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2年生夏休み
7月26日(火)曇り 岸本路子との夏創作Ⅱ
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夏休み6日目。今日は朝から暑い中自転車を漕がなければいけなかったけど、文芸部の活動日があることで、自堕落になりがちな夏休みを引き締められている気がする。
けれども、創作についてはどうも上手く進まない。まだ焦る時間じゃないと言い訳はできるけど、書きたいものすら定まっていないのは中々の状況だ。ファンタジー、青春、異世界転生、歴史……妹モノ。書き連ねてみてもイマイチピンと来なかった。別に書きたくないわけじゃないからこれはスランプというやつなのだろうか。
「良助くん、ちょっといい?」
そんな風に頭を悩ませる僕に路ちゃんが声をかけてくる。何だかこの感じは凄く久しぶりな気がする。
「うん、何かあった?」
「えっと……2つほど相談したいことがあって。凄く個人的なことなのだけれど」
「全然構わないよ」
「それじゃあ……まずはこれを」
そう言って路ちゃんが渡してきたのは、1枚のカラー用紙だった。そこには入会者募集という文字が大きく書かれていた。
「これは……塾の募集?」
「うん。その……懲りてないと思われるかもしれないのだけれど、やっぱり勉強すべきだからって両親が近場で新しい候補を出してくれて。その中でわたしはここがいいと思っているの」
「そうなんだ。それは……路ちゃんが無理じゃないならいいと思うけど」
「そ、それなのだけれど……良助くんも一緒に通ってくれない、って言おうと思って……」
思っているうちに路ちゃんは口に出してしまっていた。それがどういう意味か一瞬疑問符が浮かんだけど、すぐに理解できた。
「……僕が一緒に」
「も、もちろん、お金がかかる問題だし、良助くんも勉強すべきと押し付けているわけじゃないのだけれど……わ、わたしは良助くんがいてくれたら……心強い」
「なるほどね。でも、それなら花園さんでもいいんじゃ……」
「……断られちゃったの」
「あー……」
「今納得した?」
「……ごめん。花園さんには言わないで」
決して花園さんに勉強意欲がないと言いたいわけじゃない。路ちゃんの言う通りお金がかかる問題だからそっちで断った可能性もある。
「わかってるわ。それで……」
「今すぐ行けるとは言えないけど、僕も勉強する場を増やした方がいいと思ってたんだ。だから、親と相談してまた報告するよ」
「ほ、本当に!? 無理言ってるから全然断っても……」
「いやいや。むしろ探す手間が省けてありがたいよ。探した方がいいと思っても行動できてなかったし」
僕がそう言うと、路ちゃんはホッとした表情になる。突然言われたのは驚いたけど、別に路ちゃんへ気を遣ったわけじゃない。僕としても知り合いがいる塾の方が何となく足が運びやすいから前向きに進めていこうと思った。
「そ、それと……もう1つの相談なのだけれど……」
「うん。なになに?」
「……ちょっと失礼します」
そう言うと路ちゃんはいきなり僕の耳元に近づいて、小さな声で言う。
「今度、1年生と一緒にプールへ行く……よね?」
「う、うん。そうだけど……」
「……わたし、まだ水着を用意できてないからその……一緒に水着買いに行ってくれない?」
「ああ、それも……ええっ!?」
大きな声を出したら当然部室内の注目が集まるけど、僕は何でもないと誤魔化す。本当は何でもあるのに。
「そ、そっちは本当に花園さんへ頼んだ方がいいと思う!」
「良助くんじゃ……ダメ?」
「だ、駄目……ではないけど」
「じゃあ……」
「いや……」
「やっぱりダメなの……?」
路ちゃんは寂しげな目で僕を見て来る。同級生かつ同じ部員の異性から一緒に水着を買いに行こうと誘われるのはおかしいことではないんだろうか。今の僕には冷静な判断ができない。僕は基本イエスマンで流されるタイプなんだ。だから……
「ぼ、僕で良ければ……」
「……ありがとう、良助くん。ついでにこの前のお礼もするから」
「お、お礼なんてそんな」
「じゃあ、改めて予定、連絡するね」
何だか久しぶりに生き生きとした表情の路ちゃんを見た気がする。だけど、大変なことになってしまった。いや、大変なのか? これは単にお礼と荷物持ちをさせられるだけじゃないのか?
その後の僕は頭の中が水着のことでいっぱいで、塾のことは完全に吹き飛んでしまったし、またしても創作に進捗はなかった。たぶん、水着の話を先に言われていたら塾のことも違う回答をしてしまったかもしれない。
けれども、創作についてはどうも上手く進まない。まだ焦る時間じゃないと言い訳はできるけど、書きたいものすら定まっていないのは中々の状況だ。ファンタジー、青春、異世界転生、歴史……妹モノ。書き連ねてみてもイマイチピンと来なかった。別に書きたくないわけじゃないからこれはスランプというやつなのだろうか。
「良助くん、ちょっといい?」
そんな風に頭を悩ませる僕に路ちゃんが声をかけてくる。何だかこの感じは凄く久しぶりな気がする。
「うん、何かあった?」
「えっと……2つほど相談したいことがあって。凄く個人的なことなのだけれど」
「全然構わないよ」
「それじゃあ……まずはこれを」
そう言って路ちゃんが渡してきたのは、1枚のカラー用紙だった。そこには入会者募集という文字が大きく書かれていた。
「これは……塾の募集?」
「うん。その……懲りてないと思われるかもしれないのだけれど、やっぱり勉強すべきだからって両親が近場で新しい候補を出してくれて。その中でわたしはここがいいと思っているの」
「そうなんだ。それは……路ちゃんが無理じゃないならいいと思うけど」
「そ、それなのだけれど……良助くんも一緒に通ってくれない、って言おうと思って……」
思っているうちに路ちゃんは口に出してしまっていた。それがどういう意味か一瞬疑問符が浮かんだけど、すぐに理解できた。
「……僕が一緒に」
「も、もちろん、お金がかかる問題だし、良助くんも勉強すべきと押し付けているわけじゃないのだけれど……わ、わたしは良助くんがいてくれたら……心強い」
「なるほどね。でも、それなら花園さんでもいいんじゃ……」
「……断られちゃったの」
「あー……」
「今納得した?」
「……ごめん。花園さんには言わないで」
決して花園さんに勉強意欲がないと言いたいわけじゃない。路ちゃんの言う通りお金がかかる問題だからそっちで断った可能性もある。
「わかってるわ。それで……」
「今すぐ行けるとは言えないけど、僕も勉強する場を増やした方がいいと思ってたんだ。だから、親と相談してまた報告するよ」
「ほ、本当に!? 無理言ってるから全然断っても……」
「いやいや。むしろ探す手間が省けてありがたいよ。探した方がいいと思っても行動できてなかったし」
僕がそう言うと、路ちゃんはホッとした表情になる。突然言われたのは驚いたけど、別に路ちゃんへ気を遣ったわけじゃない。僕としても知り合いがいる塾の方が何となく足が運びやすいから前向きに進めていこうと思った。
「そ、それと……もう1つの相談なのだけれど……」
「うん。なになに?」
「……ちょっと失礼します」
そう言うと路ちゃんはいきなり僕の耳元に近づいて、小さな声で言う。
「今度、1年生と一緒にプールへ行く……よね?」
「う、うん。そうだけど……」
「……わたし、まだ水着を用意できてないからその……一緒に水着買いに行ってくれない?」
「ああ、それも……ええっ!?」
大きな声を出したら当然部室内の注目が集まるけど、僕は何でもないと誤魔化す。本当は何でもあるのに。
「そ、そっちは本当に花園さんへ頼んだ方がいいと思う!」
「良助くんじゃ……ダメ?」
「だ、駄目……ではないけど」
「じゃあ……」
「いや……」
「やっぱりダメなの……?」
路ちゃんは寂しげな目で僕を見て来る。同級生かつ同じ部員の異性から一緒に水着を買いに行こうと誘われるのはおかしいことではないんだろうか。今の僕には冷静な判断ができない。僕は基本イエスマンで流されるタイプなんだ。だから……
「ぼ、僕で良ければ……」
「……ありがとう、良助くん。ついでにこの前のお礼もするから」
「お、お礼なんてそんな」
「じゃあ、改めて予定、連絡するね」
何だか久しぶりに生き生きとした表情の路ちゃんを見た気がする。だけど、大変なことになってしまった。いや、大変なのか? これは単にお礼と荷物持ちをさせられるだけじゃないのか?
その後の僕は頭の中が水着のことでいっぱいで、塾のことは完全に吹き飛んでしまったし、またしても創作に進捗はなかった。たぶん、水着の話を先に言われていたら塾のことも違う回答をしてしまったかもしれない。
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