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2年生1学期
7月17日(日)曇りのち晴れ 明莉との日常その57
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緊張の日曜日。結局、昨日から落ち着つかなさは変わらず彼氏さんの来訪日を迎えてしまう。昼食を食べ終えて母さんが少しだけ掃除や片づけをする中、それを手伝う僕と父さんはかなりソワソワしていた。
「もう、2人が緊張してどうするの」
一方、母さんは全然そんなことはなく、むしろ掃除中に鼻歌が出てしまうくらいには楽しそうにしていた。僕と父さんが知らない間も明莉は母さんに相談していたわけだから、彼氏に対する解像度が違うのかもしれない。
ただ、たとえ名前や性格を教えられていたとしても僕(と恐らく父さん)はこんな感じになっていたと思う。
そして、13時半頃。迎えに行っていた明莉と共に彼氏さんは我が家の玄関に足を踏み入れる。
「お、お邪魔します!」
居間まで響いてきたのは声変わりを終えた男子の声。けれども、その声はやや高めに聞こえた。さすがに僕が玄関まで迎えるのは違うと思ったので、居間で待つことにしたし、ちょっと挨拶した後は自室へ戻るつもりだ。
でも、その一瞬しか会わないというのに緊張は最高潮に達する。いかつい人が来たらどうしよう。ひと言返すにしても何を言うべきか。直前まで悩んでいたところにとうとうその人物は現れた。
「あっ、そこにいるのはお兄ちゃんね。写真見たことあると思うけど」
「こ、こんにちは! 初めまして、桜庭正弥と申します! ほ、本日は突然のほうみゃんがり……」
「もう、緊張し過ぎてさっきから噛みまくりじゃん」
明莉に指摘された桜庭くんはあたふたとして次の言葉がなかなか出てこない。その姿を見た率直な感想としては……随分可愛らしい男子がやって来たという感じだった。
明莉と同級生と聞かされていたけど、僕の想像の中では自分と同じくらいの年齢感の男子が来ると思っていた。そこから実際に来たのは僕と同年代の男子より少しばかり子どもらしさを感じる男子だった。
ただ、桜庭くんから滲み出る雰囲気はやんちゃではないし、かといって根暗でもない、好青年な感じだった。畏まっている可能性もあるけど、第一印象でそう思わせるのは勝手ながら安心感を覚える。
「す、すみません。えっと……何言おうと思ってたんだっけ……」
「お兄ちゃんの心を掴む一発芸?」
「そ、そんなのできないよ!? あっ、えっと……」
「いらっしゃい。僕は兄の良助です。今日はゆっくりしていってね」
「は、はい! ありがとうございます!」
僕はそれだけ言うと居間から去って自室へ向かって行く。それまでにあった緊張は、自分以上に緊張していた桜庭くんを見ていたおかげで吹っ飛んでいった。よく考えれば彼女の家に行って連続で挨拶をさせられる桜庭くんが一番緊張していたに違いない。たぶん、僕や父さんが緊張したままで出迎えてしまったからあちらから見ると、怖く見えてしまった可能性がある。
少し可哀想なことをしてしまったかもしれない。既にそう思うくらいには少ない間のやり取りで桜庭くんの印象は良くなっていた。
それから桜庭くんは夕飯前には我が家を後にしたらしい。帰り際も僕は見送りしなかったので、桜庭くんの詳細は夕飯時に明莉から聞かされた。そこで得た情報はおおよそ第一印象と相違ない感じだった。
今度会う時は、お互いにもう少し緊張していない状態で話してみたいと思った。彼と共有できる話題は明莉の話だけど……できればそれ以外で。
「もう、2人が緊張してどうするの」
一方、母さんは全然そんなことはなく、むしろ掃除中に鼻歌が出てしまうくらいには楽しそうにしていた。僕と父さんが知らない間も明莉は母さんに相談していたわけだから、彼氏に対する解像度が違うのかもしれない。
ただ、たとえ名前や性格を教えられていたとしても僕(と恐らく父さん)はこんな感じになっていたと思う。
そして、13時半頃。迎えに行っていた明莉と共に彼氏さんは我が家の玄関に足を踏み入れる。
「お、お邪魔します!」
居間まで響いてきたのは声変わりを終えた男子の声。けれども、その声はやや高めに聞こえた。さすがに僕が玄関まで迎えるのは違うと思ったので、居間で待つことにしたし、ちょっと挨拶した後は自室へ戻るつもりだ。
でも、その一瞬しか会わないというのに緊張は最高潮に達する。いかつい人が来たらどうしよう。ひと言返すにしても何を言うべきか。直前まで悩んでいたところにとうとうその人物は現れた。
「あっ、そこにいるのはお兄ちゃんね。写真見たことあると思うけど」
「こ、こんにちは! 初めまして、桜庭正弥と申します! ほ、本日は突然のほうみゃんがり……」
「もう、緊張し過ぎてさっきから噛みまくりじゃん」
明莉に指摘された桜庭くんはあたふたとして次の言葉がなかなか出てこない。その姿を見た率直な感想としては……随分可愛らしい男子がやって来たという感じだった。
明莉と同級生と聞かされていたけど、僕の想像の中では自分と同じくらいの年齢感の男子が来ると思っていた。そこから実際に来たのは僕と同年代の男子より少しばかり子どもらしさを感じる男子だった。
ただ、桜庭くんから滲み出る雰囲気はやんちゃではないし、かといって根暗でもない、好青年な感じだった。畏まっている可能性もあるけど、第一印象でそう思わせるのは勝手ながら安心感を覚える。
「す、すみません。えっと……何言おうと思ってたんだっけ……」
「お兄ちゃんの心を掴む一発芸?」
「そ、そんなのできないよ!? あっ、えっと……」
「いらっしゃい。僕は兄の良助です。今日はゆっくりしていってね」
「は、はい! ありがとうございます!」
僕はそれだけ言うと居間から去って自室へ向かって行く。それまでにあった緊張は、自分以上に緊張していた桜庭くんを見ていたおかげで吹っ飛んでいった。よく考えれば彼女の家に行って連続で挨拶をさせられる桜庭くんが一番緊張していたに違いない。たぶん、僕や父さんが緊張したままで出迎えてしまったからあちらから見ると、怖く見えてしまった可能性がある。
少し可哀想なことをしてしまったかもしれない。既にそう思うくらいには少ない間のやり取りで桜庭くんの印象は良くなっていた。
それから桜庭くんは夕飯前には我が家を後にしたらしい。帰り際も僕は見送りしなかったので、桜庭くんの詳細は夕飯時に明莉から聞かされた。そこで得た情報はおおよそ第一印象と相違ない感じだった。
今度会う時は、お互いにもう少し緊張していない状態で話してみたいと思った。彼と共有できる話題は明莉の話だけど……できればそれ以外で。
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