。あの時、私の唇を……」
「な、なに言ってるんですか!? わたあめは結構です!」
「……って感じで、産賀くんの方は気にするんだから、気を付けないとダメよ、夢愛」
「ああ、そうか。すまなかった、良助」
清水先輩はそう謝罪した後、再びわたあめに口をつける。直前に桜庭先輩が食べていたことをすっかり忘れていた。
すると、桜庭先輩は少し足を遅めて後ろの僕へ近づく。
「産賀くん、さっきのはお邪魔だった? それとも言って正解だった?」
「な、なんのことでしょうか」
「さぁ。でもね、産賀くん。夢愛がどういう選択をしようとも、高校生としての夏休みは今年最後になるわ。それをよく考えて行動した方が後悔しないと私は思う」
「……桜庭先輩」
「なーんて言っておきながら私はドラマか昔読んでた少女漫画くらいしか知らないから、これに関しては的外れかもね。でも、仮に産賀くんが思うところがあるなら……私は以前のように後を付けたりしないわ」
「そ、それって……!」
「それはそれとして、今日のお祭りは私も呼ばれたわけだから、今日の夢愛は私のものだから。譲れなくてごめんなさいね」
桜庭先輩はそう言ってから悪戯っぽく笑って清水先輩の隣に追いつく。前々から僕の言動を見透かす桜庭先輩からすれば、最近の僕のことも全てお見通しだった。だけど、桜庭先輩的に許されるのなら……いや、桜庭先輩の許可を得なきゃいけないのはよく考えるとおかしい。
ただ、結局この日は清水先輩と桜庭先輩が楽しそうにする姿を後方何面で眺めるだけに留まった。そんなこんなで7月も終わりだ。
「産賀くん、お久しぶり。夏休みも夢愛に付き合って貰ってごめんなさいね」
「いえいえ。僕は暇ですから」
「そうなの? 遊べる夏休みを満喫しているものかと思っていたけど」
「やっぱり3年生になると忙しいんですか……?」
「人によるんじゃないかしら? 夢愛からどう聞かされてるかわからないけど、私も程々に遊んだりはしているからね」
「おーい! 2人とも早くいくぞ~!」
「……まぁ、勉強量的には彼女より忙しくしてると思うわ。もちろん、夢愛も何も考えていないわけじゃないだろうけど」
桜庭先輩は若干の皮肉を込めてそう言っていそうだった。たぶん、桜庭先輩が程々に遊べているのは元々できる方であるからだと思う。それで考えれば清水先輩も多少は余裕があるのかもしれないけど……問題の解決にはまだ至っていない。
「桜庭先輩。1つ聞きたいことがあるんですけど……清水先輩のご両親って会ったことありますか?」
「ええ、あるわよ。こういう言い方はよくないかもしれないけど、夢愛と比べて凄く真面目なご両親」
「真面目……」
「いきなり両親の話を聞くなんて、産賀くんもなかなかいい度胸してるわね」
「桜庭先輩が考えてる意味とは違います。その……話を聞いた限りだと清水先輩とご両親は何というか……具体的に言えないんですけど、もやっとする感じがあるんです」
「それは……」
「おいおい。本当に2人してどうしたんだ。久々に会って会話が弾んでるのかもしれないが、それで言うなら私も小織とは久々なんだぞ」
「あら。嫉妬してくれるなんて嬉しい」
「嫉妬じゃないが……とにかく何か食べようじゃないか。ほら、良助も」
清水先輩が割り込んでしまったので会話が途切れてしまったけど、桜庭先輩が清水先輩のご両親に会っているなら、何かヒントを得られるかもしれない。今日はひとまずお祭りを楽しむとして、いいタイミングで話をまた聞けたらと思った。
「小織、わたあめちょっと食べる?」
「それじゃ遠慮なく……あむ。うん、この口周りがべたつく感じ」
「美味しいって言うんじゃないのか」
「それも含めてお祭り感ってこと。夢愛だって甘いものそんなにだけどわたあめ買っちゃってるじゃない」
「確かに。完全にお祭りの空気感で流されて買ってしまった。市の策略に引っかかってしまった」
「そう。コスパの良い食材で売り上げを伸ばす市のボーナスタイムみたいなものだから」
途中までは可愛いやり取りだった気がするけど、急に流れが変わってしまった。それでも清水先輩と桜庭先輩が仲良さそうにしているところを見ると、何だか安心する。僕が桜庭先輩と会う機会が減っているだけで、2人は茶道部でも会うのだから何も心配する必要はないんだけど。
「おっ。良助も食べる、わたあめ?」
なんてことを考えながら2人の後ろにいたら、清水先輩は急にそんなことを言ってくる。しかし、僕はすぐに断るべきところを一瞬悩んでしまった。清水先輩が食べたわたあめを……?
「ちょっと夢愛。勝手に間接キスさせようとしてる?」
「え。小織ってそういうの気にするタイプだったんだ」
「気にするわよ。今後の産賀くんの弄り方が変わってくるんだから。あの時、私の唇を……」
「な、なに言ってるんですか!? わたあめは結構です!」
「……って感じで、産賀くんの方は気にするんだから、気を付けないとダメよ、夢愛」
「ああ、そうか。すまなかった、良助」
清水先輩はそう謝罪した後、再びわたあめに口をつける。直前に桜庭先輩が食べていたことをすっかり忘れていた。
すると、桜庭先輩は少し足を遅めて後ろの僕へ近づく。
「産賀くん、さっきのはお邪魔だった? それとも言って正解だった?」
「な、なんのことでしょうか」
「さぁ。でもね、産賀くん。夢愛がどういう選択をしようとも、高校生としての夏休みは今年最後になるわ。それをよく考えて行動した方が後悔しないと私は思う」
「……桜庭先輩」
「なーんて言っておきながら私はドラマか昔読んでた少女漫画くらいしか知らないから、これに関しては的外れかもね。でも、仮に産賀くんが思うところがあるなら……私は以前のように後を付けたりしないわ」
「そ、それって……!」
「それはそれとして、今日のお祭りは私も呼ばれたわけだから、今日の夢愛は私のものだから。譲れなくてごめんなさいね」
桜庭先輩はそう言ってから悪戯っぽく笑って清水先輩の隣に追いつく。前々から僕の言動を見透かす桜庭先輩からすれば、最近の僕のことも全てお見通しだった。だけど、桜庭先輩的に許されるのなら……いや、桜庭先輩の許可を得なきゃいけないのはよく考えるとおかしい。
ただ、結局この日は清水先輩と桜庭先輩が楽しそうにする姿を後方何面で眺めるだけに留まった。そんなこんなで7月も終わりだ。
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